中国で高まる日本商品の人気 ソフトバンクが手掛ける新たな越境ECビジネスに迫る
実店舗での売り上げが減少し、国内ECもレッドオーシャンとなっている今、新たな販路として海外越境ECを検討している企業も多いのではないだろうか。
しかし現地法人や自社ECサイトを立ち上げるためには莫大な費用がかかるうえ、決済、物流、言語などの課題も山積みだ。
そこで注目したいのが、コストや手間をかけずに中国大手EC プラットフォームであるTmall Global(ティーモールグローバル=天猫国際)に出品できるソフトバンク株式会社の越境EC支援サービスだ。
中国市場における特徴や進出するメリット、サービスの詳細について、同社の デジタルマーケティング事業第1統括部 グローバル推進課 課長 松浦 竜馬氏にお話を伺った。
この現状は「新しい市場を生むチャンス」だととらえたい
――コロナの影響で、実店舗やインバウンドでの需要に頼ってきたメーカーさんは売り上げ減となっています。この状況をどのようにとらえておられますか?
新型コロナ影響の失業者全国で6万人超以上出て、さらに2019年には4.8兆円あったインバウンド市場におけるビジネスが消滅しつつあります。言うまでもありませんが、EC以外の国内市場は縮小傾向にありますね。
一方、巣篭もりで消費が高まっているオンラインショッピングは急増し、当社のグループ会社が運営するYahoo!ショッピングでは、昨年4月と比べて今年の4月の売り上げは1.4倍上昇しています。
こうした流れや、長い間インバウンドマーケティング事業をしてきた経験から、当社では現在の状況を「危機が新しい市場を生むチャンス」だととらえています。
歴史を見ても、19世紀に世界的にコレラが流行した際は、100万人以上の方が亡くなりましたが、水道を整備し清潔な水を作ることで安全な環境を作り上げました。1929年の世界恐慌の際は、1,300万人が失業しましたが、ここでも道路を整備することで、新しいインフラや雇用を作り、生活を立て直してきたのです。
コロナの影響を受けた2020年においては、企業は新たな市場としてECに力を入れるべきだと考えています。しかし国内ECはすでにレッドオーシャン。そこであらためて目を向けたいのが中国を始めとする越境ECです。
中国ECでは今、日本関連商品の需要が大きく高まっている
――このタイミングで中国に進出するメリットとは?
中国における3~5月の平均売上増減率を見ますと、外食はマイナス3.2%、小売はマイナス15パーセントと大幅に減少しているのに対し、ECの売り上げはプラス16.3%となっており、ECが市場全体を牽引していることが読み取れます。「618」という、「独身の日」に次ぐ規模のショッピングフェスティバルでは、今年の売上高が過去最高の10.8兆円を記録しました。
実はこうした状況には、日本関連商品の売り上げが上がっていることも大きく影響しています。日本関連商品の売り上げは前年比でプラス42%成長。中国の方が来日できない状況で、中国ECでは日本製品の販売が加速しているのです。
ちなみに「独身の日」では中国EC全体の国別流通総額ランキングにおいて、日本が4年連続1位を獲得しています。
つまり、越境ECで日本のものが買われる機会は増え続けている。これは売り上げ減に悩む日本企業にとって、事業をトランスフォーメーションし、海外でビジネスを広げるチャンスであるととらえて、私たちはソリューションをご提供しています。
大手プラットフォーム出品からプロモーション、制作、発送まで
――越境ECはコストがかかり、難しいと感じている企業も多いと思います。
確かに現地法人を立ち上げたり、自社ECサイトを作ったりすれば、物流、決済、広告などの課題が大きく、莫大なコストもかさみます。そこで当社では、中国最大のECモールであるTmallの越境版、Tmall Globalへの出品申請から、プロモーション、制作、商品登録、CS・発送までワンストップでお任せいただけるサポートを展開しています。
Tmallは中国最大級のECプラットフォームで、中国最大級のインターネットカンパニーであるアリババが運営。ソフトバンクグループ株式会社はこのアリババに出資しています。Tmallは2019年の「独身の日」においては、1日で約4兆1,602億円の流通を達成。国内でのシェアは50%を誇っています。
Tmall Globalの中には、日本の大手小売企業の自社ショップと並んでアリババの直営ショップがあり、その中に日本館、韓国館、ヨーロッパ館などがあります。今回当社がご提案するのはこの日本館での出品です。日本の商品販売に注力して展開していますので、中国の方は「日本の商品」はここで買えるというイメージを持って訪れます。
またアリババの直営店舗ですので、商品を厳選してお届けしているという信頼感もあります。実際に出品されている美容関係の企業様では、1ヶ月に数千万円の販売になっている事例もあります。
とくに中国で人気のある日本関連商品は、ヘルスケア、コスメ、マタニティ・ベビー、ペットなどのジャンルです。すでに中国で売れているものより、最近日本で流行り出しているものや、これからブレイクしそうなものを扱っている企業様に、ぜひ注目していただきたいですね。
グループ企業のメディア活用などで、進出コストを75%カット
――コストはどのくらいかかるのですか?
