景品表示法と広告表現をどう考える? 弁護士が事例で解説

ECのミカタ編集部

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所
中山 明智 Akitomo Nakayama
成 眞海 Shinkai Sei

景品表示法(以下、景表法)は、EC事業者が確実に押さえておきたい法律の一つだ。2020年10月にも、健康・美容領域の事業者2社がECサイト上の不当表示を指摘され、課徴金納付を命じられている。具体的にどういった点に注意すればよいのか。広告表現の法律相談に注力する弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士 成眞海氏が解説する。

他人ごとではない景表法違反 課徴金が事業に影響を及ぼす 恐れも

:景表法に課徴金制度が導入されたのは2016年。不当表示を行った事業者に対して、原則、該当期間における対象商品の売上額×3%の課徴金納付が命じられます。納付額によっては事業に少なくない影響を及ぼすリスクはもちろん、コンプライアンスに対する消費者の目が厳格化する中、企業としての信用やブランド価値の低下につながる恐れもあります。

景表法違反が疑われる場合、まず、消費者庁が疑いのある事業者に対して詳細に調査を行います。調査の中で事業者に直接事情聴取したり、資料の提出を求めたりするケースが大半です。その結果、法律に違反していると判断されると『措置命令』(不当表示によって消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施など)と『課徴金納付命令』が発出されます。

これとは別に、虚偽・誇大広告であるとして、特定商取引法に基づく業務停止命令を受ける恐れも否定できません。過去に事例もあり、今後、同様の事例が出てくる可能性は大いにあり得ます。

これまでに疑いを掛けられているのは、消費者相談件数が多かったり、法律違反を繰り返していたりといった目立つ事業者だけではありません。いつ、どの事業者が調査の対象となってもおかしくないのです。景表法違反は決して他人ごとではないと肝に銘じておくべきでしょう。

事例2社の問題点は何だったのか? 科学的根拠や打消し表示の落とし穴

2020年10月に課徴金納付命令を受けた株式会社トラストの「ヴィーナスカーブ」「ヴィーナスウォーク」、株式会社TOLUTOの「ケトジェンヌ」は、いずれも景表法違反のうち「優良誤認表示」に当たると指摘されました。優良誤認表示とは、商品・サービスの品質や規格などの内容について不当な表示をすることです。

景表法の基本的な考え方として、広告表現を受け取った消費者が商品に対して抱く印象と、その商品の実態が乖離していれば、その広告表現は優良誤認表示ということになります。今回指摘を受けた2社は、商品を着用したり(トラスト社)、摂取したり(TOLUTO社)するだけで、容易に体重が減る、もしくは脂肪が減るかのような表示をしていました。しかし、実際の商品にそうした痩身効果があることを裏付ける合理的な根拠がなかったことから、行政処分の対象となる不当表示であると指摘されています。

ここで押さえておくべきポイントは2つ。1つ目は、表示を裏付ける根拠として認められる水準です。例えば、「ケトジェンヌ」のような健康食品の痩身効果を証明する科学的根拠として「マウスを対象とした実験で脂肪が30%分解された」というデータを提示したとしても「合理的な根拠である」とは認められません。その健康食品を使用するのはマウスではなく人間なので、人間を対象とした実験結果データでなければ意味がないのです。

一つの目安ですが、最終製品を使った臨床試験結果など、機能性表示食品として届け出が認可されるレベルのデータがあって初めて『合理的根拠』になると考えてください。かなり厳しい条件ですので、安直に根拠があると軽信するべきではありません。

2つ目は打消し表示の扱いについてです。例えば、今回のトラスト社の事例では、消費者の誤認を避けるため「※効果の感じ方には個人差があります。効果効能を保証するものではありません」といった表示をしていましたが、消費者庁には「消費者の誤認を打ち消すものではない」と判断されています。

広告表現から消費者が受ける印象と実態に乖離があるかどうかを決めるのは、あくまで第三者である消費者庁です。消費者庁の目から見て不当表示であれば、たとえ事業者側が『打消し表示で誤認排除に努めている』と主張したとしても、一蹴されてしまうのが現実です。

ベースは「過度な誇張をしない」こと 過去の行政処分資料もヒントに

中山:景表法違反のリスクは、打消し表示や簡易な実験データの提示など、いわば小手先のテクニックでは解消できないと認識ください。改めて『過度な誇張をしない』という原点に立ち返ることが最も重要です。

とはいえ、どこまでが「過度な誇張」に当たるのかを把握しかねるところもあると思います。具体的な基準は景表法にも明記されていません。そこで参考になるのが、過去に発出された課徴金納付命令・措置命令の事例です。これらの行政処分について消費者庁が発表する資料には、文言からデザインに至るまで、問題となった表示がかなり詳細に記載されています。

複数の事例を追っていけば、リスクの高い表現が感覚的に分かってくるはずです。例えば、健康・美容領域では、2社の事例でも問題となった『痩身』のほか、化粧品における『シミが消える』『たるみがなくなる』といった表現には要注意。また、実際の使用状況に即した実験結果を根拠として提示できない限り、数字で商品の性能や効果を示すのは避けた方が安全です。『99.9%除菌』ではなく『しっかり除菌』、『72時間効果が持続』ではなく『長時間持続』といった形で主観的に表現すれば、逆に客観的根拠の提示が難しいので、指摘も受けにくくなりますね。

広告はあくまで 魅力を伝える一手段 商品力強化で本質的な差別化を

コンプライアンスの観点から法令順守は大前提です。ただ高リスクな表現を避ければ、その分、広告の訴求力が弱まってしまう懸念もあるかもしれません。事業成長を目指し、競争が激化するEC市場において、自社商品の差別化が最重要課題である事業者にとってみれば「リスクを取っても攻めの表現をしたい」というのが本音かもしれません。実際に過去の相談でも「景表法を気にしていては何も書けない。商品の魅力を伝えきれない」という声を頻繁に聞きました。EC事業者にとっては、非常に悩ましい問題だと思います。確かに、攻めの広告表現が消費者の目を引くのは事実です。やっと月商が1000万円を超えた事業者が、さらなる成長のために新商品を開発し、すぐに売上を伸ばすために、「これだけで痩せる」などの広告を打ち出すとします。これが原因で繰り返し行政処分を受け、課徴金を支払っていては、長いスパンで見た事業拡大は滞ってしまうし、信用も失います。会社自体がなくなってしまっては元も子もありません。

数字やリスクの高い文言を使わなくても、商品の魅力を伝えることは十分可能です。例えば、抽象的だからこそインパクトのあるコピーや、スタイリッシュなグラフィックを活用するなど、ユニークなクリエイティブで勝負している例も少なくありません。

もっといえば、広告はあくまで、商品の魅力を伝える手段の一つです。より本質的なのは、商品力自体を高めることなのではないでしょうか。その結果、UGCが増えれば、広告に頼りすぎることなく、売上を拡大する仕組みも作れるでしょう。EC事業者の方々には、単に景表法違反を避けるためでなく、より広い視野で、商品の魅力を伝える戦略を考えてみていただきたいですね。

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