「オンワード・マルシェ」の検索経由CVRが1.5倍になった“サイト内検索の改善策”とは?
アパレル大手のオンワードホールディングスが運営している、全国の逸品を集めたグルメECサイト「ONWARD MARCHE(オンワード・マルシェ)」。2019年3月にECサイトをリニューアルした際、サイト内検索エンジン「goo Search Solution」を導入し、より買いやすいECサイトへと生まれ変わった。
リニューアル後は、課題だったサイト内検索の「ゼロ件ヒット」を削減したほか、さまざまな検索機能を実装してユーザーの検索体験の向上に取り組んだ結果、クリックスルー率(CTR)やコンバージョン率(CVR)がリニューアル前の約1.5倍に向上するなど大きな成果を上げているという。
「オンワード・マルシェ」が取り組んだサイト内検索の改善策とは、どのようなものか。また、短期間で成果が出たのはなぜか。オンワード樫山の藤原祐樹氏と、「goo Search Solution」を提供しているNTTレゾナントの北岡恵子氏に話を聞いた。
「オンワード・マルシェ」とはどんなサイト? オンワードがグルメECを運営する理由とは?
━━今回の対談では、「オンワード・マルシェ」を2019年3月にリニューアルした際、サイト内検索をどのように改善したのか、詳しくうかがいたいと思います。まずは、「オンワード・マルシェ」とはどのようなECサイトなのか、教えていただけますか?
オンワード樫山 藤原祐樹氏(以下、藤原氏):「オンワード・マルシェ」は、スイーツや和菓子類、加工食品、飲料、酒類などを取り扱っている食品専門のECサイトです。全国各地のメーカーや生産者が出店し、全国の隠れた逸品を厳選して販売しています。2016年11月のオープンから2年半で、取扱商品数は約4000品目に増えました。
一番の特徴は、弊社のバイヤーが実際に産地に赴き、生産者と直接やり取りしながら「本当に良いもの」だけを取りそろえていることです。お中元やお歳暮などのギフト利用のほか、ちょっといいものを自分のためにという自家利用も含め、品揃えには好評をいただいています。
━━アパレルメーカーであるオンワードホールディングスさんが、グルメECサイトを立ち上げたのはなぜですか?
藤原氏:主力のアパレル事業に加え、ギフトやグルメなどにも事業領域を広げることで、お客さまとの接点を増やすのが目的です。
また、オンワードグループの会員プログラム「オンワードメンバーズ」の会員向けのサービスを強化する狙いもあります。弊社はアパレル事業の実店舗とオンラインショップ、さらにはグループ内の一部ブランドの顧客情報を一元管理し、ポイントも共通化しています。
そのため、例えば、洋服を購入したときに付与されるポイントを使い、「オンワード・マルシェ」でおいしい食べ物を買うこともできるんです。オンワードグループ全体で顧客満足度を高めることも、「オンワード・マルシェ」を開始した理由の1つです。
リニューアル前は「ゼロ件ヒット」や「表記ゆれ」が課題だった
━━「オンワード・マルシェ」を2019年3月にリニューアルした理由を教えていただけますか?
