【ウェビナー】見逃した方必見!CX向上とOMO推進のためのデータ活用法とは?
近年のデジタルマーケティングを語るうえで、顧客体験(CX)は欠かせない概念である。CX向上に取り組む事業者は多いが、その一方で、具体的にどのように課題を見つけて、どのような対策を講じれば良いかが分からないという声もしばしば。
そんなヒントを求めるマーケティング担当者には、SprocketとTealium Japanが共催したセミナー「<いま作るべき顧客体験とは?を学ぶ>OMO最前線 小売業界におけるデータを活用した顧客体験設計」が参考になるだろう。本稿では2021年11月24日にオンラインで開催された、同セミナーの様子をお届けする。
本セミナーの概要
セミナーは下記の3つのプログラムで構成される。
第1部:顧客体験向上の鍵を握るファーストパーティデータ戦略とは?
第2部:顧客データを活用し、顧客と信頼を築く接客体験とは?
第3部:OMO最前線 小売業界におけるデータを活用した顧客体験設計
どのプログラムも業界の最前線で活躍するプロフェッショナルが登壇。オンラインとリアルを融合させるOMOの視点から、優れた顧客体験を創出するうえでの課題抽出へのアプローチと解決策を、数々の事例とともに紹介する。顧客データの収集と活用法に悩む、EC担当者やマーケティング担当者におすすめの内容だ。
【第1部】ファーストパーティデータの重要性と活用法
第1部は「顧客体験向上の鍵を握るファーストパーティデータ戦略とは?」。Tealium Japan株式会社 セールスディレクター 小泉潤一氏が登壇した。
Tealiumは名だたる大手企業を顧客に抱え、数々のアワードも受賞している、世界的評価の高いデジタルマーケティングソリューションのベンダーだ。
第1部ではCX向上の最新事例を交えながら、今後のデジタルマーケティングにおいて重要とされている「ファーストパーティデータ(自社で収集・保有している顧客データ)」の活用法が紹介された。
消費者意識の変化や、コロナ禍の影響、そしてD2Cモデルの隆盛。これらの市場の変化を受け、今後の小売業界では、WEBとリアル店舗とのシームレスな連携と、顧客視点に沿ったタイムリーなコミュニケーションが重要になってくる。
そのために有用なのがファーストパーティデータである。セミナーでは、データ利用において事業者が意識するべきことから、データの取得方法、それを取り巻く課題と、Tealiumを駆使した対応策までを網羅的に解説。
アパレルブランド「AMERICAN EAGLE」のソリューション事例や、実装するサイトが増えているCMP(クッキー利用の同意取得)とGoogle Tag Managerとの連携における問題など、参考になる情報が盛りだくさんの内容となった。
【第2部】データを駆使したCX向上の事例
第2部は「顧客データを活用し、顧客と信頼を築く接客体験とは?」。株式会社Sprocket 代表取締役 深田浩嗣氏が、CDP連携によるデータを活用したWEB接客の体験設計について、事例をもとに紹介した。
深田氏はデジタルマーケティング業界に15年以上携わっていて、複数の関連書籍も執筆している業界のトップランナー。深田氏が代表を務めるSprocketは、EC事業者や会員サービス事業者向けにコンバージョンの最適化を支援している。「パーソナライゼーション×ABテスト×行動分析」を組み合わせたWEB接客やCVR向上のソリューションに定評がある。
優れたCXを実現するためのアプローチはさまざまあるが、深田氏はそのひとつとして、ユーザーのフリクション(つまずき)に着目することを提唱。事業者が自分たちの伝えたいこと、売りたいものだけを押しつけるのではなく、ユーザーの心理に寄り添う形で「ここが分かりにくくて離脱しているのではないか?」という部分を埋めるようなイメージだという。
デジタルの業界関係者の間では当たり前のハンバーガーメニューのようまアイコンひとつとっても、ユーザーにとっては当たり前ではない。深田氏が紹介した事例には、そんな隠れたフリクションを見つけるためのヒントがあった。
フリクションを発見して解消することで、顧客との信頼関係が構築され、コンバージョン率も上がっていく。セミナーではユーザーのサイト内での行動モデルをもとに、フリクションを抽出するための手法が紹介された。
