「D2Cは参入しやすい」は本当か?「和もん」展開のSEAMとSUPER STUDIOに聞いたビジネス立ち上げのリアル

ECのミカタ編集部

(左)株式会社SUPER STUDIO 取締役 CRO 真野 勉氏
(右)株式会社SEAM 代表取締役/CEO 石根 友理恵氏

昨今では“D2C”“サブスクリプション”等の時代変化に合わせ、通販ビジネスの戦略やあり方も進化が求められている。

一方で、新しい概念への理解が浅く、既存の通販ビジネスの手法から脱却できず新しい手法に挑戦できないなどの理由で、変化に対応できていない企業も未だ多く存在している。

これらの背景を踏まえ、ECのミカタではD2CブランドとD2C支援企業の対談連載記事をお送りする。上記課題を払拭し、より多くの企業がビジネスをアップデートできる事例や生の情報をお伺いする。

連載第4回目のこの記事では、和ピクルス「和もん」で注目を集める株式会社SEAMの代表石根友理恵氏と、株式会社SUPER STUDIO 取締役 CRO 真野勉氏に、D2Cは本当に参入障壁が低いのか、リアルな立ち上げの話や今後の展望を聞いた。

連載予定企画(変更の可能性あり)

第1回
BULK HOMME 野口氏×N&O Life 西口氏×SUPER STUDIO 真野氏
https://ecnomikata.com/original_news/25896/

第2回
BASE FOOD 齋藤氏×アライドアーキテクツ 村岡氏
https://ecnomikata.com/original_news/26512/

第3回
DINETTE 尾崎氏×アライドアーキテクツ 村岡氏
https://ecnomikata.com/original_news/26994/

第4回
SEAM 石根氏×SUPER STUDIO 真野氏

第5回
Sparty 西田氏×アライドアーキテクツ 村岡氏
https://ecnomikata.com/original_news/28448/

第6回
SUPER STUDIO 真野氏×アライドアーキテクツ 村岡氏

300社にアタックするも玉砕。ニッチ分野はパートナー探しに苦労

――「和もん」は2020年春にクラウドファンディング「Makuake」で約3000食を完売して注目を集めました。D2C事業で漬物というのはかなり斬新です。いつごろ漬物にしようと決めたんですか?

石根:確かに、かなりニッチですよね(笑)。商材として漬物を選んだのは2019年の6月くらいですね。

――起業する際、D2C以外にも50くらいの事業案の中から漬物D2Cをえらんだということですが、漬物業界ではD2Cの前例がないように思います。どうやってパートナー企業を見つけたんですか?

石根:漬物は日本の古い産業の一つでで、卸がメインです。しかも大手の漬物メーカー上位10社が市場の4.5割を占めています。歴史ある会社が多くて、私のような一見さんで、かつ今までの販路ではあまり考えられないネット販売をしようという話は、まず話も聞いてもらえませんでした。電話で300社くらいアタックしましたが、基本は「お断り」でしたね。

そこで知り合いのツテを頼って、ようやく現在の製造パートナーと出会えました。創業30年ほどの漬物企業としては新興の会社だったのと、経営陣が「漬物業界を変えたい」という想いを持っていました。最終的には私の熱意を買っていただき、今の関係があります。

真野:D2Cはここ2年くらいで急増していて、最初はコスメや健康食品関連が多かったのですが、最近はSEAMさんのように新規性の高い分野で始めるところもでてきています。ただやはり製造を担っていただくパートナー探しには苦労されている印象ですね。

――ニッチを攻めるとそういう大変さがあるんですね。石根さんもパートナー企業もEC未経験となると、商品開発も大変だったんじゃないですか?

石根:ええ。ニッチだからこそターゲットに刺さる“いい商品”を作らないと売れません。当たり前ですが、ブランドに親和性があったり商品がよかったりしなければ、数多ある商品からわざわざD2Cブランドを選びませんよね。

なので商品開発にはとても時間を費やしました。自分で農家に足を運んで素材を探したり、お酢や出汁を選んだり…。ゴールはないので今もなお試行錯誤しながら作り続けています。

それに何をおいしいと感じるかは人によって違います。その物差しがわからなくて悩みました。さらにクリエイティブもどうやって世界観を出すか、限られた予算との闘いでした…。これも今ゴールはなく永遠のテーマです。

