パーソナライズされた対応が鍵!ZOZOTOWN買取サービスの顧客対応現場を直撃
ECにおける顧客との貴重な接点が、メールや電話などによるカスタマーサポートだ。オペレーターの対応次第で、店舗に対する顧客の信頼度が上がったり、次の購入につながったり、逆に顧客を失うことにもなる。しかも、顧客によって求めていることが違い、正解がないという難しさもある。多くの問い合わせを受けるEC企業は、どのように対応しているのだろうか。今回、ZOZOUSEDを運営する株式会社クラウンジュエル カスタマーサポート部 マネージャー 花村和明氏に話を伺った。
買取サービスの三大問い合わせ
ZOZOUSEDは、2012年にスタートしたブランド古着のファッションモールで、ZOZOTOWNの中で展開している。2018年3月にはマーケットプレイスの事業も始まり、コメ兵とセカンドストリートがZOZOUSEDでの古着販売をスタートした。
クラウンジュエルでは、ZOZOUSEDの運営およびZOZOTOWNにおける古着買取サービスの運用を行っており、花村氏が所属するカスタマーサポート部では、古着買取サービスに関するさまざまな問い合わせに対応している。
問い合わせは、メール・電話でそれぞれ月に数千件程。これに社員・アルバイトを含めたスタッフで対応しており、特に多い問い合わせとしては、大きく3種類の問い合わせがあるという。
「全体の4割を占めるのが、『買い替え割』についてのお問い合わせです」と花村氏。
買い替え割とは、ZOZOTOWNで商品を購入する際に、以前購入した商品を下取りに出すことで割引されるサービスだ。ZOZOTOWNの商品購入画面では買い替え割を選択でき、それまでの購入履歴とそれぞれの商品を下取りに出したときの割引料金が表示される。下取りに出す商品を選ぶと、その場で割引が適用され、商品を購入できるようになっている。
下取りに出す商品は、商品購入後に発送すれば良い仕組みになっているが、この件で問い合わせが発生するのだという。
「いざ下取りに出そうとしたら、商品が見つからなかったり、破れていて下取りに出せなかったりして、どうすれば良いですかといったお問い合わせがあります」と花村氏。
商品が下取りに出せなくなった場合、買い替え割によって割り引かれた金額をユーザーに振り込んでもらうことになる。しかし、すぐには納得してもらえず、どうして振込が必要なのかといった説明が必要になることも多いそうだ。
買い替え割に関する問い合わせの次に多いのが、集荷および査定に関する問い合わせで、それぞれ1割程とのこと。
集荷に関する問い合わせは、集荷日時の変更依頼がほとんどだという。集荷日時は基本的にサイト上で変更できるが、日時が近い場合はサイト上での変更が間に合わず、直接の問い合わせとなる。集荷はヤマト運輸が行っているので、ヤマト運輸へ連絡するのが一番早いのだが、クラウンジュエルへの問い合わせも多いそうだ。
査定に関しては、取引内容を変更したいという問い合わせが多い。花村氏が例をあげてくれた。「この商品を2,000円で買い取りますと提案して、一度はお客様の了承が得られたものの、その後にお客様の気が変わられるということがあります。他には、このブランドはもう少し高く買い取ってもらえないかというお声を頂戴することもあります」。
古着買取は一点物の扱いであり、規定の答えがない案件も多い。前述の3種類の問い合わせが多いとはいえ、他の4割にはさまざまな問い合わせがある。最近の特徴として、他社の中古買取と比較する問い合わせも増えているという。
花村氏によると、「他のサービスではいくらで売れる、他のサービスならこれはできた、他のところに出すから早く返してほしいといった問い合わせなどがあります。サービスに対して厳しめのフィートバックをされる方は、いろいろなサービスを並行して使われている方が多いです」とのこと。
対応品質を均質化する人材教育、人材採用
クラウンジュエルのカスタマーサポート部は、いわゆる「コールセンター」のイメージとはずいぶん異なる。ECにおける唯一のお客様の接点として、情報を吸い上げ、サービスや対応の改善につなげている。社員もアルバイトも、問題解決のために考え、他部署との連絡を密に取り、ただ電話を受けるだけでなく時に奔走する。
そのため、マニュアルや人材教育は徹底しているそうだ。
「カスタマーサポート部は、サービス設計全体を理解していないとお客様に正しいアウトプットができません。スポットのキャンペーンなどは、都度細かい条件まで把握していないと、お客様にミスアナウンスをしてクレームにつながってしまいます」と花村氏。
