リアル店舗で直接話しているかのようなスピードと温度感がファンを生む

ECのミカタ編集部

左:KIBACOWORKS株式会社
デザイナー
藤井 伸之氏

右:KIBACOWORKS株式会社
代表取締役
有友 直樹氏

自社ECの運営に注力して約2年で売り上げが20倍近く上がったその理由は、顧客とのリアルタイムかつフランクなコミュニケーションにあると話すKIBACOWORKSの藤井伸之氏。藤井氏が考えるフランクなコミュニケーション、顧客に支持される丁寧な対応についてお話を伺った。

納得できるデザインにしたい だから自社ECを選んだ

藤井 KIBACOWORKSのスタートは横須賀です。中学の同級生である社長の有友と2人で、Appleデバイスの修理を行う店を立ち上げたのが2012年。そこで扱っていたアクセサリーがすごく売れていたんです。お客さんの大半が横須賀基地の関係者だったので、お土産としても購入してもらえるよう木製のiPhoneケースに和柄をデザインして販売を始めました。知人の紹介で東急ハンズでの取り扱いが決まると、卸業とOEMでの販売数が見込めるようになったので、2015年に地元である鎌倉へ戻って工房を構えました。当時から個人への販売は自社ECで受けてはいたものの、Instagramを活用しながら本腰を入れて運用するようになったのは2017年ごろからです。

ただ販売数が伸びたことで当時使っていたサービスの手数料が高額になってきたことと、名入れのオプションがなく、備考欄に書き込んでもらって注文を受けていたこともあり、不便さを解消するために自社ECをリニューアルしました。KIBACOWORKSは僕がデザインした商品を全てハンドメイドで製作しています。工房の雰囲気やデザインの特徴まで伝わるサイトにしたいという思いがありました。モールも試しましたが、デザインをカスタマイズできないし、コストもかかる。僕らには合わないと判断しました。

チャットの“丁寧”は、メールの“丁寧”と概念が違う

自社ECのリニューアルで、名入れオーダーもフォーマット化でき、決済方法も増えて格段に使いやすくなりました。2019年からInstagramの広告を活用すると売り上げは20倍近く上がりましたが、一番変わったのはCVRです。その理由は、問い合わせをチャット対応の一択にしたことに尽きると思います。

InstagramのDMで対応することもありますし、電話応対もしますが、自社ECでのやりとりはすべてチャットでメールアドレスは掲載すらしていません。

僕も昔はガチガチにかしこまったビジネスメールしか書けませんでしたが、チャットを使い始めてから思ったんです。「お問い合わせありがとうございます。商品につきましては」と長々続く丁寧な文章って本当に必要なのかなと。お客さん側に立って考えたら、知りたいことの答えが速攻で分かることの方が重要なはずです。ビジネスメールの丁寧な文章は体裁を整えないといけないので返信に時間がかかります。でもチャットなら、「承知しました!」の一言でも違和感がありません。テンポ良く会話できるし、絵文字を使って親近感を出すこともできます。

お客さんからは、「丁寧に対応してもらった」といった反響がほとんどですが、僕はビジネスメールのような丁寧な文章は送っていません。それでも丁寧と感じてもらえるのは、メールとチャットでは丁寧の概念が違うからでしょう。チャットではスピードと話しかけやすいフランクさが大事。一番怖いのは無言で立ち去られることですから、立ち去られないためにはメールの丁寧さと、チャットの丁寧さを切り分けて考えるべきだと気付きました。

会話を楽しみたい

お客さんと直接会話できるのは、自社ECだからこそのメリットだと思いますが、何より僕はお客さんとの会話が楽しいし、仲良くなりたいんです。だから問い合わせ内容にシンプルに答えるだけで終わらせません。少しおせっかいをしてまだ残っている疑問を引き出したり、また戻ってきやすいように一声かけたり会話が続くよう工夫します。

むしろ、僕からお客さんに「これってどうですか?」と質問することもあります。何か悩んだときには、お客さんに聞くのが一番だし、お客さんの声には課題がすべて顕在化されていて、感心するような答えをもらえることが多いです。もちろん全てのお客さんに対してフランクに対応するわけではありません。そこはお客さんの温度感に合わせることがすごく重要で、丁寧な中にも絵文字を入れたりしながら反応を見て、お客さんの心がほぐれたと感じたら大いに会話を楽しみます。

店員に相談しているような感覚で不安を解消する

https://kibacoworks.com/

意外にも多いのは商品をカスタマイズしてほしいという要望です。「こんなことできますか?」と自由な発想がチャットで届くので、毎回ビックリします。技術的には可能だけどコスト面などを考慮して商品化してこなかったことでも、「できませんか?」と聞かれると試したくなる。リアルな声を実現するには、どんなフローが最適なのかを確認するチャンスだと捉えます。

名入れを大文字にするのと小文字にするのはどちらがカッコイイかといった、個人的な質問も多いです。店舗であれば、店員さんとの会話の中で自然に出てくる質問だと思うので、僕の趣味や経験をもとにどんどん答えます。さらにイメージが湧くと決断しやすいので要望に合わせて完成イメージを画像でお見せしたり、スマホで撮った商品の写真を送ります。

ECサイトでは直接商品を手に取ることができないのでお客さんは少なからず不安があって、その不安を解消できれば購入されます。悩んでいるときに、店員さんから「似合っています」と背中を押してもらうと決断しやすいように、チャットでも背中を押してあげたい。先日もお客さんから「お店で接客されているみたいだった」と言ってもらえたのですが、コミュニケーションの取り方は、店舗でもECサイトでも変わらないと思います。

それからInstagramなどで商品を購入してくれた方を見つけたら、必ずメッセージを送っています。お客さんは基本的にブランド側の人間から直接メッセージが届くとは思っていないので、感動すらしてくれます。対応が早くて、ブランド側の人間とダイレクトに会話できるという体験は、お客さんにとって本当に嬉しいことなんだと実感しています。

チャットはチャンスの宝庫

KIBACOWORKSのお客さんは20~30代のサーフィンや楽しいことが好きな人たちが多いので、そうしたターゲットとチャットを使ったフランクな交流が合致したのかもしれません。お客さんと直接会話できる自社ECだからこそチャットでの交流が活かされるし、チャットでのフランクなやりとりを通してファンが増え、ブランディングにつながりました。

ただチャット対応は、人によって向き不向きがあります。テンプレート化して他のスタッフでも対応できることを増やしたいとは思いますが、チャット対応やInstagramでの発信、フォロワーさんとの交流から離れるつもりはありません。チャットを通したリアルな会話には、新作のアイデアや、既存の商品の改良点など気付きがいっぱいです。チャットはブランドが成長するチャンスの宝庫ですから、自分で担当し続けたいと思っています。

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