「UGCを運用する」という概念を知って広がった、マーケティングの可能性
EC業界で「UGC(User Generated Contents:ユーザー生成コンテンツ)活用」の重要性が叫ばれるようになって久しい。
ところが、「わかってはいるもののなかなか取り組めていない」「UGCの掲載はしたものの、載せただけで終わっている」という事業者も多いのではないだろうか。
そんな中、福岡生まれの健康食品・化粧品EC「ファンファレ」は、2022年5月に運用型UGCツール「Letro」を使ったUGC活用をスタートした。
少し前までは「UGCを重視していなかった」という同社がどのようにUGC活用に踏み切り、成果を上げたのか。株式会社ファンファレの山内裕司氏と、松尾拓也氏にお話をうかがった。
女性のキレイとゲンキを応援
——貴社が展開する「ファンファレ」について、立ち上げの経緯やコンセプトなどを教えてください。
山内 当社が運営している「ファンファレ」は「女性のキレイとゲンキを応援する」をコンセプトにしたオンラインショップで、健康食品と化粧品を取り扱っています。
代表がもともとEC事業に興味があり、取り扱い商材を検討していました。そんなとき、とあるレストランの女性オーナーとの出会いを機に、「年を重ねてもイキイキとした、キレイな女性を増やすお手伝いをしたい」と思うようになったのが立ち上げのきっかけです。
第1号商品は「するるのおめぐ実」というサプリメントでしたが、10年目になる今では、ダイエット、肌荒れ、毛穴、シワ、くすみなど、多くの女性が抱える悩みに対応した化粧品と健康食品を幅広く展開しています。
——商品開発においてこだわっていることはありますか?
山内 ひとつは、人の「温かみ」を表現することです。ひらがなを主体にした日本語のわかりやすいネーミングや、柔らかい印象のフォントを使ったパッケージなど、親しみやすさを大切にしています。
また、赤い泥洗顔や形状記憶ジェリーなど、見た目やテクスチャでも差別化を図っています。色やテクスチャ、機能性の面で「見たことないな」「画期的だな」と感じられるような“売れるポイント”を必ずひとつは入れるようにしていますね。
最近では、「ととのうぐらす」という形状記憶ジェリーが好調です。「シワ改善」を謳えるナイアシンアミドを配合していること、肌のシワを引っ張るようなイメージを想起する独特のテクスチャであること、顔だけでなく首やデコルテのケアにも効果的であることがヒットの要因だと考えています。
「運用型UGC」という概念を知って
——「UGC活用」が叫ばれていますが、わかってはいるものの、なかなか取り組めていない企業も多いと思います。御社はどのようなきっかけでUGC活用に力を入れるようになったのでしょうか?
松尾 以前からランディングページに静的な形で「お客様の声」を掲載するという取り組みはしていました。ただ、正直なところUGC活用をそれほど重視していたわけではなく、ランディングページの制作段階で「お客様の声」を入れた後は、改変も検証もしていないという状況でした。
そんな中、アライドアーキテクツさんとの出会いがあり、「UGC2.0」についてお話をうかがう中で、目的に合わせてUGCを運用していくことでさまざまな効果が出ることを知り、UGC活用を意識するようになりました。実際にUGC運用に取り組んでみると、目に見える改善があったので、今はやってよかったなと思っています。
そんな中、Letroとの出会いがあり、「運用型UGC」についてお話をうかがう中で、目的に合わせてUGCを運用していくことでさまざまな効果が出ることを知り、UGC活用を意識するようになりました。実際にUGCの運用に取り組んでみると、目に見える改善があったので、今はやってよかったなと思っています。
※運用型UGC
Letroの造語で、訴求・SKU・展開チャネル毎のUGC生成から活用のサイクルを回しつづけることで顧客体験を最大化し、売上成果に繋げる運用モデル
——UGC活用についての話を聞いたとき、どんなところに一番興味を惹かれましたか?
松尾 正直に言うと、話を聞いた当初はまだ「そこを改善したところでどうなるんだろう?」という気持ちがありました。他社の実績などをうかがうにつれて、「そんなに効果が出るのであればまずはやってみよう」という気持ちになりましたね。
EC業界全体で新規獲得が難しくなってきている中、ランディングページに少し手を加えただけで思った以上に効果が出ることは珍しくありません。他社の実績を聞いて、UGCの活用もそういった取り組みのひとつなんだと思うようになりました。
——それで、運用型UGCツール「Letro」を導入されたんですね。
松尾 はい。当社とLetroとで色々と検討やシミュレーションをした上で、2022年5月にLetroを導入しました。
Letroからお話を聞いて初めて「UGCを運用する」という概念に触れたのですが、Letroというサービスは単にUGCを掲載するだけではなく、UGCを運用して、PDCAを回すことで成果向上につなげられる点に魅力を感じました。
UGC掲載でCVR110%を実現
——UGC活用に取り組んでみて、どのような成果があったのでしょうか?
