月間30万件のチャットボット入力!ソフトバンクとりらいあが目指す理想のチャットボットとは

利根川 舞 [PR]

人々の生活に欠かせない携帯電話スマートフォン、インターネット関連のサービスを提供するソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)。インフラとも言えるサービスを提供する同社のブランド、Y!mobileのチャットボットには1ヶ月で30万件もの入力があるという。緊急性の高い問い合わせも多数入力される中で、どのように質問者の満足度を向上させているのだろうか。

今回、Y!mobileのカスタマー対応の窓口であるチャットボット、『バーチャルエージェント®』を提供するりらいあコミュニケーションズ株式会社(以下、りらいあ)デジタル・マーケティング本部 プロジェクトリーダーの大栁文乃氏とソフトバンクのRPAI推進室 事業推進統括本部 企画推進部 推進2課の中村文威氏、上田晶子氏、佐塚優人氏に話を伺った。

質問者自身の言葉とマッチしないFAQが課題に

質問者自身の言葉とマッチしないFAQが課題に   ソフトバンク株式会社 RPAI推進室 事業推進統括部 企画推進部 
   推進2課 中村文威氏

ーー事業概要を教えてください。

中村 Y!mobileは元々PHSを扱うウィルコムとポケットWi-Fiを扱うイーモバイルという2社の合併を発端とした事業であること、そしてヤフー株式会社との協業もあり、現在ではPHSとWi-Fi、スマートフォンを取り扱っています。コンセプトとしては”ソフトバンクより安い”といったことを掲げています。

Y!mobileでのチャットボット導入以前に、もともとソフトバンク本体である課題を抱えていたのです。オンラインサイトでは一般的にページの一番下に”よくある質問”というコンテンツがありますが、そこで使われている言葉はお客様自身が考えている言葉とマッチしないことが多いと思うんです。

そこで、お客様の言葉で疑問を解決出来るソリューションとして、まずは有人チャットを導入しました。導入当時は他社さんのソリューションを使用していたのですが、現在は自社で開発したものを使用しています。

そして有人チャットを運用していくと、お客様が使われる言葉をFAQにするのは難しい。けれども、お客様の聞き方が違うだけで回答としては同じ内容であることに気づきました。そこでこの課題を解決するソリューションはないかということで探したところチャットボットというものがあると。

その頃はチャットボットが流行り始めた時で、サポート面で実績を上げているソリューションがほとんどなかったのですが、ヤフーグループのLOHACOさんがチャットボットで実績を上げていて、そのチャットボットはりらいあさんが手がけているというのを聞き、早速アポイントを取って話を聞いた所、弊社にマッチしそうだなと思い導入しました。ソリューションだけでなく、気が合うと言いますか、色々と運用を進める上でのやりやすい部分とかがあって、昨年にY!mobileで入れるときも同じようにご相談させていただいておりまして、そういった同じ方向を向く感覚は大事だと思います。

大柳 担当者同士で同じ方向を向かないと、お互いに実現したいことを推進するのが難しくなります。こうしたサポートツールの導入には、そういった信頼関係がさらに重要ですね。

独自のカスタマイズで顧客満足度をアップ

独自のカスタマイズで顧客満足度をアップ

ーー導入にあたり独自にカスタマイズされた点はありますか?

中村 お客様が見ているページごとに質問内容が異なるため、ページのサブドメインごとにファーストビューを変えてもらうようにお願いしました。例えば「ワンキュッパ割」というキャンペーンページで立ち上がるチャットボットは加入条件であったり、併用可能なキャンペーンが書いてあるんですが、他のプランのページを開くとそのページに合わせた違う選択肢が出るように設定しています。また、ソフトバンクならではというと有人チャットとの連携です。チャットボットとの会話ログと一緒に有人チャットへ連携できる仕組みを構築してもらいました。

大柳 ソフトバンクさんは、有人チャット連携やページ別に表示させる選択肢を変えるといった点だけではなく、様々な機能についてご相談いただき、今ではそれらが標準機能になりつつあります。

チャットボットから回答を提示した際に「お役に立ちましたか?」と表示させるアンケート結果が「はい」でも「いいえ」でも有人チャットへ誘導できるようにカスタマイズしたのもソフトバンクさんのチャットボットの特徴ですね。通常、質問に答えられなかった時や、アンケートで「いいえ」を押された時に有人チャットへ連携をするというケースが多いんですが、チャットボットの回答には満足しているけれど、もっと詳しく知りたいというお客様に向けて、アンケートで「はい」を押した方に対しても「詳しい案内をオペレーターからできますよ」というプラスアルファのご案内をしています。

上田 「自分の理解した内容であっているのか」という最終確認をしたいというお客様にとっては、画面上でそれができるとサポートを受けた側としては気持ちいいんじゃないかと思いますね。また、アンケートの下によく見られている質問を出すことで、オペレーターに繋がずともお客様の知識を補充することも可能です。

ーーLOHACOさんではキャラクターに合わせて言葉遣いを変えられていますが、Y!mobileのキャラクター、ふてニャンも言葉のカスタマイズをされているのですか?

