CRMを通じて、日本EC通販ビジネスを世界をリードする産業に高めたい。向徹氏の思いとは

ECのミカタ編集部 [PR]

一般社団法人日本通販CRM協会 代表理事 向 徹氏 一般社団法人日本通販CRM協会 代表理事 向 徹氏

ECにおけるCRMの第一人者として、一般社団法人日本通販CRM協会(以下、CRM協会)の代表理事を務める向 徹氏。EC業界におけるCRMのあり方に一石を投じ、あるべきCRMの姿を普及させることで、日本のEC業界を世界に冠たる産業に育てたいと意欲を燃やす同氏に、CRMについての思いや、CRM普及のためのビジョンなどについて伺った。

多くの起業家に会って自分を磨き、目標資金を貯めた起業当初。

-起業家を目指した経緯と、実際に起業に至るまでの経緯についてお聞かせください。

向氏 もともと好奇心とチャレンジ精神は旺盛でしたね。大学時代には、100人近い規模のサークルを自分で立ち上げて運営したりしていました。面白そうだと思ったことは、とりあえず行動してみる、というスタンスは、昔から変わっていないかもしれません。

 大学時代から、将来的には自分で何かの事業を起ち上げたいという思いはありました。しかし、その頃は、具体的に何をやりたいかが明確になっていたわけでないので、大学卒業と同時に、一般企業に就職しました。大手通信事業系企業でしたが、とりあえず就職したのは、起業のための資金を貯めたいということと、ビジネスの基本を身につけておきたかったというのが理由です。

 会社員時代は、とにかくビジネスの方向性を決める為に、なんでもよいので、まず何か興味ある事から始めてみる。と考え、エンジニアとして働きながら、当時興味のあった美容系専門学校2校に通っていました。とにかく「まず行動する」というのが、私のモットーでもあったんです。専門学校行くことがほんとにいいんだろうか、どうしようかと考えるなら電話してから考える。みたいな感じでした(笑)

仕事をしながらのダブルスクールですから、時間のやりくりは大変でしたが、得るものも多くありました。専門学校の先生たちは独立事業者であることが多く、そういう方々からの刺激を受けて、"もっと多くの起業家に会いたい"と思うようになり、さまざまな人的ネットワークを駆使して、多くの起業家の方々とお会いしました。

そうした出会いのおかげで、組織づくりの要諦や、モチベーションの持ち方などを学ぶことができした。すべてが体験に基づくお話ですから、とても大きな糧になりましたね。

同時に、起業に向けての準備も本格化させました。まず資金づくりということで、当時読んだ書籍で、"起業資金は最低でも600万円"という記述があり、それなら、600万円以上を目標にしようと決めました。しかし一人では時間がかかり過ぎると思ったので、同期を巻き込んで、2人で700万円を貯めて独立しました。

ECとの出合い、そしてCRMのエバンジェリストへ

ECとの出合い、そしてCRMのエバンジェリストへ

-CRMに出合うきっかけは何だったのですか?

向氏 とりあえず店舗事業で起業したものの、わずか数ヶ月で瀕死の状態になりました(笑)。資金も底をつき、食事に充てるお金もなくなりコンビニから廃棄物のお弁当を分けていただき食事をしていた時もありました。あの時のご恩は今でも忘れません。そろそろまずいというタイミングで、親に土下座し保証人になってもらって金融機関から借入れを起こして、事業を再構築しました。後がないプレッシャーはとても苦しかったですが、事業を徹底的に分析しなおし、1年程掛けて様々な策を実行し、その後なんとかV字回復することができ、経営的にも人を雇う余裕なども生まれました。


その後、あるきっかけから、ECビジネスに関わることになりました。当時はまだホームページがあるとすごいね。と言われる時代でした。そんな時代に某企業が、新規事業でECビジネスを展開することになり、その立ち上げの責任者を任されたのです。最初はテスト的な展開だったのですが、半年程で目標を大きく超える結果を出すことができました。そこから本格化したいという要望を頂き、全面的に任されるようになったのです。

ここから、ECとの関わりが深くなっていきました。その時点ではECを運営する側にいたのですが、ゼロから構築して一定のレベルにまで成功させたことで、ノウハウも蓄積でき、そのノウハウを他のEC事業者にコンサル提供するようになったのです。

 多くの通販企業をコンサルしましたが、その多くが業績を伸ばしました。当時まだほぼ概念として存在していなかった定期購入。いわゆる単品リピート通販などの仕組みも独自に構築するなど、新しいことにもどんどん取組み、成果を上げることができました。

 ところが、ずっと成長を続けていたコンサル先が、あるタイミングになると成長が鈍化し始めるんです。ほぼ一様に。そこで、何故なのかを突き詰めていったら、その原因がリピーターをきちんと活性化できていないことに気づきました。新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客とのリレーションシップの重要性に気づいた瞬間であり、CRMとの出合いの端緒になったのです。

 最初は、リピーター分析ができるシステムツールを導入しようと考え、探したのですが、当時そうしたシステムを提供してくれるベンダーがなく、無いものは自分で作ろう、ということで独自にシステムを開発して、クライアントに提供するようになりました。これがEC通販CRMツール『うちでのこづち』に繋がっていったのです。

EC業界のCRMへの取組みに疑問を感じ、あるべきCRM普及のための協会設立へ

EC業界のCRMへの取組みに疑問を感じ、あるべきCRM普及のための協会設立へ

-CRM協会を設立するに至った動機はどういうものだったのですか?