藤原氏:はい。「オンワード・マルシェ」は取扱商品が4000品目に及び、商品ジャンルも「おかず」「スイーツ」「調味料」「日本酒」「ドリンク」など多岐にわたりますから、優れたサイト内検索エンジンでないと、お客さまは欲しい商品にたどり着けません。
リニューアル前に使用していたサイト内検索エンジンは、表記ゆれへの対応が不十分で、検索結果に何も表示されない「ゼロ件ヒット」が頻発していました。また、キーワードとは関係ない商品が検索結果に紛れ込むなど、精度にも課題があったんです。こうした課題を解決したくて「goo Search Solution」を導入しました。
━━サイト内検索に課題を感じていたのですね。NTTレゾナントの北岡さんにうかがいたいのですが、こうした課題を抱えているEC事業者は多いのでしょうか。
NTTレゾナント 北岡恵子氏(以下、北岡氏):そうですね、藤原さんがおっしゃったような、サイト内検索における「ゼロ件ヒット」や「表記ゆれ」への対応は、多くのEC事業者さんが抱えている課題だと思います。
「オンワード・マルシェ」さんのような食品を取り扱われるサイトさんでは「りんご」「リンゴ」「林檎」「アップル」などユーザーによって入力の仕方が多岐に渡っているケースが多く、「ゼロ件ヒット」が頻発するECサイトは珍しくありません。「ゼロ件ヒット」を放置していると、ECサイトのCVRが上がりにくいだけでなく、エンドユーザーは「このECサイトには、欲しい商品がない」と判断し、離脱してしまいます。
せっかく用意している商品を「ほしい」と思って検索しているユーザーに紹介できないのは、とても勿体ないですよね。ですから、「ゼロ件ヒット」対策はとても重要だと考えています。
また、キーワードに対して最適な商品が表示されない問題も、よく聞く課題の1つです。例えば、ファッションのECサイトで「Tシャツ」を検索したのに商品説明文の一部分にひっかかったせいで「スニーカー」が上位に表示されてしまうような問題は、多くのECサイトで見受けられます。
「ゼロ件ヒット」を減らすために取り組んだこと
━━「ゼロ件ヒット」を削減するために、具体的にどのような施策を実施しているのでしょうか。
藤原氏: 「goo Search Solution」は、「オンワード・マルシェ」に合わせた表記ゆれ辞書が自動で生成されるのと「goo」の表記ゆれ辞書がそのまま利用できるので、自然に「ゼロ件ヒット」は減っていきます。
また管理画面には「ゼロ件ヒット」になっているキーワードを一覧で表示する機能がありますので、その原因を分析し、管理画面からチューニングをしたりもします。「ゼロ件ヒット」の中には、以前取り扱っていた商品がなくなっている場合や、そもそも商品の取り扱いがないケースもありますから、その原因を管理画面で確認したりもしますね。
━━「goo Search Solution」は、AIが検索結果の最適化を自動で行なうそうですね。
北岡氏:はい。サイトを訪れたユーザーの買い物行動ログを解析して、AIが検索結果を最適化します。どの商品を、どの順番で表示すればCTRやCVRが改善するか、すべてAIがログから判断します。ユーザーの行動ログはどんなサイトにも蓄積されている「サイトの宝」だと思いますが、なかなか活用できていないのではないでしょうか。
goo Search Solutionでは、そのログを活用しています。また管理画面をご提供しますので、そちらから運営側が売りたい特定の商品を指定して上位表示することも可能です。
━━「オンワード・マルシェ」は「goo Search Solution」を使い、他にどのような検索機能を実装したのでしょうか。
藤原氏:今回のリニューアルでは、いかにユーザーに気持ちよく買い物をしてもらうか、という観点で機能追加を実施しました。例えば、スマホ利用者がより絞り込みがしやすくなる「タッチサジェスト機能」(※検索条件に合わせて、利用の多い「絞り込み条件」をサジェストする機能)や、その時の人気を反映した「トレンドワード」機能などです。
また、検索の基本機能部分も強化しています。「おすすめ順」や「レビュー順」など、これまでになかった並び順にできるようになったほか、ファセットに商品数を表示できるようにもしました。検索は商品を探す人の大半が最初に使うものですから、些細で目立たない機能でも、積み重ねが大切だと考えています。
CTRやCVRは1.5倍以上。過去ログを分析することですばやく結果を出す
━━「goo Search Solution」を導入したことで、どのような成果が表れていますか?
