楽天ランキング常連のモンマルシェ。その成長を支える鈴与のハイブリッド型物流
贅沢な缶詰シリーズや野菜スープなどが消費者に支持され、楽天ランキング1位を獲得するなど目覚ましい成長を遂げているモンマルシェ。その躍進の裏には、物流を核とした通販フルフィルメントサービスでバックヤードを支える鈴与の存在があった。
テクノロジーと人、鈴与グループの豊富なアセットと知見を活かした、鈴与のハイブリッド型物流の特徴とは? EC事業者のサービス品質と業務効率をどのように高めるのか? モンマルシェ株式会社 常務取締役 河野雄士氏と、鈴与株式会社 フルフィルメント営業推進室 澤戸優輔氏に話を伺った。
本当においしいものを届ける“食の市場”
――まずはモンマルシェと鈴与の事業紹介をお願いします。
河野氏: フランス語で「モン」は「私」、「マルシェ」は「市場」を意味します。モンマルシェは、お客様に“食の市場”として、本当においしい食品をお届けしたいという想いで創業した会社です。
1929年に日本で初めてツナ缶を作った清水食品を前身に持ち、新鮮な魚を使った缶詰「Oceanprincess(オーシャンプリンセス)」と、スープなどで手軽においしく野菜不足を補える「野菜をMOTTO」という2つのブランドを展開しています。またECによる販売だけでなく、静岡県内と日本橋三越に計3店舗を構えています。
澤戸氏: 鈴与は1801年創業の総合物流会社です。静岡県の清水港での港湾物流を発祥としていて、現在は国内の物流や輸出入まで、あらゆる物流サービスを手がけています。
その中で私が所属しているのが「倉庫DC」の営業部門です。倉庫をキーとして、商品調達から最終消費者へのお届けまでをトータルコーディネートして、事業者様の物流課題を解決するソリューションを提供しています。北海道から九州まで全国145ヶ所の物流センターを保有し、床面積30万坪の物流ネットワークがあります。
細かなニーズに応えるソリューション。鈴与の通販物流の強みとは?
――物流業務は鈴与にアウトソーシングされているとのことですが、モンマルシェから見た鈴与の強みは何ですか?
河野氏: まず基本的な部分ですが、ベースとなる“物流品質の高さ”が挙げられると思います。お客様にお届けする商品を間違えたら、信頼は大きく損なわれます。誤出荷や包装紙の破れ、倉庫内破損などがないのは大きいですね。棚卸の精度も高く、在庫管理の面でも助かっています。
澤戸氏: 当社は何よりも商品を正確に届ける、これを第一としています。そのために独自の在庫管理システムや検品体制を設けて、物流品質を担保しています。
河野氏: 立ち上げ期においては、ECカートとWMSをスムーズに連携できて、自社での開発コストが抑えられ、フルフィルメント体制を構築するまでの日数を短くすることができました。
受注データの取り込みからお客様への出荷通知までを自動処理してくれるので、受注処理の業務が大幅に短縮できます。鈴与さんからの出荷完了報告を当社のスタッフが日々待っている必要もなく、残業も減りました。宅配伝票、納品書、ピッキングリストが一体になった帳票も使いやすいですね。
また、鈴与さんの出荷体制は“半自動化”されている点もポイントだと思います。ECにおいては、商品だけでなくサービスも重要です。例えば熨斗への細かな要望の全てを、機械では叶えることはできません。
ルーティーン業務はオートメーション化するけど、人の手を介した方がいい業務は人力で行う。この“ハイブリッド型”のおかげで、お客様への高度なおもてなしを実現できます。
澤戸氏: 当社の場合、梱包の工程は人とロボットを組み合わせることで、小回りが利いて出荷スピードも速くなる仕組みを採用しています。導入時のイニシャルコストも抑えることができます。
河野氏: 当社のEC事業は立ち上げ時から鈴与さんにサポートしていただきました。フルフィルメントには物流、コールセンター、決済、カートシステムなどさまざまな要素がありますが、これらは相性があります。それぞれ個別にベンダーとやりとりするのではなく、最適な組み合わせをワンストップで提案してくれました。
例えばご自宅用に購入されたお客様には次回の案内を封入したり、ギフトの梱包に気を配ったり、出荷作業はお客様満足度に大きく影響します。きめ細かなサービスは、倉庫の体制を構築するだけでは不十分で、カートシステムが対応していないと実現しません。
自分たちが目指すサービスの姿から逆算して、一連のシステムをオーガナイズしてくれたおかげで、サービス品質を向上させることができました。
また鈴与さんはヤマト運輸、佐川急便、日本郵便との強いコネクションがあり、自分たちに最適な配送会社を提案してくれる点も助かっています。
澤戸氏: 事業者様の状況や要望に合わせて高度にハイブリッド化できる物流が当社の強みです。きめ細かな配送が可能な一方で、大量に配送したい企業様にも対応できます。
モンマルシェさんでも母の日の時期に出荷数が3日間で1万3000件と急増したことがありましたが、全件滞りなく出荷できました。近隣の物流ネットワークを駆使して人的リソースを適切に配分することで、柔軟な波動対応を可能にしています。
河野氏: 繁忙期への準備を一緒にしていけるのはありがたいですね。数が増えたら“根性で頑張る”のではなく、キャンペーン情報を事前に共有しコミュニケーションを密に取ることで、「いつまでに何を準備すれば、これくらいの物量をこなせる」と数字で示してくれるので、配送関連のトラブルを未然に防ぐことができます。
全国ネットワークの話でいえば、当社はもともと鈴与さんの神奈川県にある倉庫を利用していました。関東のお客様が多いだろうと予測を立てていたのですが、意外と関西のお客様も多く、地理的に中間地点である静岡県に変えました。日本各地に拠点を持つ鈴与さんならではのご提案だったと思います。
澤戸氏: 出荷データの傾向を分析して、調達と保管、配送の観点から最もメリットが出そうなロケーションをご提案させていただきました。モンマルシェさんの場合は静岡県1ヶ所ですが、物量に応じて東西にそれぞれ拠点を持つなどの対応も可能です。
本業に専念できる環境を整えれば、事業は成長する
――現在、鈴与に委託している業務の範囲を教えてください。
河野氏:入出庫の管理と保管、在庫管理、ギフトの流通加工、商品の配送など物流業務全般をお願いしています。
――導入前に抱えていた課題は何でしたか?