中村 はい、キャラクター設定には力を入れました。LOHACOさんでもしっかりとキャラクター設定をしないと利用率にかなり差が出るという話があったと思います。最初は猫のキャラクターなので、にゃ言葉が多いのかなって思って作っていたのですが、ふてニャンのキャラクター担当部門から「ふてニャンは40代男性の設定なので、そんなに可愛くにゃんにゃん言わないですよ」と言われてしまいまして、その後はふてニャンのキャラクター担当部門とキャラクターの設定をすり合わせ、CMで言わないような言葉もチャットボット上では喋っています。

バーチャルエージェント®の導入で有人チャットへの入信が半分に削減

バーチャルエージェント®の導入で有人チャットへの入信が半分に削減   ソフトバンク株式会社 RPAI推進室 事業推進統括本部 企画推進部 推進2課 佐塚優人氏

ーー導入後にどのような変化がありましたか?

佐塚 ページにもよるのですが、有人チャットをバーチャルエージェント®に置き換えていくと、大体40〜50%くらい有人チャットからのお問い合わせを削減できました。

上田 サポートサイトでは70%程削減できたケースもありますね。『My Y!mobile』の方が回答率は低いのですが、それはもともと『My Y!mobile』自体にお客様の契約状況が書かれているためで、全体としては有人チャット流入の抑止効果が出ていると考えています。

中村 今年の7月に利用料金や契約内容の確認、オプション変更ができる『My Y!mobile』というページにもバーチャルエージェント®を入れた所、こちらでも50%ほどの有人チャットへの入信削減効果がありました。こうした契約情報の確認やオプションの変更をするページでもバーチャルエージェント®はとても有効だったんです。10月15日からは対応範囲を拡大し、支払いの設定や割賦の状況確認などもバーチャルエージェント®で一次対応をするようにしました。

上田 有人チャットにつながる時間は限られてますが、24時間いつでもどこでも自分の契約状況が分かるというのは、お客様にとっては嬉しいことだと思います。わからないことがあったら、電話しようではなく、とりあえずチャットで質問しようという風潮になっていくともっと良いですね。

先日有人チャットのログを見ていたら、初めてご利用されたお客様から「チャットって聞いて正直あまり期待してなかったけれど、思ったより満足できた。また使うね」というコメントがありました。また、「今入院していてショップに行けないから、すごく助かった」というコメントもあって、そういったコメントを見るとこちらもすごくやる気がでます。期待に応えられるように、もっと改善して行けたらいいなと思いますね。

佐塚 チャットボットでは想定していない質問ももちろん入ってくるので、ちょっと違う回答を出してしまったりすると、「チャットボットでこういう回答だったんだけど」という意見が有人チャット側にそのまま入ってきます。そうすると、オペレーターがチャットボットの回答を訂正しなければいけなくなってしまいます。そういったことがまだまだあるので、回答の精度をあげるために、有人チャット側に流れてしまったお客様の声を吸い上げていきたいと考えています。

中村 ちなみにですが、導入当初はオペレーターへの入信が減りすぎたっていう意見がありましたね(笑)。「こんなに減るとは思わなかった」という感想もオペレータからありました。

大柳 チャットボットの導入ではリリースしてみないとわからないことがたくさんあります。私たちも様々なお客様企業へのサービス提供をしていますが、各社ごとにサービスリリースしてからじゃないとわからないことがたくさんあり、どの案件でも驚きがあります。

チャットボットは魔法のツールではない

チャットボットは魔法のツールではない   ソフトバンク株式会社 RPAI推進室 事業推進統括本部 企画推進部 推進2課 上田晶子氏

ーーチャットボットの利用が月に30万件あるそうですが、運用面で工夫されている点はありますか?

上田 サービスの正式名称とお客様が思っているプランの名前ってちょっと呼び方が違ったりするんです。例えば「ワンキュッパ割」だと「1980円のあれ」みたいな入力があったりするので、その部分を抽出してなるべくお客様の心情にあったもので言葉を構築するようにしていますね。

大柳 当社で工夫している点ですと、プラットフォームの機能改善ですね。前回取材いただいているオルビスさんやLOHACOさんは、当社側で運用を担当していますが、ソフトバンクさんは、ソフトバンクさんご自身で運用をしています。

当社へのご相談で、パッケージ型のソリューションを使用していて、お客様自身が試行錯誤をしながらチューニングをしていたものの、運用をするための人員を割かなければいけなかったり、思うように数値が上がらず、結果的に「専門の会社にお願いしたほうがいい」と判断されたというものも少なからずあります。

しかし、ソフトバンクさんの場合は担当の皆様がWebに慣れていらっしゃるというのと、これまで両社で多くの取組を重ねてきているので、スピード感を持った運用を進められるよう、両社間でできることをうまく役割分担ができていると思います。

より使いやすい環境で運用していただくために、1ヶ月~2ヶ月に1回は機能追加やアップデートを実施していますが、ソフトバンクさんからは数ヶ月に1回くらいの頻度で機能追加のご要望のリストをいただくこともありますので、いただいている要望をできるだけプラットフォームへ追加できるように、開発を進めている状況です。

ーー今、チャットボットやAIの導入をご検討されている方へお伝えしたいことはありますか?