藤原氏:数字として表れている成果では、CTRやCVRが徐々に上昇し、今では「goo Search Solution」の導入前に比べて1.5倍まで上昇しました。
「ゼロ件ヒット」の削減や、検索結果の最適化などに取り組んだほか、ユーザーが欲しい商品を見つけやすくなったことが各指標の改善につながったのだと思います。
━━AIで検索結果を最適化するには結果が出るまで時間がかかると思っていましたが、導入後すぐにCTRやCVRに改善が見られるのですね。
北岡氏:過去のログからも学習ができますので、導入後すぐに成果を出すことができます。運用を開始する前にログ連携いただくこともできますし、期間が足りない場合は過去のログをいただいて、それを学習データにすることもできます。学習に時間が掛かるのでは、と心配する方は結構いらっしゃいますが、実際は過去のログをいただいて対応するケースも結構ありますね。
運用を開始した後はさらにログが溜まっていきますから、検索結果の精度は時間の経過とともに上がっていきます。
藤原氏:運用を開始してまだ4カ月ですから、これからAIがキーワードを学習したら、どれぐらいCTRやCVRが改善するのか、今から楽しみです。
導入後のサポートやセキュリティ対策も抜かりなく対応
北岡氏:藤原さんにうかがいたいのですが、「goo Search Solution」を実際に導入して、どのような感想をお持ちですか?
藤原氏:「goo Search Solution」には便利な機能がたくさん備わっていますし、検索結果の精度もしっかりしているので、満足しています。また、NTTレゾナントさんはサポート体制も充実しているので、その点もありがたいです。
━━藤原さんからサポートのお話も出ましたが、NTTレゾナントさんは「goo Search Solution」を導入したクライアントに対して、どのようにサポートしているのでしょうか。
北岡氏:お客様によって異なりますが、例えば定例ミーティングを実施したり、新機能開発に取り組んだりしています。日常的にコミュニケーションを取らせていただいてお客さまからの要望を迅速に実現し、ご連絡があったらすぐに対応できる体制を整えています。
もちろん、開発体制だけでなく、お客様のご要望に応じて手動チューニングができる体制も整えています。チューニングや運用とひとことに言ってもサイト様によって必要な運用は異なりますから、何が必要なのか、何をすべきなのか、ということをお話しながら運用内容を決めたりしていますね。
進化を続ける「goo Search Solution」、音声検索やチャットボットにも対応
━━最後に、藤原さんと北岡さんに今後の抱負や展望をうかがいます。まずは藤原さんから、「オンワード・マルシェ」の展望をお聞かせいただけますか?
藤原氏:「オンワード・マルシェ」で販売している商品は、どれも自信を持ってお薦めできるものばかりです。商品の魅力やおいしさを、ECサイトを通じて伝えることが私たちの役目だと考えていますので、商品の写真や説明文などのクオリティにもこだわり、「おいしそう」「食べてみたい」とお客さまに感じていただけるECサイトを目指します。
そのための施策として、品ぞろえやECサイトの特集ページなどの監修を有名グルメ誌の編集長などを歴任している大西健俊さんにお願いしています。「オンワード・マルシェ」は以前から「美味しそうに見える」というところに重点を置いているので、今後も「美味しそう」で「オシャレ」なサイト作りをしたいと思っています。
もちろんサイト内検索も強化していきます。検索は「買い物体験」のひとつです。買い物は「商品をカートに入れて購入ボタンを押す」だけはありません。欲しい商品を簡単に見つけること、まだ知らない商品に出会うことも、買い物体験の中では需要なポイントです。その上で、検索はとても大切な機能となりますから、NTTレゾナントさんにご協力いただきながらサイト内検索をさらに改善していきたいと思っています。
━━NTTレゾナントさんは「goo Search Solution」を今後どのように進化させていくのか、お聞かせください。
北岡氏:検索エンジンの精度をさらに向上させるのはもちろんですが、近年ニーズが高まっている音声検索やチャットボットなどにもしっかり対応していきます。
弊社はポータルサイト「goo」を20年以上運営し、膨大な量のキーワードを分析してきたことから、自然言語解析を得意としています。その知見を生かし、テキストによる検索に限らず、音声検索やチャットボットなど、新しいテクノロジーの要望にも応えていきたいです。