向氏 私の起業自体が今から15年程前で、その後複数の事業を展開していきましたが、CRMの魅力と可能性を感じ、事業をCRM一本に絞っていきました。更にそこからしばらく経って、EC業界でもCRMの重要性が少しづつ取り沙汰されるようになってきたのですが、私としては、その頃の各社の取組みに違和感を感じていたんです。

 例えば、ある会社が一斉メール配信により、既存顧客からの売上増に成功したという情報が拡散すると、その他の事業者がこぞって一斉メール配信するようになりました。初期の頃は確かにそれで売上増につながったのですが、メールの頻度が増え、一斉メール配信する事業者が増え続けて、エンドユーザーが疲弊するような状況に陥ったのです。当時EC事業者さんにCRMはどうやられていますか?と聞くと、その多くが、うちは一斉メール配信で取り組んでいますよ。と言われていました。もちろんメール自体を否定しているわけではないのですが、企業側の売らんかな主義で、その人にとって不要な情報がバンバンくる。ECを使うと、こんなにも自分に不要な情報がくる、とエンドユーザーに思われたら、EC業界そのものが沈下してしまうという危惧をもったのです。

 そんな時に、やずやグループ未来館の西野社長(現:やずやグループ 株式会社未来館 代表取締役社長 西野博道氏)にお会いする機会があり、CRMのあるべき姿について語り合いました。その日は1時間しかお時間を頂いていなかったにも関わらず西野社長は2時間半近くお時間を取って頂いたことを覚えています。西野社長は素敵なお人柄で、人として私が尊敬する経営者のお一人です。西野社長も、私と同様に、CRMの現状を憂えておられ、"正しいCRMを普及させることが重要だ"ということで意気投合し、CRM協会を設立する大きなきっかけになったのです。

日本式CRM(JCRM)が、ECを通じて、世界に浸透する状況を生み出したい

日本式CRM(JCRM)が、ECを通じて、世界に浸透する状況を生み出したい

-CRM協会の活動内容や、今後の展望などについてお聞かせください

向氏 2014年に準備委員会を立ち上げ、正式にCRM協会の設立に至ったのは、2015年1月のことでした。設立当初の会員企業数は20社程度でしたが、以後多くの方にご賛同・ご協力をいただき、現在では100社を超える規模になっています。

 CRM協会の主な活動としては、定期的に開催される勉強会や、セミナー、ワークショップなども実施しています。CRMについての取組みというのは、ある意味で個々の企業の独自のノウハウという部分もあり、それらがオープンにされることはあまりないのですが、CRM協会では、多くの会員企業様に惜しむことなくノウハウや情報をご提供いただき、すべての会員企業が、CRMについての知見を深めています。

 私自身は、CRMを一言でいえば「人が人を想いやる心」だと解釈しています。(あえて人を「想う」という漢字を使わせて頂いています。)見返りを求めることなく、相手に対して"何をしてあげれば喜ばれるか"ということを考え、そして実践することです。実は、このことは、世界の中でも日本人が一番得意とするところであると確信をもっています。ですから、日本発の「想いやり」を基礎とした日本式CRMを学び、各EC事業者が自社らしさを入れ創りあげる。その輪が広がっていけば、大きな社会貢献になると考えていますし、CRM協会では、それを実現したいと思っています。

 今後EC業界では、越境ECなどの進展により、日本から世界に多様な商品などが届けられていきます。日本のEC業界が優れたCRMに基づいて、世界中の人たちにサービス提供できるようになれば、商品やサービスとともに、その裏側にある日本の文化や想いやりの思想なども届けることになります。世界の方たちが日本のECに心地よさを感じ、感銘を受けて頂くことで日本式CRM(JCRM)が注目される。結果として日本のECが世界をリードする形になれると思っています。

 そして、海外の人たちが、日本式CRMを学ぶということは、世界中で「人が人を想う心」を学ぶことになります。世界中で日本式CRMが浸透すれば、
海外のサービスなどにもおもてなし文化が取り入れられ、世界のECもより安全で心地よくなり、更には心が豊かになることで、世界の治安が改善されることにも繋がっていくと考えています。

 そうした状況を作り出すために、日本通販CRM協会を通じて、まずは日本のEC業界のCRMをより良いものにしていきたいと考えています。

日本式CRM(JCRM)の原点は「想いやり」にあり。

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