ヤフー2015年度通期&第4四半期決算発表、EC躍進

石郷“145”マナブ

【決算ハイライト】
■売上高は6523億円、当期利益1716億で19期連続の増収増益を達成
・通期の売上高6523億円、営業利益2249億円、
 当期利益1716億円で、サービス開始以来、19期連続の増収増益を達成
■Eコマース国内流通総額は通期で初の1.5兆円を突破
・ショッピング商品数は2億に増加、国内最大の商品量に
・ショッピング事業の第4四半期の取引高成長率は前年同四半期比で61.8%増
■クレジットカード事業はYahoo!JAPANカード発行開始で会員数が大幅増加
・年度末の有効会員数は221万人、計画値通りに進捗
・クレジットカード取引高は前年同四半期比で5.7倍、稼働率も好調
■広告関連事業は引き続きYDNが成長を牽引
・スマホトップページなどのタイムライン化に成功
・YDN等の成長により、広告売上高が拡大

2015年度通期、および第4四半期および通期決算説明会で、目立つEC強化

 ヤフー株式会社(以下、ヤフー)は、本日、同社セミナールーム内で、代表取締役社長・CEO宮坂 学氏、副社長執行役員・CFO大矢 俊樹氏らにより記者会見を行い、2015年度通期、および第4四半期および通期決算説明会を行った。

ヤフーの2015年通期業績のハイライトは?

 通期の業績のハイライトは、売上高が6523億円、前年度比が+52.2%。営業利益が、2249億円、前年度比が+14.1%、イーコマースは1.5兆円で、前年度比が+26.5%となっている。イーコマースは、スマートフォン経由の比率が41.2%になっている。

 売上高の推移としては、アスクルの影響が大きい。通期の売上高構成が、2014年は4284億円だったものが、2015年は6523億円となっている。内訳としては、主に広告などのマーケティングソリューション事業が前年度比6.5%増、イーコマースなどのコンシューマ事業が前年度比2.5倍に、その他、カードなど決済の事業が前年度比24.9%増となった。

 営業利益が2249億円で、前年度比14.1%増、サービス開始以来、19期連続で増益していることになる。通じて見たときの販売促進活動は、昨年137億円に対して、今年は更に、186億円となっている。使い道としてはショッピングが約5割、アプリ販促に約3割、ヤフオク!に約1割、決済金融事業などに、約1割となっている。ショッピング事業が伸びているので、ポイント発行とその消化が想定を上回る動きを見せているという。

 通期のキャッシュフローに関して、期首は、5039億円だったところに、現状は4491億円という形になっているが、活用した先については一休への出資など、子会社支配獲得による支出が、1105億円と比較的、大きい。

ヤフーの2015年度第4四半期のハイライトは?

 なお、2015年度第4四半期の業績ハイライトとしては、売上高が2070億円で、前年同四半期比+76.0%、営業利益が299億円で前年同四半期比−42.9%で、イーコマースについては、国内流通総額が4321億円、前年同四半期比で、+41.6%(スマートフォン経由43.0%)となっている。

 マーケティングソリューション事業が前年同四半期比2.7%増、コンシューマ事業が前年同四半期比3.7%倍、その他が前年同四半期比1.0%増となっている。

 ヤフーとしては、スマートフォンを最も使ってもらえるメディアになろうということで、デイリーユニークブラウザー数は5100万を突破した。月間アクティブユーザーID数は、IDでどのデバイスで入っているかを管理しなけばならないので、非常に重要なデータなのだが、ログインして、ヤフーを使う人が、2016年3月には3000万を突破している。ヤフー全体でログインしやすいような工夫をしているが、その成果が見えている証拠だ。
 
 そして、今後は、スマートフォンのブラウザーだったものが、アプリで見るようにしていくとしており、アプリの方の進捗は前年同四半期比1.4倍となり、大きく伸ばし、3.8億ダウンロードとなっている。

 スマートフォンのトップのデザインを大きく変えたということが大きな動きだったが、結果としてみれば、トップへのアクセスの動きが良いことを考えると、ユーザーからの受けは良かったと判断しており、更にこれにより、広告のスタイルも変化させ、(今まではバナー的なものだったが)タイムライン的なトップに合わせて、インフィード広告を導入したが、2.2倍となった。

2015年度は、ここ10年でも見られない、ECの伸び。宮坂社長談

 そして大きかったのはイーコマースだとした。国内流通総額は史上初、1.5兆円を突破した。内訳でいうと、オークションが約5%増、ヤフーショッピングが40.1%増となっており、ショッピングの伸びが全体に大きく影響を与えている。

 特に、ショッピングの伸びというのは、どうなのかというと、2015年第一四半期比においては、その伸びが23.1%だったものの、その後、第二四半期比では、30.2%増、第三四半期比では、48.3%増と加速を続け、第四四半期比では、61.8%増となった。このようなことは、ヤフーショッピングの歴史を見ても、10年くらいはなかった伸びだと宮坂社長は話しており、いかにヤフーショッピングが伸びているかを象徴するデータとなった。

 事実上、他のモールに押され気味ではあったが、ここでヤフーの底力を見せたことで、ネットショップが今後描く戦略に影響を与えることは間違いないだろう。以前、ヤフーの小澤氏に「ずっとネット通販をやってきたのに、なぜ今このタイミングでヤフーが変わって、ショッピングに力を入れているのか」と問うた時、その要因としてあっさり「社長が変わったことだね」と説明していたことがあった。そして、今まで広告を主体としたビジネスモデルだけに力を入れるだけでは生き残れない。イーコマースにも力を入れることで、より磐石な地位を掴むことが大事だと。

 その心意気はこの決算報告でも十分、明らかなのではないか。ネットショップ事業者は、どんな戦略であれ、今一度、ヤフーのこの本気を見たほうがいい。そして、着実にそのひとつひとつの挑戦はお客様に響き、成果として現れている。別に、ヤフーにお世辞を言うつもりはないが、イーコマースにかけるその想いはそれなりに評価に値する。今後も、ヤフーの中でイーコマースの存在感は増していくことだろう。その意味で、今回の決算報告は、EC業界にとって大きく受け止めるべき出来事だと思うのだ。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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