EC事業で悩む中小企業を無料で支援 「EC Camp2022」の活用法
2023年1月23日から27日まで、中小企業とそのE コマース(EC)事業をサポートする事業者が出会うフェア「EC Camp2022」(以下、EC Camp」が開催される。主催は独立行政法人 中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)。初の完全オンライン開催となるEC Campに、中小企業はどのような準備をして臨めばいいのか。またどのような活用ができるのか。中小機構 販路支援企画課の三棹浅黄氏、島田聡氏、千代森直希氏に聞いた。
上がらない売り上げ、積み上がる管理費
新型コロナウイルス禍の影響もあり、商談のオンライン化や実店舗の密回避のためのシステム導入など、市場のデジタル変革(DX)は激しさを増している。急速にデジタル化する市場で中小企業が生き残り、かつ事業を拡大していためには、もはやECの活用は避けては通れないだろう。これは通販サイトに代表されるBtoCにとどまらず、BtoBにも拡大している。
一方で、EC化に取り組んでいても、「ECサイトは作ったものの集客できない」「集客はできても、購買転換率が低い」「1度目は販売できても、リピート購入につながらない」など、目論見通りに運用できない事業者も多いのも実情だ。中小機構 販路支援企画課の三棹浅黄氏は「集客やマーケティングに課題を抱えている企業の相談が最も多いと感じています」と話す。
「ECで自社製品が売れない」とひと口に言っても、要因は様々だ。プロダクトがいかに良くても、Webサイト上での表現が十分でないかもしれないし、あるいはカートシステムが使いにくいのかもしれない。いずれにしても「思ったように売れない」を具体的な課題に切り分けて解決しなければ、ECでの成功は難しい。
島田聡氏は「補助金等でDXツールを導入したものの成果が上がらない企業も多いのが現状ではないでしょうか。中小機構としましては、目的と課題を見直し、戦略を練り直していただければと考えています」と言う。
ECの基本から最新トレンドまで、セミナーで広く情報収集
その見直しの良いきっかけとなるに違いないのが、「EC Camp 2022」だ。面談、セミナー、相談という3つのコンテンツを中心に、中小企業とEC事業者のマッチングをサポートするオンラインイベントで、いずれもオンライン会議やアーカイブ配信の機能を使うことができる。最短30分でも時間を確保できれば、スポット参加も可能だ。
今回、初の完全オンライン開催となった点に関し、千代森直希氏は「全国の企業が平等に情報にアクセスできるようになりました」と、北海道から沖縄までの、あらゆる中小企業が同じ情報に触れられるようになったことが大きいと話す。実は前回の「EC Camp 2021」は、新型コロナウイルスの感染拡大により、大阪会場での開催を中止せざるを得なくなった。さらに、オフライン開催の場合は参加者が大都市圏に偏るという点に、課題を感じていたという。
同時にセミナーコンテンツも過去最大の15本に拡充。午前中は基礎講座を開催し、午後はトレンド感の高い内容を展開。手探り状態の企業は午前から参加すれば面談に必要な情報を確保できる。期間中は毎日10:30、13:00、15:00に配信され、すべて違う内容となっている。具体的には「ECの基本(自社サイトとモール、マーケティング、SNS、FDA)」「ECの最前線(DX、物流、BtoB、インバウンド等)」「ECの成功体験(EC関連出版社や中小企業のEC担当者が紹介)」の3本立てで、「EC Camp2022の攻略法」から「越境EC」などまで、業界情報の把握に役立てられるのがありがたい。また相談はEC事業経験者やコンサルタントに無料で行うことができる。なお面談や相談は、スケジューラー上に空き枠があれば当日予約も可能。本業の隙間時間にプロへ相談できるのは、オンライン開催の強みだ。
ECナビゲートでは初歩的内容から70社の支援企業についても相談可能
