風向きの変化をとらえた30年目のコールセンター。売上をUPさせる秘密とは
健康食品を中心とした通販支援を30年間も続けてきている株式会社日本テレシステム。インバウンドを得意とする同社の業務推進本部でCRMセンター長を務める大川 義彰氏は、近年の健康食品業界における“変化”を感じていた。コールセンターの役割を変えた業界の“変化”と、そのニーズに対応し業績を大きく伸ばす立役者となったオペレーターたち。売上を向上させるコールセンターの実態に迫る。
高齢化が進む日本で変わりゆく意識。最前線で対応するオペレーターが求められるのは
広告で大々的に打ち出す初回限定サービス。その広告をご覧になった利用者のモチベーションが一番高い最初のご注文で定期サービスに引き上げられるかどうかが、健康食品事業者の成否のカギを握っていると言っても過言ではないだろう。ところが実際には初回限りの利用で終わってしまったり、初回限定サービスを2回目以降も受けられると勘違いされていたりするケースは多く見られる。
「これまでは初回サービスを再度ご希望されるお客様には丁寧にお詫びをした上でお断りするのが通常でした。しかしこれでは次につながらないばかりか、お客様はがっかりしてお電話を切ることになり、企業のイメージダウンにもなりかねません」と大川氏は話す。こういった対応には、ここ数年で変化が起きているという。
長寿国・日本は高齢化が進み、健康に対する意識が非常に高くなっている。その意識の変化が健康食品業界にも影響してきているのではないか、と大川氏は指摘する。「数年前までは半信半疑だった健康食品に対しても、いろいろと調べてオペレーターに質問をぶつけてきたり。高齢化や医療費の心配もあり、自分やご家族の体のことを不安に思って、お客様も勉強されています」。
お客様の意識の変化に伴い、企業側の姿勢も変わりつつある。「名前を広く知ってもらうという目的で広告を打っていた企業も種まきの時期を終え、その種がどれだけ実るか、という段階に来ています。商品を続けることでお客様にメリットがある、健康により生活が充実したものになるということをきちんとお伝えしたい。ただ電話を受けるだけではなく、そういった提案型の対応が求められるようになってきました」そう大川氏は言う。
これまでは、お客様のイメージを損ねないように、間違いがないように、確実に……という守りの対応がメインだったインバウンド。ニーズが提案型へとシフトしていった風向きの変化を、大川氏は現場で感じ取ったのだ。
最初の注文対応で「電話を受ける」から「売上をつくる」コールセンターへ
長く使い続けることで効果を実感してほしい健康食品。初回限定サービスの広告を見てせっかくご注文のお電話をくださったお客様に、商品の本当の魅力をお伝えできるチャンスをみすみす逃すことはない。確かにお試し商品だけを注文すれば特別価格で安く試せる。でもそれだけでは良さが分かる前に終わってしまう事もあり、お客様と企業が結びつかない。
お客様との対応の中で「商品への関心の高さ」や「健康維持へのモチベーション」を感じ取り
『 続ける事が大切である事 』を伝えるのがこれからのコールセンターの使命と考える。
また、初回限定のお試し商品を何度もご注文されるお客様もいる。
「広告には『初回のみ』と書いてあるのでお断りすることもできるんです。でもそれでは血が通わないAIでもできる対応じゃないですか。人と人とのやりとりですから、そこには温かみがないと。ですから、クライアント企業様ご了承の上で代替キャンペーンを用意していただき、初回限定サービスの2回目のご利用はお断りしつつ、そちらをご紹介しています」そう大川氏。
「続けていただけたらラッキー」という思いで始めたという、この提案型の対応。代替キャンペーンにより、お客様も「それなら続けたい」「そこまでしなくてもいい」という判断ができる上、驚くことにクレームが一切なくなったというのだ。
「せっかくお電話をくださったのに嫌な思いはさせたくない。それに、特にご年配の方は藁にもすがる思いでお電話をくださっています。ですから丁寧にご説明をして、広告だけでは伝わらなかった真の商品価値を伝えながら継続いただけるよう対応しています」。
簡単に聞こえるが、電話をかけてきた時にイメージしていた商品と違う商品をご購入いただく場合には、トラブルにならないように細やかな気遣いが欠かせない。しかし熟練のオペレーターを多く抱える同社では、その提案型対応で目標を大きく上回る結果を叩き出している。
「コールセンターは離職率が高いと言われていますが、当社は5~10年以上勤続しているオペレーターさんが多く在籍しています。目標としての数値は皆が意識していますが、常に達成率を張り出してハッパをかけるようなこともしていません。『やらなきゃいけない』『勧めなきゃいけない』となるとお客様は聞いてくれない。オペレーターさんが素直に自信を持って勧められるようにしています」。
財産は人。オペレーターの働く環境を整え、声を拾い上げ、結果につなげていく
「コールセンターは冷たいイメージがありますが、当社は和気あいあいとやっていますよ」と
大川氏。「本当に人が財産。オペレーターは主婦が多いので、子どもが病気の時は休みやすくするなど働き続けやすい環境を整えています。オペレーターが安心して働けないと成り立たないですから。メンタル的な部分が大きい仕事なので、その点を含めて色々と細かいところまで気を配っている女性SVの存在も大きいですね。女性は本当に優秀です」。
面談を重ねてコミュニケーションを密にするなど、同社ではSVとオペレーターの信頼関係がしっかりと築かれている印象だ。「面談で不満を聞いたり、効果的な言い回しを聞き取ってみんなで共有したりしています。クライアント企業様の方針にもよりますが、当社ではスクリプトはパーツとして使っているので、みんなお勧めしやすいように組み立てて、お客様へのアプローチが違っているんです。ガチガチのシナリオを固めると『言うこと』が仕事になってしまうから、オペレーターの得意なところを伸ばしていけるようにしています」そう大川氏は話す。
オペレーターを通じて電話で対応するお客様とクライアント企業とのつながりが広がり、共に成長していきたい。そんな思いで、30年目を迎えたコールセンターの老舗は「つながる、ひろがる、ひびきあう」をスローガンに掲げ、さらに高みを目指している。
「創業当時から継続していただいていたり、ご紹介いただいて10年以上も続いていたりと、当社では長くお付き合いさせていただいているクライアント企業様が多くいらっしゃいます」と大川氏。そうやって30年かけてコツコツと積み上げてきた経験値と実績に、新たに付加された提案力。同社ではその通販支援のノウハウを、EC業界にも広げていきたいと考えているという。
「メールやさまざまなカートでのお客様対応・受注対応ができるように環境を整え、多くのEC事業者様とつながっていきたいと考えています。社内にエンジニアがいるので、クライアント企業様の仕様に合わせた入力システムを作って柔軟に対応することも可能です。業績をともに伸ばしていくパートナーとして二人三脚で進んでいきましょう」。