松尾 まずは2つの商材のランディングページで、Letroを使ったUGCの掲載を始めました。それ以前は、1本はUGCの掲載が一切なく、もう1本は静的な形で「お客様の声」を掲載していたという状況です。
UGCの掲載がなかったランディングページとLetroでUGCを掲載したランディングページの成果を比較すると、UGC掲載後はコンバージョン率が約113%に改善しました。もともと静的な形で「お客様の声」を掲載していたランディングページと比べても、テストをした上でデザインの変更を行うことによって、約110%の成果改善につながりました。
今はさらなる成果改善を目指して、デザインの細部をより尖らせていくための検証を行っています。
——実際にUGC活用に取り組んでみて、どう感じていますか?
Letro導入前から「これくらいの改善が見込めますよ」というお話は聞いていたのですが、「細かい部分を変えるだけでも結果が変わってくるんだなぁ」と、UGC活用の重要性を改めて実感しました。
事前にLetroから「同じUGCを掲載し続けると枯れが出てくる」と聞いても、私としては「ランディングページを見るのは初めてのお客さんばかりで、見る人は入れ替わっていくのに、訴求枯れなんて起きるのかな?」と、あまりピンときていませんでした。
ところが実際にUGCの運用をしてみて、新規獲得用のランディングページであっても、同じUGCを掲載し続けるとクリエイティブが疲弊してしまうことがよくわかりました。やはりこの業界は、実際にやってみないとわからないことが多いですね。
狙い通りのUGCを生み出す難しさも
——短期間で成果が出た秘訣は何だったと思いますか?
松尾 Letroのサポートの力は大きいですね。担当の中山さんには、すっかりおんぶにだっこです。
既存の業務がある中でUGC活用を始めると、プラスの業務が発生してリソースがタイトになるのはどの企業も同じだと思います。そのあたりの事情もご理解いただいた上でUGCの選定などもサポートしていただけるので、非常に助かっています。しかも、単に選定するだけでなく、選定の基準も共有していただいています。
当社がUGCに対する理解が不十分だったように、最初からしっかり概念を理解してUGC活用に取り組める企業ばかりではないと思いますが、「最終的に自社でPDCAを回していけるように」というところまで考えてサポートしてくださっていると感じています。
——UGC活用に取り組む中で、難しいと感じる部分や課題はありますか?
松尾 「運用型UGC」に取り組み中で、思い通りのUGCを生成することの難しさを感じています。テレビCMをやっているような商品に比べると、当社の商材はまだまだ認知度が低く、施策に活用できるUGCが勝手にどんどん生まれていくという状況ではありません。かといって、アフィリエイトやギフティングでも狙った内容を作成することは意外と難しいものです。
とはいえ、誘導しすぎると本来のUGCではなくなってしまいますし、作り物感が出てしまいます。施策に活用できるUGCを生み出すためにはどうすればいいか、考えているところです。
幅広い可能性を秘めたUGC活用
——今後どのようにUGC活用を深化させていきたいですか?
松尾 Letroを導入してまだ日が浅いので、UGC活用はまだまだこれからだと思っています。導入後すぐに結果が出たので、今後さらに改善を重ねていけば、ランディングページのコンバージョン率改善以外にもさまざまな成果が出ると期待しています。
今はランディングページのみですが、今後は記事広告やECサイトにもUGC掲載をしていきたいですね。
さらに、成果が上がるUGCを特定することは、クリエイティブ改善のヒントにもなります。「こんなユーザー心理が働くから、このUGCが効果を発揮する」ということがわかれば、インフルエンサー施策や同梱物などさまざま施策に応用していけると考えています。
Letroから「UGCは新規獲得だけでなく、オフラインも含めた既存顧客向けの施策やCRMにも活用できる」と聞きました。思っていた以上にUGC活用には可能性が大きく、まだまだやれることがたくさんありそうなので、勉強しながらUGC活用を深めていきたいです。
——最後に、ブランドとしての今後のビジョンをお聞かせください。
山内 今後も商品開発に力を入れて、 1人でも多くの女性のお悩みを解決していきたいです。それによって、商品もヒットさせて売上を伸ばしていきたいですね。
そのためにも、Letroをはじめ、お客様を飽きさせず、ワクワクしながら買ってもらえるためのツールを活用しながら購入率を高める工夫を続けていきたいと考えています。