朝礼で必要事項を伝えることはもちろん、口頭だけでなく、すべてをマニュアルとして文書化してウェブにアップし、いつでも見られるようになっているという。さらに、必要に応じて筆記テストを行い、一定の点数が取れなかったら再度説明することも行っている。マニュアルは、ページ数にすると200ページ程の膨大な量。新人教育では、これを三カ月ほどで仕上げるそうだ。
新人教育を考える時、花村氏はまず、「どういうオペレーターを育てたいか」というところから考えたそうだ。そして、「どのお客様にも自社の品質基準をクリアした対応を提供したい」という考えに辿り着いた。そこに行くつくためには、どうしたら良いのだろうか。
「最初に、どんなスキルがあれば良いオペレーターと言えるか考えたところ、100個ぐらい出てきたんですね。さすがに教えきれないので、特にお客様に大きな影響を与えることに絞って、35個ぐらいになりました。それを一番覚えやすい順番でプログラムにして、一週間ごとに筆記や実技で覚えたことのテストをして、何点以上だったら次のステージに進むといった感じで新人研修をしています」。
他にも、コールセンターでよく行われる、対応品質をはかるアンケートも実施している。アンケートでは、お客様に対応品質を「満足・まあまあ満足・普通・不満足・非常に不満足」の5段階で評価してもらい、普通以下の評価にはその原因を分析して、サービスの見直しやオペレーターの対応の見直しなど、品質改善を行っている。
カスタマーサポートで曖昧になりがちなKPIも明確だ。具体的には、電話対応の冒頭から終わりまで、シチュエーションごとにどのような行動を取ることが良いというスキルが定められており、定期的に対応内容をチェックすることで、スキルの何%が発揮できているかを指標としている。
「たとえば、お客様が『査定結果に関して不満があるんですけど』と仰ったら、『査定結果に対してのご質問ですね』と一度認識をすりあわせ、お客様が『そうです』と仰ってから話を始めるなど、第三者目線でできているかどうかが分かるよう、スキルを決めています」と花村氏は説明する。
教育だけでなく、そもそもの人材の採用も重要な点だ。カスタマーサポート部に向いている人材について、花村氏は次のように考えている。
「一つは、相手の方が言おうとしていることを理解しようとする姿勢が重要です。自分がどう伝えたいかを優先してしまう方は不向きだと思います。もう一つは、丁寧に効率よくやるという思考の人です。カスタマーサポートはお客様の感情に向き合う仕事ですが、感情に寄り添うだけでは、次のお客様をお待たせしてしまい兼ねません。極端な例ですが、一人のお客様に8時間かけて丁寧な対応をするより、お客様の大切な時間を奪わずに短い時間ですごく満足してもらうにはどうしたら良いか。そうすることでより多くのお客様にご満足いただけるという発想が必要です」。
「できない」と言わないことが大切
カスタマーサポートにおいて、花村氏が大切にしているのが「安易に『できません』と言わない」ということだ。「できないと思っても、まず一度可能性を模索したり、お客様の最終的な要望を聞くことで、これならできますという提案をしたりするようにしています」。
花村氏がそう考えるようになったのは、ある個人的な体験がきっかけだという。
「以前、歯の矯正に通っていた時に、最初の受診で転勤や転職の予定を訊かれたんですね。歯の矯正は一つの医院に通い続けないといけないので。ただ、ちょうどその時にアジアで働きたいという気持ちがあって、『アジアに行くかもしれません』と申告したんです。そうしたら、院長の知り合いがアジアにいるかもしれないからとその場で調べてくれて。結果的にはアジアとの連携は難しかったのですが、その結果よりもチャレンジしてくれたというプロセスを見て、この医院なら信頼できると感じました」。
また、お客様によって丁寧な説明を求めているのか、あるいは「はい・いいえ」で答えられるようなシンプルな説明を求めているのか、どんな対応がベストかは、人によっても違う。お客様が何を求めているのかを考えた上で、スタイルを変えることも必要だ。
「効率、品質のどちらも重要視し、お客様が何を求めているかを基準に、時間をうまく使うことを大事にしています」と花村氏。
クラウンジュエルのカスタマーサポート部では、電話のトラッキングができるツールや、メールを分析するためのツールは多少使っているものの、効率化ツールは特に使っておらず、人の手がメインとなっているそうだ。
「弊社が取り扱っている商品は、ユーズドで一点物が多く、お客様の想い入れがあるものが多いです。それに応えられるよう、その方の背景や考え、価値観に寄り添った、一人一人のお客様にぴったり合うパーソナライズした対応をしていきたいです。そうすることで、問い合わせの解決だけでなく、弊社がどういう会社なのか、お客様にアピールする機会にもなると考えています」。