佐塚 チャットボットに対して魔法のツールみたいなイメージで、なんでもできるんじゃないか思う方もいるんです。ですが、お客様の聞きたいことも多種多様ですし、少数ですが目立つご意見を直すと、他のお客様に影響が出てしまうこともあります。なんでもできるんだって思って導入をすると、目指している成果が出ない可能性もありますね。

大柳 当社でもIBM Watsonを採用した時に、「AIを活用しているチャットボットということはお客様が入力したことに対して自分で考えて答え出してくれるんだよね?」と結構聞かれました。最近はチャットボットサービスを提供している各社さんがチャットボットは人が手をかけてチューニングする必要があることを謳っていらっしゃって、徐々に正しい理解がされてきていますが、それでもチャットボットやAIに対する事前の期待値はすごく高いです。

もちろん、できるだけ「魔法のツール」に近づけていく努力を提供側がする必要はあるのですが、どういった目的で活用したいのか、導入をしてどういったことを実現したいのかを明確にして導入検討を進めていくことが、成功への近道と考えています。

チャットボットの高みを共に目指す

チャットボットの高みを共に目指す   りらいあコミュニケーションズ株式会社 デジタル・マーケティング本部
   プロジェクトリーダー 大栁文乃氏

ーーりらいあさんとのお取り組みでご要望などはありますか?

上田 いつも迅速に動いてくださっていますね。「こういう問題が起きていて、こうしたいんですけど」というようなやり取りを月に2、3回くらいすることもあります。そういった機能改善もご対応いただいたことで、現在ではあまり追加機能の要望はなくなりました。

佐塚 管理画面を提供してもらって運用していますが、管理画面もすごく使いやすく、UI的にもわかりやすいですね。一番最初に導入したときには改善要望も出しましたが、今はあまりないですね。

大柳 嬉しいですね。我々は、構築や運用を長く実施していることもあり、操作に慣れてしまっているので、自分たちで工夫をしてそのまま使ってしまっている部分も多くあります。こうしてお客様にも使っていただいて、我々と異なった視点で様々なご意見を吸収できるのはすごくありがたいと思っています。小さいことでも意見をどんどん投げていただけるとプロダクトの企画側としても、多面的に考えることができて、とても進めやすいです。

ーー今後はどのような展開をお考えでしょうか?

中村 現状では『My Y!mobile』やサポートサイトなど、サポート面がWebに特化しているんですけど、それ以外にもコールセンターや店頭などチャネルはいろいろとあると思うんです。将来的にはチャットボットがWebのソリューションではなくて店頭でも活用できるソリューションになるようにソフトバンクとしても挑戦していきたいです。その時は是非りらいあさんと協力できたら良いなと思っています。

大柳 この2、3年でようやくWeb接客という言葉が世の中に定着してきています。しかし、これまでのデジタル上でのお客様とのやり取りはコミュニケーションが希薄になってしまうことや、使用するお客様に依存しています。ですから、Web接客ツールやプッシュ型のツールと連携させ、迷っている方にちょっと声をかけてあげたり、サポートをメインにしつつもマーケティング的な要素を入れ、お店にいるような感じで接客をしていくというのが目標ですね。

また、正しくヒットをしていても実際の回答内容がお客様にとって満足のいくものではなかったりするとアンケートでいいえを押されて悪い結果が出てしまったりというケースが多くあるので、もう少しお客様視点に寄り添った回答を提示して、アンケートで良い結果が出るようなQAの作り込みや動線を構築していきたいです。

会話ログやアンケート結果はテキストで生の声が見えてくるので、お客様のサービス改善につながると思います。Web解析などの様々なサービスと連携をしながら、両者間のサービスを向上させるプラットフォームや仕組みづくり、PDCAサイクルの見直しなど、全面的にテコ入れをしようと考えています。

中村 ソフトバンクでは有人チャットとの組み合わせもあり、かなり良い回答率になっていますが、さらに解決率を上げるところは我々も一緒に考えていきたいと思っています。

りらいあコミュニケーションズへのお問い合わせはこちら


記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

ECを活用した地方創生に注目しています!
EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

利根川 舞 の執筆記事