「後払い決済」の関わるトラブルについて国民生活センターが注意喚起 業界団体への要望も
独立行政法人国民生活センターは2025年7月2日、「後払い決済サービス」の関連する相談件数が増加し続けていることを受けて、その相談事例を紹介し、消費者に注意喚起するとともに、トラブルの未然防止・拡大防止のために業界団体に要望を行った。
2024年度の相談件数は4万3000件超
商品が手元に届いた後で支払うことができることに加え、クレジットカード番号等を販売業者に伝えずに決済できるため、気軽に利用できる点がメリットとされている後払い決済サービス。
近年、全国の消費生活センター等に後払い決済サービスを利用した取引に関するトラブルの相談が寄せられ始めたことから、国民生活センターでは2020年1月に特別調査を実施し結果を公表していたが、その後も相談は増加しており、【PIO-NETにみる後払い決済サービスが関連する相談のうち、販売方法に問題がある件数】は2024年度は4万3964件。2025年度も、下図のように前年度同期件数(4762件)を超えている(※1)。
画像出典:増加し続ける後払い決済サービスが関連する消費者トラブル(独立行政法人国民生活センター)
相談事例は「定期購入業者との解約後のトラブル」ほか
主な相談事例としては、「解約したのに後払い決済サービスで請求を続ける定期購入業者とのトラブル」「後払い決済サービス事業者から突然請求される購入した覚えのない商品代金に関するトラブル」などが挙げられた。
国民生活センターはこれらの事例からみる「後払い決済サービス」の問題点として、以下の3つを指摘している。
◆消費者対応が十分ではない販売業者が後払い決済サービスの加盟店になっている。
◆消費者トラブルを発生させている販売業者に関する情報を、後払い決済サービス事業者が積極的に把握せず、その結果、迅速な調査が不十分なことがある。
◆後払い決済サービスが悪用されている。
こうした状況を踏まえ、同センターでは消費者に対して「後払い決済サービスの利用であっても慎重に検討しましょう」「販売業者とトラブルになった場合は、後払い決済サービス事業者にも連絡しましょう」と呼びかけている。
業界全体の健全化に向けた取り組みの実施などを要望
あわせて国民生活センターでは、「後払い決済サービス」に関する消費者トラブルの未然防止・拡大防止のため、関連団体に対して以下の要望を行った。
◆加盟店契約時の初期審査、継続的なモニタリング、消費者トラブルが発生した際の迅速な随時調査の徹底
加盟店契約にあたっては、契約時の初期審査、契約後の途上審査のより一層の徹底を要望。消費者から加盟店とのトラブルの連絡が入った場合は、迅速な随時調査の実施を要望。
◆消費者トラブルを発生させている加盟店について、当該事業者への迅速な対応及び協会加盟社間の共有
消費者トラブルの拡大防止のため、利用者の保護に欠ける行為を行っている加盟店への迅速な加盟店調査を実施し、改善要請及び加盟店契約解除も含めた対応とともに、協会加盟社間の迅速な情報共有を要望。
◆協会加盟社の拡大を含む業界全体の取引の適正化に向けた取り組みの実施
後払い決済サービスに係る取引の適正化や利用者の利益の保護を図るため、現在協会加盟社となっていない後払い決済サービス事業者に対する協会加盟への働きかけも含め、業界全体の健全化に向けた取り組みの実施を要望。
◆不正利用防止対策の取り組みの実施
悪意のある第三者による後払い決済サービスの不正利用も発生している。不正利用の未然防止及び拡大防止に向けた取り組みの実施を要望。
要望先である日本後払い決済サービス協会でも、2025年6月30日にサービス利用者に対して購入・契約を申し込む前に確認するポイントなどを示しつつ協会の取り組みを公表している(※2)。EC事業者としてもそれぞれの発表内容を確認し、健全な市場形成へ向けた取り組みを推進してほしい。
※1:PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)。相談件数は2025年5月31日までの登録分。消費生活センター等からの経由相談は含まれていない
※2 参考:日本後払い決済サービス協会の取り組みと利用者の皆さまへのお願い