Qoo10を急成長に導くeBay。日本のEC市場に大旋風を巻き起こす注目企業の人材とは
eBay傘下となったQoo10の成長が目覚ましい。その大躍進を支えるのは、eBayの思想とそれに共鳴する人材だ。間違いなくこれからの日本のEC市場で台風の目となるQoo10が、eBayとの融合で開花した理由はどこにあるのか。これからのEC業界で求められる人材と労働環境とは。eBay Japan合同会社(以下、eBay Japan)の人事部長 菅生 ふみ氏にお話を伺った。
なぜQoo10は急成長を遂げたのか?注入されたeBayのカルチャー
Qoo10の登録会員数が激増している。急成長のきっかけは明らかにeBayの傘下となったことであろうが、一体Qoo10内でどんな化学変化が起きたのか。社内の人材をよく知る人事部のトップである菅生氏はこう話す。
「日本においてECはまだ発展途上。伸びしろがあるこの業界の中でQoo10が急成長しているのは、グローバルで成功した経営手法を取り入れられたというは大きいでしょう。eBay傘下の海外の大手ECモールで経験を積んだキーパーソンが日本のQoo10の経営に参画しています」。
アジアパシフィック地域においては、eBayは韓国とオーストラリアで各々No.1モールを運営している。しかし成功させるための手法について、“本社の意向”“本国からの指示”といったものは、ほんとんど無い。
「現地で成功するビジネスモデルは現地の人が一番よく知っているはず、というのがeBayの考え方です。現地に任せてその国に合ったビジネスを展開していく。本社の資本力やリソースをフル活用しながら、現地スタッフが成功させている一例として韓国やオーストラリアがあげられます。昨年、eBay.inc(米国)のCEOが来日した際も『日本でのビジネスが拡大していくために私が一番できることは、信頼して邪魔をしないことだ』と語っていました」それがeBayスタイルなのだと菅生氏。
社員を信じ、社員に権限を与える。一人ひとりの裁量を大きくし、それを原動力にできるのが急成長の要因のようだ。
「承認や細かい指示が必要な環境ではどうしてもスピードが落ちてしまう。一人ひとりを信頼し、その人の判断を信頼しています。間違いを恐れず、とりあえずやってみるのです。
日本国内のECモールの中には、数千人規模の社員を抱える大企業もあります。eBay Japanは300人に過ぎません。小さいものが大きいものに立ち向かうには、できることを選定して集中し、チームとしてまとまるしかない。チームワークを重視し、社員全員が意欲的に業務に取り組まないといけないんです」。
個人をエンパワーし、社員が成長する環境が成長の原動力となる
ベンチャー企業であったQoo10のチャレンジ精神と、グローバル企業であるeBayの多様性を兼ね備えたeBay Japan。高いモチベーションを持つ社員の経歴はさまざまだ。
「私自身も前職は金融機関で働いていましたが、企業の法務部やコンサルティング会社、メーカーからの転職など、社員の背景はさまざまです。大事なのはeBayの企業文化に賛同していること。当社はカルチャーも人も良いと思いますが、それは、人に力を与え、どんな方にも平等に潤ってもらいたいというビジョンに共鳴している社員が多いからだと思います」そう菅生氏は話す。
eBayは“人々をエンパワーし、いろいろな経済的な機会を与える”ために“人により現実化され、テクノロジーにより推進され、誰でも平等に参加できるオープンな市場を提供する”というビジョンを掲げている。
「人は自由な環境で最善の選択ができ、力を与えられ、経済への平等な機会が作れるという創立者の考えが、eBay Japanにも引き継がれています。フラットな組織で風通しがよく、人を役職で呼ばず「さん」を付けて呼ぶし、四半期ごとに、経営戦略を全社員に共有します」。
部門によっては英語を使うシーンが多いものの、国内向けECモール「Qoo10」に関わる営業やマーケティング部署では使う機会は少ないため、話せることは重要ではないという。
「外資なので、社内で英語が飛び交っているイメージもあるかもしれませんが、働いている大半が日本人。もともとのQoo10の内資のような雰囲気に外資であるeBayのカルチャーが入ってきて、良いミックスになっていると思います」。
そう話す菅生さんを悩ますのは、急成長を支える人材の不足だ。
最小限の尽力でハイパフォーマンスを生み出すeBay。今求める人材は
以前、世界中で何十万人もの従業員を抱える大手企業に勤めていたという菅生氏。しかし大きくなればなるほど組織は官僚的になり、スピード感がなくなるというのはよくある話だ。
「今はグローバル企業の大きな資本力にバックアップされながら、スタートアップの小回りがきく環境という良いとこ取りです。eBay Japanでは仕事の裁量がかなり大きいので、毎日ワクワクしながら働けるのはありがたいです」
そう笑顔を見せる菅生氏に、eBay Japanで活躍している人物像を聞いた。
「1つめは、長期的な視野を持ちつつ短期で確実に結果を出せる人です。ECは変化が激しい業界なので、今期結果を出さなければ来期につながりません。
2つめはチャレンジ精神がある人。今Qoo10は急成長していますが、他の国内大手ECモールに戦いを挑むのは簡単ではありません。そんな環境下でも、社内は常に明るく前向きにがんばれる人が集まっています。
3つめは思考の柔軟性です。グローバル企業で社員も多国籍なので、本社の文化や考えの違いを受け入れられることが大切です。チームワークが徹底していて、協調性が欠かせません」。
「チャレンジャーの立場として日本で新たなECビジネスを築いていく。自分を成長させたい方、成長を楽しめる方にはうってつけの環境でしょう。国際理解や自分と違う考えを受け入れる柔軟性を持ち、ルーチンワークや慣例に疑問を持って少ない資源をどう活用すればビジネスを拡大できるかを考えられる人が今、必要です」。
独自の文化を形成しているeBay Japanは、評価制度や福利厚生も個性的だ。
評価の一定割合は部署が掲げる目標に基づくが、ある一定割合は本人の仕事に関連して“本人が取り組みたいこと”を自主的に設定し評価するという。マネージャークラスは部下の満足度を上げることも評価対象だ。
福利厚生では、社員一人ひとりが寄付できる枠を現金でもらい好きなチャリティーに寄付できる制度や、5年に1度・1カ月間の有給を取得するサバティカル休暇などがある。
「この業界は変化が激しいので、それくらいのタイミングでリフレッシュしてもらう制度です。eBayでは全世界で共通の福利厚生が提供されていますが、日本では特に英語を学びたいという社員が多いので、社内で英語の無料レッスンを受けられる制度もあります」。
毎日の仕事が少しずつ誰かの暮らしを変えていけると信じるeBay。これから日本と世界のEC、そして私たちの暮らしをどう変えてくれるのか。更なる成長が期待される。
「人が成長する環境が事業を伸ばすという考えで組織作りを行っています。5年後・10年後、今では想像もできない組織になっていると思うのでとても楽しみです」菅生さんはそう微笑んだ。