「D2Cは立ち上げやすい」という話が独り歩き?二人が感じる違和感

――D2Cは立ち上げやすいとよく言われますが、話を聞いていると実態は少し違いますよね。

石根:ジャンルややり方にもよると思うのですが、私も本当に立ち上げやすいかな?って思います。話が独り歩きしているような……。

確かに今では、特にファッションや小物は中国・韓国での仕入れがとてもしやすくなりたくさんD2Cブランドが立ち上がっていますが、もはや埋もれやすいですよね。私はやっぱりものづくりにこだわりたいなと思っています。

真野:SNSが普及したことでマーケティングの手段が増え、D2Cは10年前と比べれば確実に立ち上げはしやすくなったとは思いますが、だからと言って運用したり、収益をしっかりと上げていくという点では簡単ではありません。見ることやることが非常に多い業態です。

自分が商品をECで購入した時、商品が出荷され宅配便で運ばれるという部分はみなさん理解できていると思います。ただその裏側の見えていない部分こそ、メーカーさんが一番苦労されているポイントです。例えば決済手段の選定、物流コスト、製造コスト、仕入れのタイミングなどなど、考えなければいけないことは無限にあります。一度定めたオペレーションもその効果を分析しながらPDCAを繰り返さなくてはならないので、何かをやり尽くすということはないのではないでしょうか。

石根:ほんとキリがないですよ。スタートしても初めから売れるわけでもありませんし、常にサービスを改良し続けないといけません。

――まさに“ビジネスの総合格闘技”ですね。安易な気持ちでD2Cを始めたらしっぺ返しをくらいそうです。

真野:立ち上げること自体は難しくないかもしれませんが、継続的に運営していくのはかなり厳しいですね。

石根:特に食品関連は大変です。原価率が高いうえに、厳格な衛生管理が必要です。そのための運用コストは他商材に比べても高いのではないでしょうか。「ちょっとやって儲けよう」くらいの気持ちじゃ絶対にできません。

まずは自分たちですべての作業をこなし、ポイントを理解。外注化はそこから

――D2Cはやるべきことが多いということですが、たとえば一部を外注化することで解決できないでしょうか?実際SEAMさんは外注されていますか?

石根:いえ、管理部門から配送、マーケティング、PRまですべて自社でやっています。

私たちはD2C未経験から始めたので、どこに課題があって、どのように仕組化したらいいのかをまず自分たちが理解する必要があります。そうでなければ改善もできません。そのために自社ですべてやっているんです。ポイントをしっかりつかんだら外部にご依頼する方針です。

真野:私もD2Cをやるうえではそこは特に重要だと思います。もちろん手間はかかります。しかし細かい作業も含めた理解が足りない企業は現状、上手くいってないと感じています。

だから現時点で内製化の選択は間違っていないと思います。それにD2Cの漬物はポテンシャルが未知数の市場です。だから内製化をしてできるだけコストを削減していくのが一番いい。ただ目標とする売上や届けたい人の数は見据えてやっていけないと、業務がキャパオーバーして回らなくなってしまう可能性もあります。そのバランスや外注化のタイミングは、きちんと見極める必要があります。

――実際外注するとなると、外注先に事業へのこだわりを理解してもらうのが大変そうですね。

真野:そこはコミュニケーションの回数だと思いますね。勉強会とかで商品に関する知識、愛、背景などをすべて伝える、あきらめずにコミュニケーションをとり続ける。それができているところは強い連携ができている気がします。

石根:D2C企業の資金調達先に製造会社や業務提携先が入っているパターンがありますが、資本関係があるところは強いですよね。単に利害関係があるというだけでなく、想いが共有できていて「一緒にやって一緒に成功しよう」という関係が作れていれると、D2Cのあり方として理想的だと思います。

ビジネスコンテスト「MASTERPLAN」がD2Cをやりたい人の背中を押した

――SUPER STUDIOさんは2019年からD2Cのビジネスコンテスト「MASTERPLAN」を実施されていますね。SEAMさんも応募されたようですが、どういうコンテストなんでしょうか?

真野:私たちは以前からD2Cブランドのコンサルティングをやっていく中で「この市場をもっと盛り上げたい」という思いをもっていました。D2Cって、やりたいと思っていても一歩踏み出せない人たちが多いんです。

D2Cはアイディアが良くて、事業としてやれそうと思える代表のパーソナリティがあれば、ほかに必要なのは「知識」と「背中を押してもらうこと」です。その機会をつくろうというのが始まりです。

コンテストはアセットの提供やパートナー企業との連携、ディスカッションの機会提供など、私たちにしかできないこと盛り込んだ内容になっています。

――SEAMさんはどういった経緯で応募されたんでしょうか?また実際参加してみていかがでしたか?

