特別企画:モールは通販に何をもたらした?【Amazon編】

EC店舗を運営しようと考えたときに必ず出会う「ショッピングモール(以下、モール)」という言葉。そんな「モール」について、あなたはどれくらい説明できますか?意外と知っているようで、知らないのでは。初心者には理解を、熟練者には気づきを、得られる特別企画をご用意しました。

特別企画:「モールは通販に何をもたらした?」レジュメ

・【成り立ち】http://bit.ly/1px1TVn
・【Yahoo!ショッピング編】https://goo.gl/OKdlyZ
・【楽天市場編】https://goo.gl/imnDBC
・【Amazonマーケットプレイス編】

特別企画最終章は、Amazonマーケットプレイスを展開する総合オンラインストアAmazon.co.jpセラーサービス事業本部 開発営業部 部長 白石肇さんにお話を伺いました。

何故出品型?Amazonマーケットプレイスとは

 1995年、今ではEC業界に欠かせない存在であるAmazon.comが創業者ジェフ・ベゾス氏によって米国で誕生した。1995年といえば、まだまだECが未開拓の市場であった頃だ。その5年後である2000年に日本でAmazon.co.jp(以下、Amazon)がスタート。これまでAmazonは、他のショッピングモールでは見られない新しい取り組みを次々に行ってきたことで消費者に対して常に驚きと感動を与えてきた。

 そんなAmazonの大きな特徴といえば、「1ページ1商品制」の商品軸でのモール展開ということだろう。いや、モールといった表現も違うのかもしれない。Amazonが展開するのは、出店型のモールとはまた違った魅力を持つECサイトなのだ。なぜ、Amazonは商品軸での展開にこだわりを見せるのだろうか。そこには「なるほど!」と、納得せざるを得ない驚きの”仕組み”があったのだ。

 まず、Amazonマーケットプレイスの特徴について整理をしていこう。出品サービス「Amazonマーケットプレイス」は2002年にスタートしたが、現在出品されている商品の種類がどのくらいにまで及ぶかご存知だろうか。Amazon.co.jp全体では約2億種もの商品が揃っているが、出品商品の方がAmazonが仕入・販売する商品より多くなっているのだ。

 Amazonを利用する顧客に関しては、PCとモバイルで大きな違いを見せる。PCでは、高齢者も含めた比較的幅広い世代の、特に世帯をもつ男性からの購入が目立つという。モバイルでは、若い世代の女性からの購入が多いのだが、PCと共通して、購入者の世帯年収が高い。つまりAmazonは、幅広い世代の購買力が強いユーザーにリーチができているECサイトなのだ。(出典:Nielsen Digital Content Measurement 2015年11月 ブランドレベル家庭と職場からのアクセス)

 幅広い世代が訪れるAmazonでは、もちろんのことではあるがそれだけ各世代のニーズに応えた商品数を揃えなければならない。それは、Amazon全体でのビジョンである「地球上で最も豊富な品揃え」と、「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」につながる。お客様のニーズに応えるために品揃えを充実させるには、出品者が商品を出品しやすい環境を提供する必要がある。そのために、Amazonはどのような工夫をしているのだろうか。

全てはお客様に繋がる、Amazon出品サービスの仕組み

全てはお客様に繋がる、Amazon出品サービスの仕組み「Amazon出品サービスページ」

 Amazonへの出品方法から紐解いていこう。

 Amazonに出品を行いたい場合、まず、Amazon上でその出品したい商品を検索する。もし、その商品がすでに出品されていて商品ページが存在していれば、出品者はわざわざ商品ページを作る必要がなく、「出品する」というボタンを押し、在庫数と販売価格を入力するだけですぐに出品が完了してしまう。他のモールは主に出店というスタイルであるため、Amazonのような商品ページではなく、複数の商品を構えた店舗ごとのページを作成しなければならない。よってこの出品の簡単さは、”1商品1ページ制”のAmazonだからこそ実現ができるのだ。

 さらに、商品登録の作業さえしてしまえば、自動的にSEO対策がなされているうえに、出品者はサイトデザインに頭を悩ませる必要もない。モールは独自ドメインに比べ、積極的な集客をしなくてもユーザーが集まるが、特にAmazonはこういったSEO対策の背景から、更に一歩進んだ集客が行える。

