テクノロジーと物流の進化で、ファッション業界を元気に!
EC市場が急速に拡大する中で、アパレル企業のEC売り上げは伸び悩んでいるのが現状だ。だが裏を返せば、それはまだまだ伸びしろがあることを意味している。そこで今回は、ファッション物流に特化し30年以上の実績を誇る、株式会社オーティーエス(以下、OTS)執行役員 マーケティング部長 小橋重信氏に、ファッションEC業界の現状と課題、そして「物流からファッション業界を元気に」という想いについて伺った。
ファッション業界は大きな変革期にある
ファッション業界に特化した物流会社として、30年以上の実績を誇るOTS。その経験を活かした手厚いサービスには定評がある。「インポート品の洗濯ネームを日本向けの表示に付け替えたり、徹底した商品検品によって不良品をチェックしたりなど、お客さまが抱えている問題を、倉庫中でワンストップに解決します。
これらはもともとOTSが得意とするところです。単純に物流という視点からすると、モノを正確に入れて出すということが重要ですが、OTSではお客さまに、より安心して買っていただけるように、『品質管理』を加えました」。こうしたきめ細やかなサービスに、OTSが提唱する「おせっかい物流」の精神が体現されている。
しかしファッション業界全体を見渡せば、バブル期に15兆円あった売り上げは、いまや10兆円ほどに減少している。小橋氏も現状への懸念を隠さない。「モノの量は右肩上がり、売り上げは右肩下がりという、極めて異常な状態になっているのが今のファッション業界だと思います」。業界全体の売り上げが減少する一方で、ファストファッションの台頭やショッピングモールの増加により、モノの量はむしろ増えているという。「国内市場の縮小、百貨店の衰退、消費者の需要や購買行動の変化、そしてブランドの同質化。ファッション業界は、こういった課題を抱えています」。
在庫を見続けているからこそ提案できる、効果的な経営改善策
そうした中でより切実さを増しているのが、滞留在庫の問題だ。アパレル企業の出身で、IT業界を経て物流の世界へ入った小橋氏は、自身の経験を交えながら次のように言う。
「会社がおかしくなると、在庫からおかしくなります。在庫を抱え、最終的にキャッシュが回らなくなって沈んでいく会社を目の当たりにしてきました。そういったお客さまの在庫に対して、物流会社として何かお手伝いできることがあるはずです」。
アパレル企業において、在庫リスクへのアプローチは経営の肝でもある。そして30年間「在庫」を見続けてきたファッション物流の会社だからこそ、効果的な経営改善策を提案できるというわけだ。
OTSでは、在庫販売を代行する「カイテン倉庫」をはじめ、倉庫内に修理工房やカスタマー窓口を設置する「おまかせ品質管理」、さらには、オムニチャネル対策として、在庫を一元化する「オムニチャネル相談」など、在庫の課題にアプローチするさまざまなサービスを提供している。さらに、「物流からファッション業界を元気にしたい」という小橋氏の言葉の通り、OTSはファッション業界全体の活性化にまで視野を広げている。
「ファッションのデジタル化」によって高まる物流の重要性
「アメリカではファッションのデジタル化が進み、国を代表するような専門店が、街の中心から退店しています。リーマンショックの時にも、市場規模が縮小して店舗が減少しましたが、その時とは明らかに違います。ネットでモノが買える時代にリアル店舗を持つ必要がなくなってきているため、計画的に閉鎖しているのです」。
アマゾンの台頭によって小売りや流通業のあり方そのものが変化し、「完全に売り方が変わってきている」というのだ。「商流が変われば、物流も変わる。そしてこれからは、物流が新しい商流を支えるようになるのです」と小橋氏は指摘する。
「今まで物流は、単にモノを届ければよかったし、ある意味で安ければどこでもよかった。しかしオムニチャネルにより、『どこでも・誰でも・どんな時でも』商品を受け取れることが当たり前になってくると、戦略的に物流を構築しなければ、お客さまを喜ばせることはできません」。
オムニチャネルの考え方では、「売れる場所」をつくることよりも、「ファンになってくれるお客さま」をつくることが重要になってくる。「どんなにキレイなサイトをつくって、どんなにキレイな芸能人をイメージキャラクターとして使ったとしても、お客さまに喜んでもらえるかたちで届けられなければ意味がありません」。
「物流からファッション業界を元気にしたい」
ファッション業界が大きな変革期にある中で、「その行方のカギを握っているのが物流だ」と小橋氏は言う。「例えば、共同配送、共同物流(シェアリング)によって、無駄なコストを省けます。これまでは傘下に何十社もある大手しかできませんでしたが、中小アパレル、独立系の企業を束ねることができれば、積載効率が上がり、物流自体がスリム化します。大企業の倉庫で行っていることが、商品コードの一本化によって中小アパレルでも実現できるのです」。
業界全体を底上げする為には、大手だけでなく中小アパレルの活性化が欠かせない。OTSはその点においても、物流を通して「おせっかい」な構想を抱いている。
物流企業が単体で価格勝負をする時代は終わった。ECの活用やオムニチャネル化などのテクノロジーによって、サプライチェーン、モノづくりのあり方そのものが問われているのだ。「業界全体が非常に厳しい中で、自分たちがどう変わっていくか。時代に合ったテクノロジーを取り入れて、お客さまとどうつながっていくかを考えていかないといけません」。
「物流からファッション業界を元気にしたい」という小橋氏の言葉は、この変化の時代において、大きな希望と方向性を示してくれている。業界全体の活性化をも見据えたOTSの動向から、今後も目が離せない。