Shopeeのセミナーに学ぶ、越境ECで次に来る市場「マレーシア」の魅力
越境ECの競争が過熱する中、東南アジア最大規模の越境ECプラットフォーム「Shopee」が今おすすめする市場がマレーシアだ。だが、まだまだマレーシアに関する情報は少なく、進出を躊躇している事業者もいるだろう。そのような事業者に向けて、Shopeeが「マレーシア攻略セミナー」を開催した。
本稿ではセミナーの概要をレポートするとともに、大いなるポテンシャルを秘めたマレーシア市場の魅力をお伝えする。教えてくれたのは、セミナーにも登壇したショッピージャパン株式会社のマーケティング担当 上地将太氏とマレーシア市場担当 Nayu Lee氏だ。
マレーシアの越境ECを幅広く学べるセミナー
「マレーシア攻略セミナー」と銘打たれた今回のセミナーは、以下のような構成で行われた。
【1】Shopeeの概要と日本越境サービスについて
【2】マレーシアの概要とコマース事情
【3】マレーシアの最新情報:オススメの商品
【4】マレーシアの最新情報:注意事項
【5】マレーシアの最新情報:キャンペーンなど
マレーシアの民族データや人口動態といった基礎データから、市場の特徴や最新データ、そしてShopeeを利用した具体的な売上アップのTipsまで、幅広く知ることができる内容だ。東南アジアに興味を持つ事業者にとって、多くの気付きを得られただろう。
またNayu氏は本社シンガポールにて勤務しており、上地氏はマレーシアに滞在していた経験があることから、現地でしか実感できないようなローカルな情報も交えて知ることができた。
セミナー:成長率が高くキャンペーンの多いマレーシア市場
セミナーの始まりは、Shopeeの概要の説明から。
Shopeeはシンガポール発祥の東南アジアおよび台湾最大のモールである。現在は東南アジアだけでなく、メキシコやブラジルといった中南米など15の国と地域にマーケットを展開。2021年に世界で最も多くダウンロードされたショッピングアプリがShopeeという事実を見ても、その認知度や規模の大きさが分かるだろう。
日本向けの越境ECサービスとしては現在シンガポール、台湾、タイ、マレーシア、フィリピンの5マーケットが対応しており、日本からその地域に住むユーザーに商品を販売することができる。その中でもShopeeが今おすすめしているのが、マレーシア市場だという。セミナーでは、その根拠となる基礎データが紹介された。
その一部を抜粋すると、マレーシアは人口3270万人と日本より少ないが、緩やかな増加傾向にあり2035年頃には4000万人を超える予測だという。驚くべきは、28歳という平均年齢。日本人の平均年齢は48歳なので、その違いは歴然だ。1人当たりのGDPも年々成長しており、インターネットで商品を購入したことがある人の割合も約8割と日本より高い。さらに今後4年間のEコマース年成長率は+8%であり、その規模や成長性から見ても、マレーシアは大いに期待できる市場だといえる。
セミナー内で特に強調されていた点がマレーシアの「多様性」である。マレーシアの国民は大きく分けて、マレー系、中華系、インド系の方々が暮らしている。意外にも、中華系の人口は全体の約23%だが、数はシンガポールの人口よりも多い。そのため中華圏で人気の商品もマレーシアで人気になるようだ。
マレーシアでは各民族の祝祭日をそれぞれ祝う習慣がある。そのため、Shopeeでのキャンペーンも非常に盛んであるとのこと。特に1か月の断食(ラマダン)の後のハリラヤはマレーシアで一番盛り上がる祝日の一つで、毎年ハリラヤの前後に注文が大きく伸びる傾向があるそうだ。今年のハリラヤは5月3日(火)であり、Shopeeでも約2か月間に及ぶキャンペーンが予定されている。
セミナー:マレーシアで人気の商品は
ここからセミナーは、より具体的なナレッジやノウハウを伝えるプログラムに進んでいく。
まずはマレーシアでの売れ筋商品について。
前提として、マレーシアの消費者にとって、品質に定評のある日本の商品は好まれているという。日本の小売業や飲食業も続々とマレーシアに進出しており、マレーシア国内での「日本」への信頼は非常に高い。
そんな背景を受けて、セミナーでは日用品、コスメ、ホビー、スポーツといったカテゴリーごとに、具体的な商品名を例に挙げながら人気の商材が紹介された。ここでも人気のカテゴリーを紹介する。
●健康
・スキンケア(馬油、酒粕、炭などの素材)
・ヘアケア(白髪・カラーケアなど)
・パーソナルケア(デオドラントなど)
●美容化粧品
・アイメイクアップ用品(つけまつげ、まつげ美容液、ビューラー)
・スキンケア用品(ブースターローション、クレンジング)
●ホーム・リビング
・ランドリー関連(アロマビーズ、洗濯槽ケア)
・キッチン用品(砥石、たこやき用品)
・バスグッズ(シャワーヘッドタオル)
●ホビー・スポーツ
・カメラ関連(インスタントカメラのフィルム、ケース)
・釣具(リール)
・アニメグッズ(ポケモン、デジモンなど)
・スポーツ用テープやネックレス
続いてはマレーシアで商品を販売する際の注意事項について。法律上の規制によって、あるいは物流のルールによって注意が必要な商材の例がピックアップされた。特にマレーシアでは、メガネ、コンタクトなどの視力矯正器具は販売できない。あわせて、関税や配送料などの海外取引で気になる要素についても触れた。越境ECの現場には、国内取引では発生しない点もあるため、事前に知っておくと安心だ。
セミナー:ライブコマースや店舗のカスタマイズによって売上アップ
セミナーの最後のテーマは、マレーシアで行われる予定のキャンペーンと、Shopeeを使ったマーケティング施策について。
