パーソナライズで関係を強化。アプリで創る新しい顧客体験
サードパーティーCookieの廃止や薬機法等による規制強化など、EC業界では大きな変化が起きている。従来の手法では集客が難しくなっている中、消費者とつながり、関係性を深めていくチャネルとして注目されているのがアプリだ。アプリが創る新しい顧客体験について、株式会社ヤプリ 執行役員 CCO 金子洋平氏にお話をうかがった。
自社資産のデータを蓄積し顧客の価値観へ寄り添う
―EC 業界で起きている集客の変化について、考えをお聞かせください。
サードパーティーCookie廃止は、アプリプラットフォームを提供している我々にとっては追い風だと感じています。アプリのデータはまさにファーストパーティーデータなので、アプリやオウンドメディアなどを活用して、自社の資産として顧客データを蓄積していないと厳しい時代になりつつあります。少し前はSNS に力を入れようという動きもありましたが、一巡して自社アプリやオウンドメディアに戻っている状況ですね。
ファーストパーティーデータの重要性が高まる中、それを基にお客様に寄り添った情報提供やCRMに取り組みたいという事業者様が増えています。
―EC事業者は、集客の変化に今後どのように対応していけばいいでしょうか?
ファンの方や一度購入された方、商品に興味を持っている方へのフォローを見直すべきだと考えています。コロナ禍で社会不安が広がっている今、「信頼しているお店から買いたい」「少し値段が高くても世の中に良いことをしている企業から買いたい」というふうに、消費者の価値観が変わってきています。
世界的にもコロナ禍を引き金に、価格だけではなく「企業価値」が重視されるようになっています。原点に立ち返って「お客様を大切にする」「自社商品の魅力やベネフィットを再確認する」など、安売りではなく価値訴求ができているか見直すべきではないでしょうか。
アプリだから実現できる独自の接客手法
―変化に対応していく中で、アプリ活用によってどのような顧客体験が実現できるのでしょうか?
アプリでできることはたくさんあり、その一つがお客様に合わせたパーソナライズです。メンズとレディスがあるアパレルブランドの場合、性別を登録しておくと、ファーストビューを男性向け、あるいは女性向けに切り替えることができます。性別だけでなく、スポーツのジャンルなど趣味嗜好に応じてアプリのレコメンデーションを変えることも可能です。
またプッシュ通知を活用することで、お客様の行動に合わせて、タイムリーにクーポンを発行したり、キャンペーンの告知をしたりすることもできます。これはまさにアプリを活用した「接客」といえますね。
プッシュ通知は売上や再訪率の向上に寄与するだけでなく、不安解消にも活用できます。Uber Eatsで注文すると配達員の現在地が分かるように、今は最新のステータスが見えるのが当たり前になっています。「商品を発送しました」とプッシュ通知で現在のステータスを見える化することで、お客様の不安感が払拭できるだけでなく、問い合わせの削減にもつながります。
クーポン配布のお知らせのように、直接的な「売り」につなげるためだけではなく、コンテンツの更新をプッシュ通知でお知らせするなど、お客様とのコミュニケーション手段としてプッシュ通知を活用することで顧客体験が向上し、結果的に売上にも結び付きます。
―アプリで新しい顧客体験を実現していく上で、ヤプリ様のサービスをどのように活用していけるのでしょうか?
弊社が提供している「Yappli」は、自社アプリの開発、運用、分析がノーコードでできるアプリプラットフォームです。プログラミング不要で簡単に使える一方で、アプリでブランドの世界観を表現できるよう、デザインの汎用性や自由度には創業当初からこだわってきました。
「Yappli」を導入いただいたとあるD2Cのレディスアパレルブランドは、アプリのリリースから1~2カ月でメルマガやLINE、Instagramといった全てのチャネルの中でアプリ経由の売上が最も高くなっています。スマホを使うようになってブックマークをしない人が増えた中、日本人にとってアプリはブックマーク的なものになっています。アイコンを押したらすぐ開いてすぐ買えるというアプリならではの特徴が、スムーズな購買につながっていると感じます。
―アプリ活用に成功しているEC事業者の共通点はありますか?
アプリを作っただけで自然とたくさんダウンロードされて、売上が劇的に上がるということはありません。アプリ活用の成果を出すためには、まめにコンテンツを更新し、「変化」を見せることが大切です。
どのページが見られているのか、どの企画が好まれているのか、どのプッシュ通知が一番開封されているのか、といったリアルなデータを見てお客様のニーズをダイレクトに汲み取って施策に反映し、PDCAを回していくのが一番の近道です。
定期更新でプッシュ通知も定型文で運用されているようなアプリは面白味がないので、ライブ感があって、「見てほしい」という想いがユーザーに伝わるようにどんどん更新していくことで、アプリ活用の効果が出てくると思います。
アプリによって、店舗と 顧客の距離がもっと近づく
―ヤプリ様の今後の展望やビジョンを教えてください。
2021年10 月に、「Yappli CRM」という新しいサービスをリリースしました。完全にモバイルプッシュ通知を中心に作った次世代のCRMで、かつ初心者の方でもノーコードで使えるサービスです。「お客様の今」にフォーカスできるところに特徴があり、「購入した人に何かを出す」「店舗に来店した人に何かを出す」など、お客様が行ったアクションに対して瞬間的にアプローチができるのが特徴です。
もはやスマホは肌身離さず持っているものなので、スマホを中心として、アプリとCRMを掛け合わせることで顧客体験を高められるサービスを作っていきたいと考えています。
―最後に、EC 事業者への想いやメッセージをお聞かせください。
これまで日本の事業者は「安い・早い・うまい」を重視してきましたが、コロナ禍で「サステナブル」が注目されているように、従来の価値観や商習慣を見直すタイミングがきていると思います。各企業が自社商品の差別化ポイントや顧客を理解して、「良い商品をしっかりとした世界観で、正しいお客様に販売する」という商売の原点に立ち返ることが大切な時代になっているのではないでしょうか。
弊社は、「アプリを活用して、ファンに対して正しい情報を正しいタイミングでお届けする」ことをサポートしたいという想いで事業を展開しています。EC事業者様には、ぜひ「原点回帰」で良い商品を作っていただきたいです。
ECのミカタ通信vol.23 ~変化を遂げたEC市場!今後の”あるべき姿”とは~
本記事は、2022年3月31日に発行された冊子「ECのミカタ通信vol.23」に収録されています。
EC事業者皆様の、今後の”あるべき姿”を追求するテーマの第一弾として、特に「集客・接客」について多くの取材記事を掲載しています。
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