眠る在庫を利益に変える。販売×顧客データの連携が、売上&顧客体験UPのカギ
在庫をいかに効率よく回転させるか。それはEC事業にとって要点のひとつである一方、効果的な施策に悩む事業者も少なくない。この課題に応えるのが、CXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」と在庫分析クラウド「FULL KAITEN(フルカイテン)」の連携だ。販売データと顧客データを掛け合わせることで、在庫を効率的に売上へと変えるこの連携は、株式会社アーバンリサーチにおける実証実験でも大きな効果を発揮した。システム連携がもたらすメリットについて、「KARTE」を提供する株式会社プレイド 取締役 髙栁慶太郎氏、「FULL KAITEN」を提供するフルカイテン株式会社 取締役COO宇津木貴晴氏に聞いた。
顧客データ解析の「KARTE」×在庫分析の「FULL KAITEN」。連携のきっかけは
──両社の事業内容や提供中のサービスについて教えてください。
株式会社プレイド 取締役 髙栁慶太郎氏(以下、髙栁) 株式会社プレイドではCXプラットフォーム「KARTE」を2015年から提供し、2023年4月末時点で600社を超える事業者様にご利用いただいています。「KARTE」は導入企業のWEBサイトやECサイト、アプリのユーザーをリアルタイムで解析し、一人ひとりに合わせたコミュニケーションと顧客体験を実現します。2015年のローンチ時にはKARTEの価値を表現するワードとして「WEB接客」を作り出し、商標も取得しています。
フルカイテン株式会社 取締役COO宇津木貴晴氏(以下、宇津木) フルカイテン株式会社は、在庫分析クラウドシステム「FULL KAITEN」を提供しています。ベビー服のEC販売経験を活かし、在庫分析に関する独自システムを2019年にリリースしたのが「FULL KAITEN」の原点です。バージョンアップを重ねながら、現在では大手企業も含め200ブランド以上にご利用いただいています。
──協業のきっかけはどのようなものでしたか。
髙栁 当社のプロダクトはユーザー側の行動解析を得意とする一方で、商品側のデータの蓄積がありませんでした。商品データや在庫を軸としたソリューションを提供している企業様を探すなかで、当社からフルカイテン様にお声がけしたのがきっかけです。
宇津木 実は、当社では以前からWEB接客ツールとの連携についてご要望をいただくことが多く、名指しで「ぜひKARTEと!」とのリクエストも上がっていました。販売・顧客データの管轄部署が異なる企業も多く、双方の活用が難しい現状において、協業によりプラスの変化をもたらせると確信しました。
売上高が2割増、客単価は6割増に。実証実験で得られた成果
──連携前は、どのような課題を感じていたのでしょうか。
髙栁 一番の課題は「人」と「モノ」とのマッチング精度でした。特に「モノ」については活用できるデータの幅が少なく、コンバージョンを測定できてもあくまでもそれは「結果」でしかありません。商品データを活用してリアルタイムな施策を打つために、フルカイテン様との連携が新たな強みになると考えました。
宇津木 当社では在庫がこの先どうなるかの「予測データ」を活用し、各施策のご提案を行ってきましたが、具体的なアクション支援まではなかなかできていませんでした。プレイド様との協業で、顧客データを活用したMAや具体的な行動支援が可能になると感じました。
──アパレル企業の株式会社アーバンリサーチ様での実証実験を経て、サービス連携を開始されたとのことですが、どのような成果が得られたのでしょうか。
髙栁 2022年6月~8月にアーバンリサーチ様のオンラインショップで「FULL KAITEN」と「KARTE」を連携させたシステムを実装したところ、売上高が2割増、客単価は通常時の6割増、それ以外に粗利率や購入率の向上といった具体的な成果が出ました。アーバンリサーチ様には以前から当社の「KARTE」をご利用いただいていたのですが、そこに「FULL KAITEN」の在庫データを組み合わせることで、商品が在庫になる原因を分析し、課題解決ができました。
宇津木 コロナ禍の影響で店舗在庫が余剰している状況でしたが、これらをECで販売する際にクーポン中心の販促による過剰な割引をしてしまっていたケースが見られ、利益が伸びていませんでした。「KARTE」との連携のもと、最適なターゲットに向けたタイムセールなどを実施したところ、全ての指標が改善しました。なかでも利益が大きく伸びたことで、アーバンリサーチ様にも一番欲しかった成果が得られたと喜んでいただきました。
──システム連携の特徴や強みはどのような点にありますか。
髙栁 「FULL KAITEN」で在庫分析を行い、販売を強化するべき商品を可視化したうえで、「KARTE」で顧客の行動データを解析し、最適なターゲットに表示します。システム連携で最適なアクションを実施することは、利益の毀損を最小限に留めることはもちろん、顧客体験向上やファン醸成にもつながります。
宇津木 「FULL KAITEN」では、全ての在庫を粗利貢献度や消化スピードなどの指標で4つ(Best, Better, Good, Bad)に分類します。アーバンリサーチ様のケースでは、情報発信を強化すれば消化できる「Better」在庫が約10万点見つかり、「これは人の目では無理ですね」と驚かれました。社内において共通の軸で在庫評価を行い、「KARTE」の顧客データ・行動データとの連携のもと、在庫を効率的に売上へと変えられるのが強みです。副産物としては、スタッフの負荷軽減も見られました。システム連携により振り返り作業を負荷なく実施できるので、施策の精度も上がります。
髙栁 販促費をかけなくても勝手に売れる「Best」な商品への不要な投資も抑えられますし、残業減など、ポジティブな働き方の推進にも貢献する可能性を持つ連携ですよね。
余剰在庫の削減は、大量廃棄を減らし働き方の変化にも貢献する
──両社の協業は、業界にどのような変化をもたらすと考えますか。
髙栁 労働人口が減るなかで、ユーザーに欲しいものが届く、企業の売上が伸びる、そしてスタッフの負担減による働き方の変化や、SDGs観点から見た在庫ロスの削減など、協業がもたらすものはまさに三方良しだと思っています。「作りすぎない」という選択を広げれば、業界の慣習にも変化を起こせる可能性があります。
宇津木 原価を下げるために販売力以上のセール前提の生産・仕入れを行うと、結局売れ残りが発生し、値引きや評価減により利益の毀損が起こり、在庫廃棄の問題も発生します。適量生産ができれば値引きを行う必要もなく、利益も出せるので、その分だけ商品投資に注力できます。協業を通じて余剰在庫を減らし、小売企業の「稼ぐ力」の増大に貢献できればと思います。
──最後に、両社の今後の展望について教えてください。
髙栁 オンライン・オフラインの往来が当たり前となったいま、時代に即した購買体験を提供したいと考えています。本来、買い物は楽しくあるべきものですし、良い物を見つけた体験は継続的な購買にもつながります。この連携がそのマッチングの一助になると思っています。今後もセレンディピティ感を大事にしながら、プラットフォームとしての精度を高めてまいります。
宇津木 在庫を利益に変える両社のシステム連携で、購買体験の向上に寄与しながら、今後は大量生産・廃棄の問題がある食品分野や、サプライチェーンにおける川中・川上の在庫問題の解決にもチャレンジしていく予定です。在庫に課題を抱える事業者様は、ぜひ一度お問い合わせください。