また、「まず何から手を付ければいいのかわからない」「支援事業者と面談してみたいが、どの企業に申し込めばいいかわからない」などの初歩的な内容から、今後のEC事業発展に役立つツールの導入の検討については、「EC Camp」に常駐する経験豊富な専門家に相談できる「ECナビゲート」コーナーも用意されている。ナビゲーターを務めるのは、中小機構で通常、国内又は海外の販路が拡大できるよう、ECに関するアドバイスを実施する「中小機構 中小企業アドバイザー 」の面々で、国内EC、越境ECそれぞれに強い専門家が相談に応じてくれる。
またEC事業の拡大には、目指す方向性の設定、それに合致したツールおよびそのツールを使いこなす知識も必要だ。「EC Camp」では前述のアドバイザーが事業の方向性の深掘りからナビゲートしてくれるので、やりたいことを明確化した上で、出展事業者と面談することができ、必要なツールを提供している事業者と出会いやすくなる。
そもそもECを何のために始めるのかという、初歩的な相談もできるのが「EC Camp」の良いところだ。「ECとは何か、自社にとってEC事業とは何か」という初歩的な段階から、アドバイザーが話を聞き取り、事業者の困り事から、解決策を持っていそうな支援事業者(出展社)を紹介してくれる。アドバイザー陣は特定の企業から派遣されているのではなく、中小機構と個別に契約を結ぶ業界経験者のため、出展者との利害関係はない。より安心して相談できるだろう。
出展事業者は計70社。カートシステムや物流会社、販売・運営代行、コンサルティングなど、ECに関与する幅広いジャンルの企業が名を連ねる。いずれも中小企業の資金力で活用できるサービスを、中小企業に向けて提供した実績があるのもポイントだ。
公的機関ならではの安全性と参加費無料の安心感
「EC Camp」が完全無料なのは、公的機関主催のイベントならではだが、安心材料はそれだけではない。面談の場は出展社であるEC支援事業者にとっては営業機会なので当然、自社サービスを紹介されるものの、面談そのものに条件(制約条件など)はない。出展社と面談した結果を持って再度アドバイザーに相談することもできる。
このスキームではお金が生まれるポイントがないため、代わりに個人情報を渡すことになり、追って営業の連絡があるのではないかと考えるかもしれないが、実はその懸念も不要だ。事業者と中小企業の間に中小機構が介在しており、イベント期間中のみ特設サイト内で両者のマッチングを取り継ぐ。そのため、面談した際に自身で連絡先を伝えない限り、後日、支援事業者から営業の連絡が来ることはないのだという。
「営業目的の無料セミナーは数ありますが、『EC Camp』では最先端のナレッジを偏りなく学べます。EC事業を始めたい、あるいは拡大したい事業者にとっては、自社に合うサービスのコンサルティングを無料で受けられる貴重なイベントだと思っています」と島田氏。
イベント後のフォローアップまで無料で対応
イベントに参加して説明を受けるだけでも意味はあるが、「EC Camp」の強みはアフターフォローにもある。5日間のイベント終了後も、連続性のあるサポートを受けられるのだ。そのカギを握るのが「アドバイザー」の存在と事業者ごとの「カルテ」だという。
中小機構のEC活用支援ではもともと、相談のあった企業ごとに、部外秘のカルテを作成している。カルテにはこれまでの相談内容と示したアドバイスなどが記載されており、中小機構に相談に行けば、「前回の続き」からなど、連続したアドバイスが受けられるようになっているのだという。
まだ中小機構に相談したことがないという事業者であれば、EC Campを機に持続的な相談をしていき、事業拡大につなげていくのもよさそうだ。イベント当日は参加者が多い都合上、ナビゲーター(アドバイザー)との面談時間は1回30分と限られているが、通常、中小機構での相談時は1時間かけて課題や状況の掘り下げをしてくれるという。もちろんEC Camp以外の相談に関しても、中小機構での相談は無料だ。例えば「EC Campで初めてアドバイザーに相談してみて、複数の運送企業と面談したものの、サービス内容が自社とマッチしなかった。さてどうしようか」というような状態でも、中小機構に行けば、その続きのアドバイスを受けることができる。
中小企業であれば業種・業態は不問(ただし、自社の相談内容に限る)。「いまさら聞きづらいEC事業のノウハウ」も学べる、またとない機会となりそうだ。