ヤマトHD、大幅な下方修正へ 原因はECの伸び率に?【2025年3月期 第2四半期決算発表会】
ヤマトホールディングス株式会社(代表取締役社長 社長執行役員:長尾裕、以下:ヤマト)は2024年11月5日に、2025年3月期 第2四半期(中間期)の決算発表を行った。
営業収益、経常利益、中間純利益も前回予想を下回る
代表取締役副社長 副社長執行役員の栗栖利蔵氏(以下、栗栖氏)によると、2025年3月期第2四半期の実績値は営業収益8404億円。2024年8月1日に公表した2025年3月期第2四半期の業績予想の850億円から95億円、前期からは261億円のマイナスとなった。
また営業利益は、業績予想のマイナス50億円からさらに減少して150億円の減少。前期と比較でマイナス273億円に。親会社株主に帰属する中間純利益は、前回予想がマイナス70億円だったのに対しマイナス111億円と、予想からさらに41億円減少し、前期差はマイナス165億円となった。
※画像元:ヤマトグループ 決算説明資料<2025年3月期第2四半期(中間期)>p22
この理由について栗栖氏は、「宅配便3商品(宅急便・宅急便コンパクト・EAZY)の取扱数量が法人領域(大口法人)では引き続き伸長したものの、個人消費の低迷が継続する中、リテール領域(個人・小口法人)が想定に届かなかったため」と語った。
また宅配便3商品の平均単価が荷物構成の変化などにより低下したことや、リテール法人の数量構成の変化により宅配便収入が想定を下回ったこと、フレイター(貨物専用機)を活用した新たな需要による収入獲得に時間を要していることも理由だと語った。
4つの重点課題キーワードは「リテール」「プライシング」「コスト」「フレイター」
こうした背景から同社は今後の重点課題の一つ目に、リテール領域の宅配便取扱数量拡大をあげている。
「消費低迷の影響もあり、リテール領域の取り扱い数量は継続して想定を下回っております。ただ前期比では徐々に改善傾向にあることが見受けられますので、これまでも行っている営業活動や環境整備をさらに強化していきたいです」(栗栖氏)
さらに、法人領域のプライシング適正化、輸送領域のコスト適正化、フレイターの需要獲得を重点課題として挙げた。
クロネコメンバーを対象に置き配サービスを開始
ECなどリテール領域(個人・小口法人)では、2024年4月の届出運賃・料金改定により単価は1.1%上昇したものの、個人消費の低迷などにより、取扱数量が1.9%減少した。こうした状況を改善するためヤマトでは、2024年6月10日から個人向け会員サービス「クロネコメンバーズ」会員を対象に、置き配サービスを開始している。
「(会員向け置き配サービスをスタートさせてから)不在率の平均は9.1%、日によっては8%台に下がってきています。これはコロナ禍の影響があった2021年3月期第2Qの10.1%を下回る水準であり、それを考えると一定の効果が出ているのではないかと考えます」(栗栖氏)
リテール領域の取扱数量は増加、法人の平均単価は下落傾向
続いて、常務執行役員の樫本敦司氏(以下、樫本氏)が全体の数値の詳細について解説した。
宅配便の取扱数量は9億4417万2000個と、3200万個の増加、伸び率は3.5%となっている。宅配便3商品の取扱単価は708円で、前年比ではマイナス12円。ただ宅配便3商品の領域別取扱数量を、7月から9月の3カ月だけを3年間比較すると、リテール領域はずっとマイナスだったが、前期から少しずつプラスに転じている(下の図、左下のグラフ黄色い線参照)。これは明るい兆しだが、一方で宅配便3商品の領域別単価推移を見ると、法人の単価の下落が続いている(下の図、右下のグラフ灰色の線参照)。
「この法人の単価の下落をどのように改善していくかということも今後大きなテーマになります」(樫本氏)
株式会社ナカノ商会の株式取得(連結子会社化)を発表
ヤマトは2024年11月5日開催の取締役会で、株式会社ナカノ商会(以下「ナカノ商会」)の株式87.7%を取得し、同社の連結子会社とすることを決議した。質疑応答では「ナカノ紹介へのMAについて、シナジー効果を含め、具体的にどのような成長効果を期待しているのか」という質問があり、それに対して栗栖氏と樫本氏は以下のように答えた。
「最も大きな成長へのシナジー効果として期待しているのは、ナカノ商会様が持つロジスティクス事業での知見」(栗栖氏)
「ナカノ商会様はサプライチェーンの上流の方をメインとして3PL事業を展開されていますが、当社がどちらかというとその川下側で事業を展開しています。二つを合わせることによって、上位のビジネスをラストマイルまでしっかり繋げる価値提供の提案ができることがシナジーとしては大きいと考えております」(樫本氏)
下方修正の原因のひとつに、コロナ禍後の生活スタイルの変化
質疑応答ではさらに、予想からの下方修正の原因についての質問があった。それに対して栗栖氏は、景気の悪さだけでなくコロナ禍後の生活様式の変化も関係しているのではと推測している。
「ECの荷物のシェアは構成比としてはかなり高い部分がありますが、ECの荷物は従来よりも増えてはいるけれども、伸びは鈍化しています。その原因が景気の悪さだけとは限らず、生活の変化が影響しているところはあるのではないでしょうか。ただやはり単価という面からすると、まだまだ荷主様、お客様に認めていただいていない部分があろうかと思いますので、しっかりと説明をしながら単価を上向きにできるよう進めて参ります。ただ予想のレベルまではなかなか難しいので、今回単価予想についても下げさせていただいたという状況です」(栗栖氏)
栗栖氏は、今回の下方修正について、現状の業績の中でよかったという話ではなく、やはり悪かったと認めつつも、さまざまな状況が影響しており、それが判明してきていることは強化のひとつのプロセスであると強調。この学びを11月、12月の繁忙期に、そして閑散期に当たる第4Qの施策に活かしたいと締めくくった。