【ECのミカタFESTA】10月6日 WEB基調講演レポート

ECのミカタ編集部

10月5日、6日に開催された「ECのミカタFESTA」において、EC通販事業者や今後、EC通販に参入したい方向けに、さまざまな視点から最新のEC通販業界の市場動向やヒントを得られるWEB基調講演が行われました。

【WEB基調講演vol.13】パナソニックのCRM担当者が考える今すぐできるCRM施策とは? パナソニック株式会社×株式会社E-Grant

【WEB基調講演vol.13】パナソニックのCRM担当者が考える今すぐできるCRM施策とは? パナソニック株式会社×株式会社E-Grant

2日目のトップバッターは、パナソニック株式会社のEC 企画課にて、主にCRMに特化したプロモーションを行う山崎智史氏と、BtoC企業向けに自社サービスであるCRMツール「うちでのこづち」の活用に基づいたLTV向上・CRMマーケティング支援を行う株式会社E-Grant・北川健太郎氏が登壇されました。

山崎氏はインターネット専業広告代理店にて、クライアントのデータ分析を基にした集客、コンテンツ、CRM領域の効果改善業務を経験後、化粧品メーカーでEC機能があるオウンドメディアの立ち上げやTVCMや雑誌等を含むIMCのプランニングに従事。現在はパナソニックにて、ECサイトのプロモーションやCRMの担当と教育関連の新規事業のプロジェクトを兼任されています。

WEB基調講演では北川氏がファシリテーターとなり、山崎氏が考えるCRMの目的や効果的な設計など、パナソニックが取り組んできた具体的な事例をもとに繰り広げられました。

CRMの目的は、社会に本質的な価値を提供するブランド力の向上

山崎氏は、CRMの最大の目的として、「ブランド価値の向上」が当てはまると話しました。

「CRMの大きな目的として、ブランド価値を高めることに重きをおいて行うことが一番有効的と考えています。私たちが企業活動を行うにあたり、多くのステークホルダーに価値を届けることが重要だからです。基本的にユーザーは商品が必要であって、特段メーカーと長期的に繋がりたいと思っている方は少ないと思います。そんな中、ユーザーがメーカーと繋がることで、自分たちに何かメリットがあると感じてもらえるようにCRMを設計していく必要があります。そうしてブランド価値を向上させることが、結果的に顧客やパートナー企業、自社、ひいては社会全体の好循環をもたらしていくと考えています」

また、世界的にSDG’Sやエシカル消費といったパーパス志向が叫ばれる中、ユーザーや消費者が期待する、企業に対する「本物感」の真価が問われているとも山崎氏は加えました。ただ単に、ミッションやパーパスという言葉だけが持てはやされるのではなく、実際に行動に起こしていくという企業姿勢が注目されているのです。そういった視点からも、CRMを通してブランド価値を高め、商品やサービスを提供していくことが大切だということです。

終盤では、CRMは短期間で結果が出るものでなく、組織のマーケティング担当者はCRMに取り組む際、新規顧客による受注1件にかかった広告費を意味するCPOを求められる一方で、LTV(顧客生涯価値)も求められるという話にもなりました。2極の相容れない事象に結果を出すためには、より顧客をパーソナライズ化して、メルマガやDMのタイミング、フォロー内容などを判断していく必要があります。また、顧客が「本物かどうか?」を図る要素として、発信内容や手段など、何がキーアクションになるかを見極めていくこともCRMには求められると締めくくられました。

【WEB基調講演vol.14】「あきゅらいず」が実現した “部署なし、管理無し、評価無し、VUCA時代に挑む選択できるEC通販組織作りの新しい形” 株式会社LIGUNA

【WEB基調講演vol.14】「あきゅらいず」が実現した “部署なし、管理無し、評価無し、VUCA時代に挑む選択できるEC通販組織作りの新しい形” 株式会社LIGUNA

2003年の創業以来、和漢ハーブのスキンケア商品「あきゅらいず」を通販で全国販売してきた株式会社LIGUNA。シンプルな基礎化粧品は、肌本来の美しさを引き出し素肌が喜ぶ自然派アイテムとして注目を集めています。また近年は、JR中央線・東小金井駅周辺にて「素肌が綺麗になる」というコンセプトを掲げ、酵素玄米を使用したワンプレート料理を提供する「はだめし」やコワーキング事業も行っています。

EC通販を主軸に多角的に事業展開を行う株式会社LIGUNAは、2020年12月より、事業のほぼすべてを「プロジェクト化」する組織形態を導入しました。予測不能なVUCA時代に新たな視点をもたらすEC通販組織作りとは。その目的と効果をお話されました。

変化に対応できる人材の活躍を最大化

PJ制の組織とは、誰かが現状組織の課題や躍進を図る施策を提案することから始まります。簡単に流れを説明すると、発起人は、取り組みたいプロジェクトがあれば、規定のフォーマットに沿って提案書を作成します。それを「プロジェクト会議」と呼ばれる意思決定を行う場に持ち込み、プレゼンテーションを行い、承認されれば正式にプロジェクトがスタートするというものです。その後、予算会議にて該当プロジェクトの予算決定を行い、期間内に目的を達成するために各ポジションにメンバーをアサインしていきます。もちろん、プロジェクトへの参加は個々の意思を尊重した上で決定。そして、目的が達成されればメンバーは解散します。一般的な企業で導入されるプロジェクトは、社長直轄のもと集められたメンバー構成や若者へのリーダーシップ形成が目的で発足することが多いですが、同社はプロジェクト制を取り入れることで、自律的な組織形成に繋がっているといいます。

