イーベイ(eBay)の多国展開で大成功。業務効率化と着実な前進が成功の秘訣!
国内市場が縮小していく中、海外に目を向けた越境ECは近年非常に注目されている。世界最大規模のグローバルマーケットプレイス「イーベイ」において、世界4カ国に商品を展開したことで大きく売上げを伸ばしているCD等のメディア専門店がある。その運営を手がけている株式会社Hep Japan International代表取締役 松本祐二氏に直撃した。
趣味だったレコード屋めぐりが高じ、翻訳ソフトに頼りながらイーベイをスタート
ECでレコードが売れているというのは有名な話だ。海外向けの中古レコード販売からCDにシフトし、さらに販売を多国展開して成功している松本氏。イーベイを利用している多くのセラーがアメリカ(US)のみで出品している中、イギリス(UK)・オーストラリア(AU)、そしてドイツ(DE)へと立て続けに出店したセラーだ。
「10代の頃から中古レコード屋や輸入版専門店なんかをまわっているような少年時代でした。レコード屋をやりたいと思っていて、最初はヤフオク!からはじめたんです」と語る松本氏。パソコンを買ってすぐにヤフオク!をはじめたという。
「そうしたら深夜2時に電話をかけてきて『レコードを出品する前に売ってくれないか』ということを言うバイヤーがいて。その人に話を聞くと『イーベイで転売している』と。当時は国内と海外でかなり価格差が激しかったので、それなら自分で直接売りたいと思ってイーベイをはじめました」そう松本氏は話す。
「とりあえず登録しちゃおう」とはじめたと言う松本氏。スタートにあたっての最大の課題は英語ができないということだった。当時はGoogle翻訳もなく、家電量販店で翻訳ソフトを見つけて購入。ヘルプを見ながら進めていったという。
「売れ筋を調べながら少しずつ出品していきました。でもリーマンショックがあった頃に、数万円するレコードはほとんど売れなくなって。CDだったら何10ドルかで販売できるので、レコードからCDに切り替えました」。
その判断は正しかった。CDに切り替えたことで売り上げが大きく伸びたという。衰退していると言われているCDであっても、レコードと比べれば利用者の分母の数は全く違う。そしてリーマンショックから約10年を経た今、松本氏は多国展開という新たなステージへと踏み出している。
年商3億目前!世界各国への出店が叶い、売り上げの上積みが実現
多くのセラーと同様にUSへの出品からイーベイをはじめた松本氏。多国展開をはじめたのは約1年前だ。
「複数の国のイーベイサイトに表示できるInternational Site Visibilityを使えばUS以外にも出品できるので、以前にやったことがあって、かなりUKが伸びたんです。でも出品数が多いので予算的に厳しくて、その時は早々にやめてしまった。でもUKにニーズがあることはわかったので、そっちに出せばいいなと前々から思っていたんです」松本氏はそう話す。
そんな松本氏を、多国展開を推し進めるイーベイ・ジャパン株式会社が後押しした。「イーベイさんの勧めがあって実際にやってみようと。それで出してみたら、やっぱり伸びました」と静かに語る松本氏。各国でどういったアーティストや曲名が検索されているかというデータをイーベイから提供され、その上位の商品から出品していったという。国によってその傾向が違うのだ。
「音楽はたくさん売れるのはだいたい決まっているんです。デビットボウイとかビートルズとかピンク・フロイドとかのビッグネーム。でも国によって、その下のランキングは特色が出ます。最初は出品数が限られるので、売れ筋から出していきました」。
世界で売れている海外アーティストでも、ファンは日本版を欲しがるのだという。ボーナストラックが付いている、紙ジャケットでできている、音のいい素材で作られている等、日本製ならではの魅力。それを商品タイトル部分に入れてアピールしていく。
「だいたい1ヶ月で2,200万円くらい売れています。最近はじめたドイツが加わったら、年商3億くらいまでいくのでは。ドイツも今徐々に出品数を増やしているところです。自社サイトも一応ありますがあまり稼働させていない状況で、売上げのほとんがイーベイからです」そう話す松本氏。
今はアルバイトも含めスタッフは5名。スタッフは英語が話せるし外国人スタッフもいるが、松本氏は「僕は相変わらず翻訳ソフトでやってます(笑)」とはにかむ。
多岐にわたる海外のニーズに対応していく勤勉さと業務効率化が成功の要因
イーベイでは、ドイツとフランスへは英語で出品していいというルールになっている。多国展開へのハードルはそう高くない。
「商品タイトルとディスクリプション(説明)は英語ですけど、ドイツの場合スペック部分はドイツ語にしないといけない。それはUSの商品をオークタウンを使ってダウンロードして、直して出品しています。エクセルの関数で置き換えていけば一瞬でできるので。ビジネスポリシーとかストアのカテゴリーとかを共通するように作っておけばすぐできますよ。ドイツはもう6万枚分ぐらい変換してデータを作ってあります」そう松本氏は説明する。
USに出品していても、半数はイギリスやドイツから購入されていたという松本氏のショップ。UKやDEに出品することでUSの売上げが落ちるのかと思いきや、純粋に売上げが上積みされたというから驚きだ。
「とりあえず階段を1つずつ上がっていくだけです。ドイツが軌道に乗って3億にいったら次は5億、と。具体的な策は何もないけれど、楽器等にも商品の幅を広げていきたいし、出品していく国も増やしていきたい。イーベイさんにもお手伝いしていただき、どんどん拡大していきたいです」そう松本氏は夢を語る。
松本氏がイーベイで越境ECを成功させられた理由はどこにあるのだろうか。イーベイの担当者によれば、松本氏は商材を絞り込んで発送をシステム化し工数を削減する等、業務の効率化を徹底している。勉強熱心でセミナーにも毎回出席しているという。
「日本で発売されているK-POPのCDがUSやUKですごく売れたり『どこで知ったんだろう』というインディーズのCDが売れたり。海外には本当にいろいろなニーズがあります。イーベイをはじめるのは難しくないですよ。僕も何もできないところからはじめているので。効率よく出品できる方法を考え、たくさん出せるようにした方が良いです。また、US以外のイーベイサイトにも大きなポテンシャルがあります。多国展開も同時にお勧めしたいですね。」そう松本氏は話す。
世界に1億7千万人のユーザーを抱えるイーベイ。各国の利用者のニーズは多岐にわたり、そして深い。そのニーズに応え、松本氏のショップでは多い日で1日に500件もの商品を海外へ送り出している。
「商品を提供してくださる方がいたら、ぜひ海外への販売を手伝いたい」と優しく笑う松本氏。音楽少年は地道に歩を進めながらも、世界を舞台に夢を描き続けている。