フリクションを発見したら、次はいかに解消していくか。そのアプローチ方法とアクションのパターンが続いて紹介された。アクションは実際の成功事例をもとに組み立てられたものなので、説得力が違う。
仮説を立てられたら、次はそれをベースにして、データと組み合わせた施策を打つフェーズへ。サイト内での行動をもとにした商品のレコメンド、過去の購買データを駆使したオファー、ユーザーの目的に合わせたWEB接客、つい見落とされてしまいがちな付帯情報の見せ方、購入検討時の不安を払しょくするための案内の仕方など、より具体的かつ実践的なアイデアが紹介された。
「いつ・どこで・誰に・何を」の整理をしながら、パーソナライズされたメッセージを表示するメソッドは、事業者にとって大いに参考になったはずだ。
これらのようなCXの向上とCVの改善をまとめて実現できるのが、コンバージョン最適化プラットフォーム「Sprocket」だ。複数の連続したポップアップで丁寧に案内するWEB接客などユニークな機能と、3万回以上のA/Bテストをもとに構築された勝ちパターンなどが特徴だ。
創業以来カスタマーサクセスに徹底して投資して、2020年度の利用者のROIが平均1,565%というすさまじい成果を挙げているSprocket。本セミナーはそのノウハウの一端を知ることができる、非常に有意義なものになっている。
【第3部】オンライン×リアル店舗のあるべき姿とは
第3部は「OMO最前線 小売業界におけるデータを活用した顧客体験設計」。
小泉氏、深田氏に加えて大西理氏をゲストに迎え、トークセッション形式で行われた。
大西氏はカタログ総合通販のセシールからキャリアをスタートさせ、これまでメーカー、単品通販、ファッションなどさまざまなジャンルで長年にわたりEC業界にコミット。現在は独立し、ECを中心としたマーケティング・ブランディング領域で企業の支援を行っている。
セッションのスタートは現状把握から。4度の緊急事態宣言の発出による宅飲み需要の増加、リモートワークの増加による水道光熱費の上昇、美容院やエステなどの理美容への支出の減少、ビジネスウェア業界の苦戦など、コロナ禍を受けて大きく変化した消費行動を、データとともに整理していく。
ECに関連していえば、オンライン販売の強化へ舵を切る企業が増え、モールへの出店やShopifyなどのプラットフォームを利用した自社EC立ち上げが見られるようになった。ライブコマースやオンライン接客、リアル店舗では来店予約といった仕組みの構築も進んだ。
さらに2021年からは、ECサイトと同名のリアル店舗をオープンさせる事業者が現れるなど、オンラインからリアルへの回帰も並行して進んでいる。
そういった流れを受けて、続いての話題は「いま小売の現場で挙がっている課題」について。オンラインとオフラインの垣根をなくしてシームレスな顧客体験を提供したいと考える事業者は多いが、実際はうまく進んでいないケースがよく見られるという。
その原因のひとつが組織構造やKPI設定の問題。縦割り組織による弊害や、全体的なKGIから逆算してのKPI設定ができていないなど、「自分たちも同様の課題を抱えている」という担当者も多いことだろう。
もうひとつの原因が、データ活用の範囲が「販促」にとどまってしまっていること。デジタルとリアルを融合させてファンを生むためには、ひとつ上の目線でのコミュニケーション施策を講じる必要がある。
セッションでは、そういった課題を解決するための方法論について言及。目標設定における考え方、ARPUを伸ばしている企業の特徴、リアル店舗を巻き込んだデジタル施策、ロケーション情報を利用したパーソナライズ告知事例などが紹介された。
最後のトークテーマは、「リテール・小売の事業者がこれから目指していくべき姿とは?」というOMOの未来像について。大西氏からは大手企業のOMO関連の先進的な取り組みやライブコマースの新しい形、メタバースなどの話題が挙がった。深田氏はこれまでECを使わなかった人も利用するようになる中で、「データを活用してどのような体験を作っていくべきか」が重要と指摘。小泉氏はただ単に「自社製品を多く売るため」ではなく「自社製品でより良い生活を送ってもらう」ための来店時のアクション例が紹介された。
これにてプログラムは全て終了。およそ1時間強という短い時間ながらも、密度の濃い内容になった。自社のデータやデジタルツールをどのように活用してファン獲得につなげるか。EC担当者やマーケティング担当者に、大きな気付きをもたらしただろう。