Shopeeには、マレーシア最大の祝祭日にからめた「ラヤ」キャンペーンをはじめとする様々なセール企画、ライブコマースやインタラクティブなUIを使った販促事例、そしてそれを支援するキャッシュバックや送料無料のバウチャー発行など、売上を伸ばすための多様な手段が揃っている。その他、有料広告も豊富で、事業者の努力次第で大きな成果が見込める。
こういった外部の要因だけでなく、セミナーでは店舗・商品ページのカスタマイズによって誘因力を強化するコツもあわせて紹介された。無料から有料の施策まで、様々な販促方法を通して、売上を伸ばせるのがShopeeの魅力だと感じた。
ここまでセミナーを一通り受講すれば、マレーシア市場への期待感はもちろん、Shopeeを使いこなすことで見出せるチャンスも多いことが分かる。参加した事業者のモチベーションも大いに高まったことだろう。
日本企業に大きなチャンス。Shopeeでマレーシア進出を
セミナー終了後には質疑応答タイムが設けられた。参加者からは商材ごとの課題、物流、顧客対応といった海外市場ならではの悩みを中心に多くの質問が寄せられ、かなりの盛り上がりを見せた。
ここからはセミナーの後日談として、開催目的や参加者の反応について、登壇者の上地氏とNayu氏に話を聞いた。
——今回のセミナーを開催した目的を教えてください。
上地氏:昨年までは、日本の商品への需要が高いシンガポールや台湾を出店先としておすすめしていましたが、近年マレーシアでも日本の商品への需要が高まっています。マレーシアは規制も比較的厳しくなく、中古品や化粧品などを含めた幅広いカテゴリーの商品を販売することができます。
しかし、マレーシアについての情報が日本ではあまり浸透していないがゆえに、出店するセラー様はまだそこまで多くありません。より多くのセラー様にマレーシアという国の特徴や経済状況といった基礎知識から、売れ筋商品や最新のEC事情までを知っていただき、出店をサポートしたいと考えました。
——マレーシア市場の特徴を教えてください。
上地氏:先述の通り販売規制が比較的ゆるい点、英語が使える点などが挙げられます。また異なるバックグラウンドを持った様々な民族・人々が暮らしているため、人気になる商品の「幅」があります。例えばマレーシアの人は多趣味で、カーレース、釣りやロードバイクなどのアウトドア系の娯楽も盛んなため、アウトドア関連商品の需要も比較的高いです。他の市場では需要が低いニッチな商品でも、マレーシアでは“バズる・ウケる”可能性があります。
——セミナー受講者はどのような方が多かったですか?
上地氏:すでに国内ECサイトへ出店していて海外進出を検討されているブランド、大手リテール、個人のセラー、Shopee Japanの既存セラーでマレーシアへの追加出店を検討している方などが参加されました。その他にも、マレーシアの経済団体や現地メディアなど、マレーシア側から参加された方もいらっしゃいました。
——セミナー後の反響はいかがでしたか?
上地氏:「これまで視聴したセミナーの中では一番良かったです。内容が具体的でよく伝わりました。今回の商品例をもとに、次回は金額や注文量なども含めた最新情報を配信してほしいです」
「マレーシアについて少しずつ分かってきました。丁寧な説明で、内容が分かりやすくて良かったです。今後、マレーシアの広告運用において、どうしたらインプレッションが増えるかなどを解説してほしいです」
など、さらにマレーシア市場での売れ筋商品や具体的なマーケティング施策について知りたいというお声を多くいただきました。
——マレーシア進出を検討する事業者に向けたShopeeのサポートの体制、内容について教えてください。
Nayu氏:事業者様に対しては、さまざまなサポートをご用意しています。その一部を挙げさせていただくと、一つ目は既存セラー様向けのリスティングサポートのご用意です。すでにシンガポールまたは台湾で出店中の既存セラー様に、出品中の商品リストのデータをお渡しします。マレーシアに追加出店いただく際に、そのデータを使って商品を一括アップロードすることで、簡単に商品を転載できます。通常であれば一つひとつ商品ページを作成する必要があるため、追加出店時の手間が大幅に軽減されます。
二つ目として、新規のセラー様向けには、「Shopee Ads」のクレジットを無料進呈しています。今年度、新たにマレーシアにて5商品以上の出品を行い、販売開始されたセラー様の中から、毎月抽選でShopeeで使える広告クレジットをプレゼントしています。出店直後の早い段階から集客に注力することで、市場の把握や売上向上を目指していただけます。
——今後のサービス展開、キャンペーン、セミナーなどの計画を教えてください。
Nayu氏:Shopee マレーシアでは、ゾロ目の日のセールや「ラヤ」キャンペーンなど、多くのセールが上半期中に控えています。3月下旬から開始する「ラヤ」キャンペーンは1年を通して最も長く、毎年盛り上がります。去年の「ラヤ」キャンペーン最終日のMidnight Mega Sale(日付が変わってすぐに開催されるセール)では、オーダー数が通常時と比べて6倍以上に増加しました。今年も沢山のバウチャー(割引券)などが発行され、売上の増加が大いに期待されます。
上地氏:アカウントをご登録されたばかりの新規セラー様向けに、新規出品サポートワークショップを実施しているため、参加していただくと店舗の基本設定等を学ぶことができます。そのあとも、「セラー教育プログラム」を通して売上向上のヒントやマーケティング施策の活用方法についてもご共有しています。セラー様それぞれのステージに合わせたセミナーを通して、段階的に各種施策を始められるようになっています。
5月上旬まで連続して「ラヤ」キャンペーンが開催されるため、今はマレーシアへ出店する絶好のタイミングです。是非ともセラー様と一緒に、マレーシア市場をより一層盛り上げていければと思います。