この動画が凄い!2016年要チェックの企業ブランド
近年、日本においても動画マーケティング市場が拡大し、企業や行政によるブランデッドムービーの制作が増加している。だが、数ある動画の中で、本当に効果的なブランディング動画とはどのようなものなのだろうか。国際短編映画祭ショートショートフィルムフェスティバル&アジアでは、動画を活用したグローバルマーケティング作品に贈られる第1回「Branded Shorts of the Year」及び、日本の動画マーケティングを牽引してきた企業に贈られる「Branded Shorts Special Recognition Award」を決定した。
日本から世界へ、ブランディング動画を発信する
ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(以下、SSFF&ASIA)は、米国アカデミー賞公認、アジア最大級の国際短編映画祭だ。日本がアジアにおけるブランデッドムービーの発信地となることを目指し、この度、「Branded Shorts」という新たなプロジェクトを立ち上げた。
このSSFF & ASIA 2016における Branded Shortsカンファレンス「動画を活用したグローバルマーケティング powered by NESTLÉ Japan」内において、SSFF & ASIAが定めた4つの視点(アイデア、ストリーテリング、シネマチック、エモーショナル)をもとに優れた映像を「Branded Shorts」と定義し、ノミネートされた国内外の28作品の中から、最も優れた作品に贈られる、第1回「Branded Shorts of the Year」及び、日本の動画マーケティングを牽引してきた企業に贈られる賞「Branded Shorts Special Recognition Award」を決定した。
グローバルに評価されるブランディング動画とは?
「Branded Shorts of the Year」は、ナショナルカテゴリーとインターナショナルカテゴリーからそれぞれ1作品ずつ選出される。ナショナルカテゴリーの受賞作品は『早稲田アカデミー「へんな生き物」篇』<エージェンシー:アサツーディ・ケイ / クリエイティブ・ディレクター:渋谷三紀 / CMプランナー:宇都雅己 / ディレクター:柴田大輔(ザ ディレクターズ ギルド)>、インターナショナルカテゴリーの受賞作品は『Johnnie Walker Blue Label 『紳士の賭け事Ⅱ』』<エージェンシー:Anomaly / 監督:Jake Scott / 出演:Jude Law, Zhao Wei, Giancarlo Giannini>だ。
『早稲田アカデミー「へんな生き物」篇』は、わずか1分半の動画で「なるほどなあ」という、共感してしまうストーリーが展開される。この動画のタグライン(企業やブランドが持つ感情面と機能面のベネフィットをわかりやすく伝えるための表現)は、「本気であれば、世界だって変えられる。」早稲田アカデミーという進学塾のブランディング動画として、小・中学生頃の子どもを持つ人には、特に共感の強い動画なのではないかと思う。企業としての宣伝はほとんど入っていないのに、好感度を持った宣伝になる、ブランディング動画として成功している作品だ。
一方の『Johnnie Walker Blue Label 『紳士の賭け事Ⅱ』』は、11分ほどの作品。しっかりとした映画を見ているかのような、完成度の高いストーリーが展開される。その中で、スコッチウイスキーの「Johnnie Walker Blue Label 」が、ストーリーを引き立てる小道具として登場する。受賞理由では、同社のブランド哲学である「KEEP WALKING」が圧倒的な世界観で表現され、Brand Shortsの指針を高いレベルで網羅しているとして、評価されている。
受賞した作品は全くタイプの違う動画ではあるが、視聴者をストーリーで引き込みながら、そのストーリーには実は企業の伝えたい価値観が表現されており、視聴者はその企業を強く意識せずとも好感を抱くという、ブランディング動画として重要な点を踏まえているというところは、共通している。
日本の動画マーケティングを牽引する企業はここ
日本の動画マーケティングを牽引してきた企業に贈られる賞「Branded Shorts Special Recognition Award」を受賞したのは、ネスレ日本株式会社だ。ネスレ日本は公式サイト上に「ネスレシアター」というページを設け、「THEATER1」では「ここでしか見られない話題のオリジナル作品」を、「THEATER2」で「名作セレクション ショートフィルムでする世界の旅」を公開している。また、YouTube上にも「ネスレ公式チャンネル」を設け、CMや著名人のトーク、レシピやゲームの解説、ゴルフの大会ハイライト等まで、豊富なラインナップの動画が展開されている。
「THEATER1:Life is…」より
これらの動画は、ネスレ日本が販売する商品に関係するものから、全く関係しないように思えるものまで、本当に多様だが、共通点として、企業色を強く押し出さないことが、結果的に効果的なブランディングとなっていることがあるように思う。つまり、商品ありきというよりも、見る人を楽しませる、見たいと思わせることを第一優先とし、その結果「ネスレってこんな面白いことをやっているんだ」とポジディブなイメージを抱くようになる、というブランディングになっているのではないかと感じた。
「モノではなくコト」は動画でも同じ
コンテンツマーケティングという言葉もあるように、何かを売る時に、そのモノよりも、それにまつわるコンテンツを発信することによって、自然にユーザーの興味関心を惹き、それが結果的にモノの購入につながるという流れが、最近は主流となってきている。SNSやキュレーションがECに有効であったり、ECサイトがメディア化したりというのも、その流れの一環だろう。
そしてそれは、動画にも当てはまると思う。これからは動画だとよく言われるが、当たり前ながら、それはただ動画で商品を紹介すれば良いということではない。動画の方が、ユーザーの興味関心を惹く、共感を得やすいという点があるのではないだろうか。それを踏まえ、では共感される動画とはどういうものなのか、その答えとなるヒントが、今回の受賞作品や受賞企業には表れている。