ECなのに感謝を口頭で伝える。リピート率のKPIを35%→70%にした接客施策。仕掛け人ライフェックス工藤氏に迫る。
リピート通販において、誰もが大事だと口をそろえる「CRM」。しかし、実際にはどれだけのEC企業がCRMを正しく理解し、効果的に実践して成果をあげているのか。本当のCRMとはとは一体なんなのか。さまざまなEC企業にブレーンとして請われている、株式会社ライフェックスの代表取締役 工藤一朗氏にお話を伺った。
「リピート3ヶ月」の壁を軽々と越えた、1年後の残存率70%という驚異
その重要性から耳にすることも多い「CRM」というコトバ。それを「DMを送ること」「クロスセルを勧めること」といった、個々の販促施策として捉えているEC企業も多いのではないだろうか。KPIをアップさせ、LTVを向上させる。目指す結果はそこだとしても、工藤氏の考えるCRMは違う。
「なぜ、お客様がリピートしてくれるのか。クロスセルで買ってくれるのか。それは『顧客満足』というものがCRMの前にあるからです。顧客満足とは定量化しづらく、なにをもって顧客満足というのかも難しい。でもそれを数値化して定量化することで、One to Oneのビジネスモデルを設計していきます」そう語る工藤氏。満足度の高いユーザー体験がベースとしてなければ、顧客との関係構築は難しいという。
例えば、定期購入での入金確認。毎月の支払いが確認できると「入金完了しました」といった定型メールが送られてくるのが通常だろう。それを工藤氏は変えた。電話で直接お礼を伝えたのだ。しかも、毎月同じ担当者がこれを繰り返した。その結果「残存率70%」という常識破りの数字を叩き出したというのだ。
リアルなショップでは「ありがとう」を言われるのが当たり前。その当たり前がECではできていなかったのだ。それも単に電話をするだけではない。ライフェックスが提案する施策は、一つひとつが人と人をつなぐ思いやりと綿密な施策設計にもとづいている。
「駆けつけ尽くせ」の姿勢とお客様との関係構築で実店舗と同じホスピタリティを体現
工藤氏は前職である総合通販(株)ベルーナ時代から、CRMに重きを置いた部署で経験を積んでいた。EC企業の中では特殊な部署で、お客様と直接顔を合わせていたという。
当時はお客様に何が合うかを考え、合うものを売るという提案型の営業スタイル。「お客様に駆けつけ尽くせ」の姿勢は、当時から一貫したものだという。総合通販でも単品通販でも、その姿勢は同じだ。お客様の嗜好や悩みを慮り、ショップ側の都合で押し付けるようなことはしない。
「お電話をしても、最初は入金のお礼を伝えるだけです。それを3ヶ月ほど続けると、ショップと顧客との信頼関係が生まれ、人と人とのおつきあいに発展できる。そうなってからはじめて、顧客は勧められているクロスセルが自分にとって魅力的なのかという判断ができるようになるんです」と工藤氏。担当者が信頼を得られてはじめて、クロスセルやアップセルのプロモーションを仕掛けていくというのだ。
美容や健康に関することは特に、“何”を買うかよりも“誰”から買うかということが大事な商材だろう。しかし、そこまでのきめ細かな対応は現実的なのだろうか? その課題を解決するのが「日本CRMセンター(以下、JCC)」というコンタクトセンターの存在だ。
これからのECに求められるインタラクティブなコンタクトセンター日本CRMセンター(JCC)とは
電話・チャット・メールなど、お客様とのコミュニケーションツールすべてに対応した、新しいコンタクトセンター「JCC」。工藤氏はいう。「コミュニケーションが変化してきています。メールは減りLINEやチャットが増えてきました。ECは一方通行になりがちだけれど、双方向にコミュニケーションできる環境が求められてきています」。時代の変化と各企業に合わせたツールで顧客とやりとりをし、顧客満足を高めていくというのだ。
JCCのサービスは2016年末に開始したばかり。しかし、リピート購入からの離脱率が従来の落ち幅に比べて半分以下になるなど、日ごとにその効果を感じているという。しかもJCCは単なるコールセンターではない。マーケティングオートメーションシステムのリザルトマスターと連動しているため、分析もできる。そしてなにより、ライフェックスにはOne to Oneのノウハウがある。
「顧客満足とはどういうことで、それを実現させるためになにをするか。その定義を会社ごとにつくり施策を設計します。『感謝を伝える』というマインドもとても大切です。 JCCのスタッフは自筆のお礼の手紙を書くこともやっています」。そう語る工藤氏。ECはシステムで完結するのではなく “人”に還ってくるということだろう。
顧客満足を追求した未来のCRMは、なんでも相談できる
1顧客に1専任のECコンシェルジュ
一般社団法人 日本通販CRM協会において、顧客育成(CRM)委員会委員長も務める工藤氏。「休眠顧客を掘り起こす施策はあっても、アクティブのお客様に対するコストというのは今までにない考え方です。でも本来は離脱しないのが一番いい。継続してもらうために投下する方が理にかなっています」。
接客をする、気遣いをする、感謝を伝える。それはこれから日本のEC企業が力を入れていかなくてはならないことかもしれない。「ECには、単なる利便性だけではなくホスピタリティも求められるようになってきた。ようやくそのフェーズにきたんです」と工藤氏はいう。
目的買いのマーケットではアマゾンに勝てないとしても、人と人との関係を構築しファンになってもらうことはできる。「ゆくゆくはECのお買い物コンシェルジュとして、欲しいものがあったら相談できるようなサービスを目指している」と希望を語る工藤氏。今までにないCRMの効果を、JCCで体感してみてはいかがだろうか。