当社の見解では、通常プロモーションをかけて出品し、現地での反応をみるまでに1年程度かかり、費用も4,000万円程度かかりますが、今回の出品モデルを活用いただければ3ヶ月で同様の施策・分析・検証ができ、コストは約300万円で対応、75%のコストカットが可能です。販売手数料は50%かかりますが、物流費なども含まれていますので、自社出店より非常にコストメリットがあります。
なぜこのような大幅なコストカットができるのかというと、一つはプロモーションに、グループ企業であるアリババのメディアを低コストで活用できるからです。たとえば中国では4億人以上、ネット利用者の約半分がライブコマースを利用していますが、当社の出品モデルをご利用いただければ、アリババのライブコマースを通じて商品を売ることも可能。影響力のあるKOLやモデル、タレントといったインフルエンサーの手配も含めてお任せいただけます。
中国では自治体の長がライブコマースで地元の特産品を販売したり、ショッピングモールの店長がライブコマースに登場して積極的に売るなどライブコマースがトレンドとなっているので、大きな効果が期待できるでしょう。
ライブコマースの他にも、バナー広告やタイアップ広告、KOLによる体験記事といったアリババグループのメディアの中から、その時々の空き状況も見ながら最適なところを利用できるため、通常では数千万のコストがかかるところを、低コストで効果的にプロモーションしていくことができます。
またプロモーション以外でも、出品申請、登録、制作、物流、といった越境ECにかかるさまざまな業務を一括してお任せいただくことで、全体的にコストを抑えたソリューションを実現しています。
アジア主要国での出品も可能。まずはお気軽にお問い合わせを
――今回の出品モデルは、どのような企業に使っていただきたいですか。
「中国越境ECはしたいけれど、最初から大きなコストはかけられない」「まずは現地でどんな反応があるか試してみたい」といった企業様に、気軽にお試していただけるプラットフォームとして活用いただければ幸いです。
まずはお問い合わせいただき、商品選定・掲載可否の審査をさせていただいた上で、出店申請や店舗制作、商品登録を行います。商品選定・掲載可能の判断後、販売開始までのリードタイムは3ヶ月前後。企業様側にしていただくこととしては、申請に必要な種類のご用意と、商品登録に必要な素材のご提供、東京もしくは大阪の指定倉庫への商品在庫の送付のみですので、国内ビジネスの感覚で進めていただけると思います。
なお、この出品モデルはあくまで中国進出のフェーズ1であり、当社では次のステップも視野に入れ、フェーズ2として自社モールを開設、さらにフェーズ3として現地法人を設立して中国国内ECや、リアル販売網の本格開拓に進むためのプランもご用意しています。
また、グループにはアジア主要7カ国に関連会社のECプラットフォームもありますので、グループ企業を通じて各国のECモールなどでも出品していただけます。こちらも海外進出を目指す小売店様やメーカー様に、ぜひご検討いただきたいですね。
「自社商品と中国マーケットとの相性が知りたい」「どこの国で売れるか分からない」などの疑問にもお応えできますので、まずはお気軽にお問い合わせいただければと思います。