今までのAmazon、これからのAmazon
2020年上半期は新型コロナウイルスの影響により、EC・そしてAmazonへの注目が一層高まった。Amazon出品に関わる新サービスのリリースやサービス強化が図られた2020年上半期を振り返りつつ、2020年下半期にEC事業者がAmazon運営において注目すべき点は何か、Amazon専門コンサル事業を手掛けるアグザルファ株式会社の辻氏・鈴木氏にお話を伺った。
『偽造品犯罪対策チーム』の設置
Amazonでは2019年に偽造品撲滅対策の一貫である『Project Zero』が開始されましたが、2020年6月には新たな取り組みとして、『偽造品犯罪対策チーム』を設置したことを発表しました。
専門チームは不正行為者に対して効果的に法的責任を追及していく姿勢を表明しており、偽造品撲滅に向けて犯罪組織を根本から取り締まろうとしていると考えられます。日本でも今後は偽造品を販売する出品者が減っていくことが期待できるでしょう。なお、商標を保持しているブランドオーナーは、『Amazonブランド登録』の申請が可能です。
登録が完了すると、専用ページからブランドオーナーとして知的財産の不正利用などに関して直接、Amazonに通知することができます。以前より稼働はしていましたが、より分かりやすく整備されたため、今後も新たな動きに期待したいところです。
Amazon独自配送網の強化と「置き配」の浸透
2020年1月には、Amazonと直接契約を結んだ個人事業主が配送を行う『Amazon Flex』の対象エリアを拡大するなど、独自配送網の強化も継続して進めています。また、2020年3月には「置き配」を、30都道府県で配送方法の初期設定にするといった思い切った展開を行い、コロナ禍、非接触型での安全な配送方法として置き配を世間に浸透させ、再配達問題の解消にもつなげました。
Amazonによる配送品質の向上はユーザーに対するメリットだけでなく、FBAを利用する出品者にとっても好影響を与えます。なぜなら、FBAはAmazonが提供する独自の配送サービスを利用することができるためです。FBA手数料は今年4月に改定がありました。
全体的に値上がりしたものの、納品可能なサイズが増えたことや小型商品を安価に納品できるプログラムのリニューアルなど、幅広い商材でFBAを利用できるようになり、売り上げ拡大のチャンスが増えたのではと感じています。年内に新たなフルフィルメントセンター(FC)を4つ開設することも発表しており、納品受領体制の強化や繁忙期に発生しやすい納品制限の緩和にも期待できるでしょう。
フルフィルメントセンターの感染対策強化
Amazonは全国に複数のFCを抱えていますので、仮にいずれかのFCがコロナの影響で一時的に稼働停止となったとしても、物流の維持は可能といえます。
Amazonは2019年だけでも国内で6000億円超を投資したことを発表していますが、特に新型コロナ対策として物流に多くの投資を行っていると推察されます。そのため、各FC内では感染予防対策を強化しながら稼働できており、Amazonとして購入者が必要とする商品を安全に届けるべく、長期的にも安定した物流の維持を実現していくことでしょう。出品者としても安心してFBAの利用を継続していけるはずです。
Amazonによるコンサルティングサービスの開始
2020年上半期にはAmazonによる出品者向けの有料コンサルティングサービスが開始となりました。楽天・Yahoo!は以前より社内にコンサルタントが存在していましたので、Amazon出品者にとって待望の新サービスといえます。
新機能やプログラムへの対応を相談したり、必要に応じて専門部署にエスカレーションが可能なテクニカルサポート専用回線の利用など、Amazonだからこそ提供できる価値を生かしたサービス内容になっており、Amazonにおけるコンサルティング市場の全体的な盛り上がりが期待されます。弊社でも年々問い合わせが増えておりますが、競合出品者が増え続けるなかで、こういったコンサルティングサービスの重要性も高まっていくことでしょう。
海外販売支援サービスの開始
これまでもFBA海外配送プログラムの対象であれば、日本のAmazonで販売されているFBA対象商品を海外にいる方も購入することが可能でした。しかし、日本の購入用アカウントを新規で作成する必要があるなど、課題が残っていました。
今回の『海外販売支援サービス(グローバルセリング)』の開始によって、専属チームにより出品手続きの支援に加え、海外輸送に関する外部サービスの紹介など総合的なサポートを受けながら海外販売を実現できます。
日本のセラーセントラルを通じて各国のマーケットプレイスへ出品できることも運営面での利便性を感じます。しかしながら、米国Amazonは特に競争が激しく、海外配送費用や文化の違いによる返品率の高さなど、国内販売以上にコストが発生しますので、売れる商品を見極めて一部からなど慎重に利用を検討していくべきでしょう。
「動画」によるブランディングの浸透
Amazonにおける商品訴求の新たな手法として、「動画」によるブランディングが浸透していく可能性があります。
米国では商品画像の他に「商品動画」の埋め込みが一般化されていますが、日本においては現在一部の出品者向けの機能となっています。機能として実装されていますので、一般の出品者への利用開放も間もないのではと考えています。
また、昨年米国では自社商品をライブ配信で紹介する『Amazon Live』が開始されました。5Gの普及による動画配信の有用性の向上やライブコマース市場の活性化を予測すると早期に国内リリースされる可能性もあるのではないでしょうか。「動画」を利用したブランディングはAmazonでの出品においても売り上げ最大化・競合差別化対策の一環となっていくでしょう。
大手ブランドによるAmazon直接参入の加速
大手ブランドによるAmazon直接参入のさらなる加速が見込まれています。
弊社としても年々感じる現象の一つでありますが、今年はコロナ禍の影響もあり、Amazonに商品を卸していた大手ブランドがセラー(出品者)として直接参入し、Amazonに本腰を入れるケースもさらに増えるのではないでしょうか。
とはいえ、資本力のあるブランドであっても新規参入の場合は、商品ページの構築や広告運用などを含め実績ゼロスタートになるため、早々に好発進できるかは対策次第にかかっているでしょう。
プライムデーと年末商戦対策
「プライムデー」の日本開催の正確な時期は現時点でもまだ発表されていませんが(*取材日2020年8月27日当時)、8月初旬にインドですでに開催されています。日本でのプライムデー開催に期待を持ちたいところですが、昨年11月に初開催した「ブラックフライデー」、そして12月開催の「サイバーマンデー」についても忘れてはなりません。こちらも開催有無は未発表ですが、短期間の間に3大セールが開催される可能性もありますので、開催を見据えた準備が必要となるでしょう。
Amazonでの売り上げ確立が新たな課題となっている事業者様も多いかと思います。Amazon出品で重要なことは“Amazonに最適な施策”を実施することです。弊社はAmazonコンサルティングのパイオニア企業として、2011年から長年にわたり売り上げ拡大を実現してきました。
Amazon出品に関することであれば、どのようなことでも構いません。ベンダーやセラー、海外販売や広告運用など、ご状況に応じたプランや施策内容をご提案させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。