河野氏: 当社が「売ることに専念する」環境を構築することです。そのためにバックヤード業務にかける時間をミニマイズする必要がありました。物流を自社でやるとしたら、繁閑差の中でも人員を常に確保しておかないといけません。その部分を変動化できるコスト構造にすることも目的でした。
――導入までにどれくらいの期間がかかりましたか?
澤戸氏: モンマルシェさんに要件をしっかりお伝えいただけたので、2~3ヵ月ほどでスムーズに立ち上げることができました。
鈴与グループ内にはシステム会社もあり、WMSの連携実績も豊富です。さらに自動連携の仕組みをご用意しているため、システムへの投資を抑えられるだけでなく構築までも非常に速いです。すでに物流を他社様に委託されていて、それをリプレイスするケースなら、システムやオペレーションの要件定義を行い最短1ヶ月で稼働することができます。ゼロから構築する場合は要件を確認するところからスタートするので、もう少し期間がかかります。
ご提案時にはSKU数、見込み出荷件数やピース数などの物流情報から、お使いの出荷データのひな形まで細かくお伺いして、当社の豊富なナレッジより最適なプランをご提案します。BtoB・BtoCどちらの物流も多角的に手がけているため、ケース出荷も個配も高品質かつスピード感をもって対応させていただきます。
河野氏: 当社はECとリアル店舗を併用していますが、鈴与さんならお客様への配送も店舗への納品もまとめてお願いできます。ケースとピースをまとめて管理できるのは効率的ですね。
――鈴与を利用することで「売ることに専念したい」という課題は解決しましたか?
河野氏: はい。2014年の創業以来、ECの売上比率は年々高まっていて、直近2年は倍々のペースで伸びています。鈴与さんのご協力なしでは達成できなかったと思います。
売上の伸長にともない、楽天ランキング1位に輝くなど数々の実績を残せました。「オーシャンプリンセス」のツナ缶がモンドセレクションを獲得したり、「野菜をMOTTO」が数々の女性誌とコラボしたり、TVをはじめとするメディアへの露出にもつながっています。
これらは全て、戦略立案やマーケティングなどの本業にリソースを割ける環境を得られたからだと考えています。
――リアル店舗への影響もありましたか?
河野氏: リアルとオンラインはもともと共通する要素が多く、当社のお客様には、オンラインで購入後にリアル店舗にお越しいただく方もいらっしゃいます。
定期的に本店でセールイベントを開催しているのですが、今年は1日で1,000名を超える方に来店いただきました。前年と比べたら倍以上です。
当社ではいま会員データベースの一元化に取り組んでいて、ネットとリアルを融合したCRMの強化を図っています。両社を共存させて、ブランド価値をさらに高めていきたいと考えています。
澤戸氏: モンマルシェさんはネットとリアル両方伸びている好事例だと思います。商業施設への共同配送サービスも展開してしいます。リアル店舗を出店されている事業者様、これから出店を検討されている事業者様のサポートもお任せください。
物流会社の枠を超えたフルフィルメントの提供へ
――モンマルシェが今後、鈴与に期待していることを教えてください。
河野氏: 先述の「売ることに専念する」ことをさらに強化していきたいです。そのためにより広範にわたるバックヤード業務を鈴与さんに委託できるようになったらありがたいですね。BPRもあわせて進めていければと思っています。
あとは鈴与さんが持っている配送先エリアや在庫の変動といった数値を可視化して、販売戦略を一緒に立てられる仕組みなど、データドリブンな取り組みも一緒に実現していきたいと考えています。
澤戸氏: 当社の持つ物流データを事業者様に有効活用いただくことは、今後の課題のひとつだと考えています。例えば「動いていない在庫をどうする?」といった一歩先の提案ができるよう目指していきます。
――今後、鈴与はどのようにしてEC業界に貢献していきたいと考えていますか?
澤戸氏: テクノロジーと人、そして鈴与グループの豊富なアセットと経験を活かして、事業者様の取扱い商材や戦略に合わせた物流設計と、事業者様がこだわりたいサービスを実現する“ハイブリッド型の物流”が当社の強みです。また、EC事業者様に特化した倉庫「通販プラットフォーム」を立ち上げるプロジェクトも進行中です。
従来の物流会社のサービス領域を超え、より幅広いソリューションを提供することで、事業者様の成長に寄り添っていきたいと考えています。