 そして、受注管理やリスクのある代金回収についても、Amazonは出品者に手間をかけさせない。

 Amazonでユーザーによって商品が購入されると、出品者ではなくAmazonから購入者に対して「ご注文ありがとうございました」というメールが配信される。そして、今度はAmazonから出品者に対して「注文が確定しました」というメールが届く。そしてその連絡に従い、出品者は購入者に対して商品を発送し、Amazonに対して発送が完了したことを通知する。つまり、出品者と購入者の間にAmazonが入り、安定した受注管理を行うことで、出品者の負担が減るということだけでなく、Amazon全体の質が保たれるのだ。

 代金回収についてもAmazonが行い、出品者には販売手数料を相殺した売り上げの入金を行う。ちなみに、Amazonの月額利用料は4900円(税別)、販売手数料に関しては商品が売れたときのみ回収なので、無駄なコストが発生せず、出品者は出品作業に専念することができる。

「通常、自社サイトで何かを販売する場合や、モールに出店する場合は、どうしてもノウハウがないとできなかったりだとか、どうしても事前に準備が必要であったりすると思います。しかし、そこを丸ごとAmazonが様々な仕組みやシステムでサポートすることにより、出品者様には販売戦略を立てていち早く売り上げを上げてもらうことに注力してもらうことができます。そこが、出店とは違う、出品サービスのメリットです。」

 Amazonがここまで出品を簡単にできるシステムと安心のプラットフォームを用意しているのは、出品者に嬉しいサービスであることはもちろんながら、最終的に”お客様”につながる。Amazonのシステムを用いて出品者が簡単にECを始められることができれば、Amazon全体の出品数が増え、どこよりもお客様のニーズに応えるECサイトになることができるのである。

FBAで物流もAmazonにお任せ!

 Amazonがサポートしてくれるのは、サイト上でのことだけではない。

 Amazonといえば、お急ぎ便など配送サービスに力を入れているのも特徴の一つだ。「フルフィルメント by Amazon(以下、FBA)」は、Amazonが提供する物流代行システムで、出品者が商品をAmazonの倉庫に預けると、注文が入った時にAmazonが倉庫内からピッキングを行い、出品者の代わりに出荷してくれる。

 出品者がFBAを利用することで、物流だけでなくカスタマーサービスまでもをAmazonが対応することができるので、本当に、配送以外の作業に集中できる環境が整うのだ。

 そして、Amazonが出品者に代わって配送することにより、配送のスピード上げることができ、結果として顧客満足につながる。また、FBAは24時間365日対応してくれるので、販売のピークに合わせた対応が確実にでき、販売機会を逃すことがない。

 物流まで担ってくれるAmazonのサービスを利用することで、もはや出品者がすることはあるのだろうか。あるとすれば、ユーザーから支持を集めそうな商品を選んで仕入れること、そしてその商品をいくらで売ればいいかという価格調整の2点に絞られる。

 よって、「これから初めてECを始める」という出品者に対して、無駄なくすぐに手間のかからないプラットフォームを提供できるのがAmazonの魅力なのだ。

Amazonを考える、出品型”ECサイト”とは

 Amazonは「1商品1ページ制」の商品軸でのECサイトであるからこそ、すぐに商品が販売できる簡単な”仕組み”が揃っている。その仕組みは、出品者にとっての利便性を上げるとともに最終的にはお客様に還元される。

 Amazonが出店型のモールではなく、商品軸のECサイト(マーケットプレイス)にこだわりを持つのは、やはり最終的にAmazon全体のビジョンである「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」につながり、そのためには出品サービス事業というのはかかせない。

 なぜなら、前途でも記したとおり、お客様のニーズに応えるためには品揃えを増やすことが第一で、そのためには出店ではなく出品で出品者のECに対する利便性を簡素化し、サイト上に多くの商品が販売されている状況を作る必要があるからだ。

 そして、Amazonに出品し、結果を出す出品者の多くに一貫していることは、きちんと自分の商品と競合他社の商品との違いを研究し、販売戦略を立て、それに基づき、出荷代行サービスや一部の広告サービスをうまく活用できるかということ。

 Amazonでは詳しいノウハウや高い費用を必要としているわけではなく、いかに自分で吸収し学んでいくかということが売り上げを左右する。なので、初心者にもたくさんのチャンスが待っているのだ。

 こういったAmazonの仕組みを知ったうえで、改めてAmazonが他のモールとはまた違った魅力を持つモール(マーケットプレイス)なのだということが理解できる。全てに無駄がなく、ただシンプルに”お客様を大切にする”ということと、そのための”出品者への環境作り”に徹しているのが、Amazonなのではないだろうか。

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