プロジェクトそのものを柔軟に構築できることができるため、変化にとても強い組織構造を実現しているLIGUNA。PJ制のキーワードとして、「選択」を掲げており、より自由度の高い個人のキャリア選択や人材、働き方の多様化に繋げています。個々の能力を最大化し組織に貢献できる現代のスタイルを体現していました。

機能別の組織によって、ある種の見えない壁のようなものが事業スピードを低下させていると感じる企業や、組織人材の流動性の向上を図りたい経営者必見の内容でした。

【WEB基調講演vol.15】三越伊勢丹グループ店舗でのポップアップストアからEC売上に繋ぐ新リアル集客法 株式会社レオマート(三越伊勢丹グループ)

【WEB基調講演vol.15】三越伊勢丹グループ店舗でのポップアップストアからEC売上に繋ぐ新リアル集客法 株式会社レオマート(三越伊勢丹グループ)

三越伊勢丹グループが立ち上げた「イベマチ」が、EC事業者様向けのリアル店舗を活用した新たなEC集客方法についてお話されました。イベマチは、イベント開催を希望される方と三越伊勢丹グループ店舗を繋ぐイベントマッチングプラットフォームサービスです。特筆すべき点は、出店者は、店舗のスペースごとに設定した出店料を予めイベマチに支払い、イベントの営業権を確保できます。通常のイベント出店の場合、売上の何%かを出店費用として支払う必要があるケースがほとんどですが、イベント営業権を持つことで出店者様とお客様が直接やりとりできるようになります。そして、イベント当日の売上は100%出店者様が保有することができるのです。さらに、来店されたお客様の個人情報取得や出店者様のECサイトへの誘引も可能になります。これらが通常の百貨店のビジネスモデルとは大きく異なるポイントです。

ECとリアルを繋ぐ新戦略に有効的な「イベマチ」

イベマチを利用したイベント開催のメリットは、イベマチ窓口で全国の三越伊勢丹グループの各店舗への出店が可能になることです。グループ百貨店や商業施設、小型店のほかにも、仮想伊勢丹新宿本店など合わせて全国150超の施設で手軽にイベントを開催できます。
お客様の特徴としては、リテラシーの高さを強調されていました。ファッション感度が高く、トレンドに敏感なことや、SDGsといった環境、教育的観点に熱心な方へのアプローチに優位。過去には、近年のサウナブームを網羅したイベント開催の際、ウォーターサーバーや飲料メーカーのサブスク事業者などの出店もあったそうです。

イベマチは企画立案や準備、集客、店舗レイアウトのほか、経験豊富な販売員の紹介など、イベント企画から開催までの一連の流れをサポートする体制を整えています。ECとリアルを繋ぐ施策を打ち出したい方やEC売上の拡大を図る事業者の心強いプラットフォームとなっています。

【WEB基調講演vol.16】AmazonD2Cのポテンシャルと ECモール特化型マーケティング戦略 イルミルド製薬株式会社

【WEB基調講演vol.16】AmazonD2Cのポテンシャルと ECモール特化型マーケティング戦略 イルミルド製薬株式会社

Amazonや楽天といったECモール特化型マーケットブランドを武器に、売上の95%以上の実績を誇るイルミルド製薬株式会社。現在、従業員は30名前後。2016年より、5年間で16ブランド、合計200商品のオリジナルブランドの流通を成功させてきました。同社は、商品の企画開発からCRMを含めた広告運用などのクリエイティブセールスをワンストップで行っています。WEB基調講演では、マルチブランド戦略をテーマに商品開発やコンバージョンを強化した販売戦略について具体的な例を用いてお話されました。

5,000本の在庫処理のために乗り出したECモールで8,000%以上の成長率

同社がEC事業に乗り出す前は、自社カートンにてクレンジングオイルの販売を行っていました。当時はLPを制作し、GoogleやYahooといったリスティング広告やSNSのディスプレイ広告、ASPのアフィリエイター利用などあらゆる施策で集客。しかし、売れ行きは伸びず、約5,000本の在庫が残る事態になってしまったそうです。CPAは1つの商品を売るために1~2万円。その頃、Amazonのスポンサープロダクトの運用が始まり、この状況を打破するために試しに販売してみようという動きになったのがECモールに参入した背景だそうです。すると、これまで外部のリスティング広告を使用していたときに比べるとCPAは500円ほどにまで抑えることに成功し、これに驚いた同社はECモール展開に本格的に舵を切りました。
 
EC業界は世界的に見てもまだまだ成長産業です。正式な公表値はわかりにくいものの、Amazon、楽天の市場に関しては約2兆円の伸び代があるといわれています。実際に、同社は5年間で8000%以上の成長を遂げており、SEOを意識した独自のマーケティング戦略を用いて、ますます拡大の循環を活性化させていきます。ECモールは小資本でリソースが比較的少ない組織でも、より多くのコンバージョンを集めてインプレッションを高める戦略で躍進的な成長を遂げる可能性を秘めています。


EC通販業界の見識をお持ちのさまざまな方々の講演を見ることができる今回のWEB基調講演でしたが、EC業界の今やトレンド、今後の動向を感じ取れる有意義な機会となりました。日頃の何気ない疑問や知らなかったことを直接登壇者の方に伺うことができるのも魅力です。オンライン、オフライン共に参加できるため、今後もこういった機会を利用して、みなさまのアップデートにお役立ていただければ幸いです。


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