JECCICA9月度公開EC最先端セミナー 受講体験レポート

ECのミカタ編集部

Webコミュニケーション戦略と物流システム作りで見る ECの効率的な運営方法

Webコミュニケーション戦略と物流システム作りで見る ECの効率的な運営方法

JECCICA(ジャパンEコマースコンサルタント協会)が定期的に開催している、EC事業者向けの目からウロコのセミナー。業界の第一線で活躍している現役の講師を招いて、EC事業者が知っていて然るべき内容をわかりやすく解説してくれる。講義後には質疑応答の時間もあり、その回のテーマについて徹底的に掘り下げていく。
今回も実例を元に、二部に分かれて講義が行われた。

セミナー内容

~第一部~
「商業施設パルコのWebコミュニケーション戦略」
講師:唐笠 亮氏
JECCICA特別講師
・パルコのSNS活用+O2O施策
・PARCO Digital Information Wall「P-WALL」(一部動画)
・店頭キュレーションEC「カエルパルコ」
・オムニチャネル化の狙い

~第二部~
「利益が上がる物流システムのつくり方。低コスト+リピート強化であと5%改善できる」
講師:池本 克之氏
特別スーパーアドバイザー
・物流コストで見る業界の現状
・リピート率改善の実例
・低コストオペレーション5つの秘訣
・リードタイムを短縮する隠れたコツ

セミナー内容の概要と感想

セミナー内容の概要と感想

第一部
リアルとネットの統合面で苦戦を強いられる企業も多い反面、最近なにかと話題のオムニチャネル。スマホ、ブログなど切り口に、独自の問題解決策を押し出した「カエルパルコ」と「P-WALL」という二つのチャネルについての解説。
「カエルパルコ」は、パルコが提供するECプラットフォームに各種テナントが運営するASPよりのモール事業だ。ショップ店員のブログからウェブで商品を抑えられるシステムを導入し、さらにどのブログから客が流れてきたかの動線も明確な数値で「見える化」したことにより、いいブログの紹介を記事にすれば自分の成績数字に直結するフローを作り現場の士気向上にも大きなウエイトを与えたサービスだ。客も友人のブログを読む感覚で親しい店員のオススメアイテムを手軽に抑えられるという点で、日常に密接した親近感あるEC購入に繋げることができる。
「P-WALL」は、WebサイトやECサイトの情報を店頭の液晶ディスプレイに連携表示することにより、あらゆる店舗情報と商品データベースを店頭のデジタルツールで閲覧し確認することができる、ビジュアル面でも近未来的な興味深い施策だ。
テナント店頭の最新情報、新商品情報やスタッフのリコメンドなど、今まで自社WEBサイトに足りていなかった要素を店頭で確認することができる。70インチ液晶ディスプレイ×6台の大画面に約1,000点の商品画像を表示し、一日のタッチ数は7,000回を超える。リアルの場にWEBやECのデータを持ち込み、商品情報やイベント情報との接点を創出するのだ。

第二部
物流コストで見る業界の現状として、構造上広告費などと同じように市場の変化に影響される構造は物流費も同じであるとする。広告費と同じように物流費も対策が必要なのだ。売上高に対する物流比率は1990年の5.6%と比べ、2012年では11.8%となっており、153%の上昇となっている。上昇要因としては、人件費の上昇、ドライバーの不足、倉庫人員不足、トラック不足、燃料費上昇、大型物流センターの新築、などがあげられる。しかしこの類の、コントロールのできない外部要因は内部努力でコントロールするしかない。大きく分ければ、物流面でのコストダウンと販売施策面でのリピート率や客単価などのアップが改善例の実例としてあげられる。
低コストオペレーションでの5つの秘訣としては、
・雇用条件の変更
・資源の簡素化、小型化
・パッケージのメディア化
・ロケーションの適正化
・物流の組織化を強化する
などがあげられるだろう。
人材教育や管理のシステムをより現場視点で改善し、効率的な作業効果を引き出せるフローを整える。
販売施策でのリピート率促進の例としては、休眠顧客を優良顧客に復活させたストーリーブランディングの実例がある。R12ヶ月以上の休眠顧客4万人に読み物として興味のそそるひと気ある手紙広告を発送したところ、通常のキャンペーンDMの反応率0.1%に対し反応率は0.4%、購入率は130%向上した。同じ4万人に対して2回目を発送したところ反応率は0.4%、3回目4回目も同じ0.4%の反応率であった。結果、優良顧客が約650人増えて、LTVは優良顧客よりも12%高い。
以上のような、内部努力によるコントロールを効率的に行えれば、EC企業にとって悩みの種になりがちな物流コストやリピート促進などにも他社とは違ったアプローチが残されている可能性は少なくないだろう。

以上、二部構成によるセミナーは熱心に議事録をとる拝聴者も多く、非常に濃密な時間であった。筆者が感じたJECCICAセミナーの特色は、なんとなく大切で必要と思っている概念だけど説明しろと言われたら口ごもってしまう、そのような不明瞭なトレンドを実例を交え明確に言語化してくれる、といったものであった。様々な断片的な知識が関連付けられ結びつく感覚も、なかなか体感しづらいものではないだろうか。疑問点も質疑応答で講師が直接答えてくれるなど、積極的に参加して損はない講義なので、是非一度、自身でその空気に触れてみることをオススメする。


記者プロフィール

ECのミカタ編集部

ECのミカタ編集部。
素敵なJ-POP流れるオフィスにタイピング音をひたすら響かせる。
日々、EC業界に貢献すべく勉強と努力を惜しまないアツいライターや記者が集う場所。

ECのミカタ編集部 の執筆記事