石根:私はもともとSUPER STUDIOのメンバーに知り合いがいて、ちょうど漬物のD2Cをやろうと思っていたタイミングでたまたまMASTERPLANの話を聞いて、応募しました。

当時は企画から実現に向けて確度を上げていくフェーズだったので、MASTERPLANでどういったターゲットに、どういうブランドメッセージを届けるのかをディスカッションしながら詰めていきました。またEC未経験だったので、ECに必要なことをゼロから教えてもらいましたね。

名だたるD2Cブランド起業家さんやVCの方とのセッションなど、得られるフィードバックがすごく具体的でした。ただ資金提供するだけではなく成長に必要なアセットを提供してもらえるので、参加していなかったら事業は立ち上がっていなかったと思います。すごく感謝しています。

真野:SEAMさんはアドバイスされたことをちゃんと聞いて、ブラッシュアップしてきてくれていました。こういうイベントに参加するところって、話は聞いても「わかりました」で終わってアウトプットしないことが多い。そんな中、毎度真摯に改善を繰り返してきてくださったことに将来性を感じ、本選に進んでいただきました。

――MASTERPLANに参加したことで事業の成長のほかに何かメリットはありましたか?

石根:MASTERPLANで一緒に切磋琢磨したメンバーは今もすごく仲がいいんです。これからの時代は、ブランド同士のコラボレーションがすごく大事になってくるんじゃないかと思っていって。D2Cは前提として「豊かなライフスタイルをおくりたい」という気持ちを持った方がターゲットです。どのブランドもターゲット共通点があるので、コラボすることで商品を手にとっていただける可能性があがります。そこは戦略として大事にしています。

真野:確かにコラボは増えています。ニッチなものが好きな人たちという意味で、購買層は似てくるのでいい施策ですね。

面白く、上手いなあと思ったコラボはスナックミーさんとMoon-Xさんのコラボですね。スナックミーさんの「おつまみおやつ」とMoon-Xのクラフトビール「CRAFT X」の相性は抜群だなと思いました。

目指すは「食のライフスタイルカンパニー」、これからのD2Cに必要なものとは

――SEAMのサービスづくりで今後やってきたいことはなんですか?

石根:いろいろな職人さんにお会いしている中で、日本の食に関するものづくりの技術や精神を今の時代にリデザインしていきたいという想いが明確になりました。

ものづくりの第一人者とともにつくることで、商品がブラッシュアップされ、自然にブランドのストーリーも生まれます。結果D2Cブランドとして差別化にもなりますよね。

そこは本当にこだわっているので、中間セクターを挟まない直接のパートナーシップの構築を行います。

――ただD2Cを始める際に、そのパートナーシップがなかなかできずに困っている事業者も多いと思います。関係構築には何が大事なんでしょうか?

石根:パートナーシップには信頼性が欠かせません。その信頼性には重要な要素が二つあって、一つが実績です。「この会社と仕事をしたら、抱えている課題に対してすごくいいことが起きるかもしれない」と思わせる必要があります。ただ立ち上げたばかりだと、実績はゼロですよね。その場合はもう一つの要素である人間性で訴える。何度もしつこく熱意と描く未来を真摯に伝え、「仕方ないな、この人とならまあやってみるか!」と思ってもらえる関係を築くことです。

――SEAMは、会社としてはどういう方向性を持っているのですか?

石根:食に対する価値感はいままさに多様化している最中です。10年後は、ファッションカテゴリーのように、食に対する姿勢は個人を表すアイコンの一つになり、私達はライフスタイルに合わせた食生活を選ぶ時代になる。それに向けて、私たちは「食のライフスタイルカンパニー」になりたいと考えています。和もんはそのファーストプロダクトです。ココロとカラダを満たすというコアコンセプトを体現する複数ブランドを展開していきたいと思います。

真野:これまでの時代は、売れている商品をマネして商品を作れば売れるという側面がありました。ですがD2Cをやるのであれば、それはやめたほうがいい。何かを変えたいといった思いに基づいてやるべきですし、それが今の世の中に必要とされています。インサイトをとらえた商品作りをすれば、面白い将来が見えてくる。私たちもそれを手助けしていきたいと思っています。

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