シニア層の「リアル」を分析し展開するダイレクトプロモーションとは
世界一の高齢社会とも言われる日本において、シニア層向けのセールスを強化したいと考えている企業は多いだろう。しかし、シニア層には若年層などとは違うアプローチが求められるが、的確なアプローチに必要なのは、シニア層の生の声だ。シニア層向け広告の企画・立案、実行から効果の検証までをワンストップで提供し、豊富な知見を持つ、株式会社エスプールセールスサポート 執行役員の山本勝治氏に聞いた。
シニア層にオンライン広告は効果が薄い
──シニア層向けのセールスに取り組んでいる事業者は、どのような悩みを抱えているのでしょうか。
通販サービスを展開している事業者様からの相談が多いのですが、昨今はコロナ禍が落ち着いてきたことによるご相談が多いです。コロナ禍で通信販売は広く浸透しました。当時は在宅ニーズが非常に高かったため、折り込み広告やインフォマーシャルを見る機会が増え、オンライン広告も一定の効果がありました。
しかしコロナ禍が落ち着いてきたため、その効果が上がらなくなってきています。例えば若年層の方たちは、オンライン広告を見ると自分で検索して値段やサービスを比べるといった行動を起こします。しかし、シニア層の方たちはそうした行動をなかなか起こせません。そしてシニア層は、「対面で、信頼性のある人から情報を聞きたい」というニーズがすごく高い。若年層なら様々な手法があるのに、シニア層には何をやっても上手くいかない、どうしたらいいのか分からないという事業者様が増えています。
──その解決のためにどんなサービスを提供しているのでしょうか。
例えば飲料や食品のサンプリングは、配って終わりになりがちです。しかし私たちは、配った上で商品をしっかり説明して、その場で申し込みまで取れるところが特徴です。
商材に合わせて最適な「ヒト」「コト」「モノ」をすべて提供
──施設や店舗にブースを構えて説明や販売を行う、ダイレクトプロモーションですね。どんな場所で、どういったアプローチを行うのでしょうか。
分かりやすい例はスーパー銭湯です。例えば化粧品のプロモーションをしたいとき、ショッピングモールやレジャー施設では、訪れる女性はお化粧をして来ていますから、なかなか試してもらえません。しかしスーパー銭湯では、多くの女性が化粧をしていないので試してもらいやすいのです。
──商材に合わせて、試してもらいやすい場所を提案・提供できるわけですね。
場所とアプローチだけではありません。例えば化粧品は、一度試しただけでは分かりにくいことがあります。そこで、効果をしっかり説明したり、試している人が悩みを相談したりできる販売員を用意します。
ダイレクトプロモーションに必要不可欠なのは「ヒト」「コト」「モノ」です。販売員や説明員などの「ヒト」、どこでどのような形でやるのかという「コト」、ポスターや説明パネルなどの「モノ」ということです。私たちはグループ内に物流部門や人材採用拠点などもあり、これらをすべて内製できます。
日本では、大手代理店が依頼を受け、そこから代理店に発注が行き、さらにそこから人材育成会社や制作会社などに発注が行きと、細かく枝分かれする代理店モデルが多い。しかし私たちはすべて内製化してまとめて引き受けられるので、他社と比べて圧倒的にコストを抑えつつ成果を最大化できるのが強みです。
現場の声を集約できる風通しのよさも強みです。代理店モデルでは連絡系統が細かく枝分かれしているため、誰が情報を集約するのか分からず、責任の所在があいまいになり、現場の声がメーカー側に届きにくい。私たちにはそうしたことがありません。
──シニア層にアプローチする場所、方法、人材を一括で提供でき、現場の声も分かる。プロモーションを依頼したい事業者にとって楽で安心感が高そうですね。
圧倒的に“楽”に感じていただけると思います。相談していただければ、その商品に関連する物、場所、人を私たちだけで用意できます。最初の顧客を獲得したい、LTVが高い顧客を獲得したい、個人情報を収集したいなど、様々なニーズに対応できます。新商品開発に向けて、商品や企業名を全部伏せた形で対面でモニター調査をすることもできます。
全国3万6000カ所でアプローチ可能
──もうひとつの特徴である、シニアパレットはどういったものですか。
シニアパレットは、インストアメディアだと考えてください。こちら側の人を立たせない形で行います。
例えばスーパー銭湯の鏡に鏡面広告をセットします。そこでシニア層に向けて「しみ・そばかすが気になりませんか」といった、肌の悩みに気づかせる広告を出して、「詳しくはこちら」とパンフレットやサンプルが置いてあるところに誘導します。
施設側に協力してもらい、施設の従業員が説明できるような環境を用意し、問い合わせがあれば対面で説明してもらったり、サンプルを渡してもらったりします。施設に販売環境があれば、そこで商品を販売してもらうこともあります。こうしたシニアパレットや、先ほどのダイレクトプロモーションを仕掛けられる場所を、全国の郵便局約1万6000カ所をはじめ、全国約3万6000カ所を用意できます。
まず、シニア層の心情、生の声を知ることから始まる
──シニア層向けにビジネスを展開するときに、心がけるべきことはなんでしょうか。
シニアの方たちの心情に、もっと詳しくなることだと思います。シニア層といっても、健康な方、そうでない方、富裕層、介護層など様々です。きちんとセグメントを分けて、それぞれのニーズに合わせてプロモーションすることが大事です。
私たちは、数千人のシニアに対面でインタビュー調査を行い、そのデータを基にしています。調査の手法や場所によって調査結果は全く変わってきます。例えばシニア層が多い地域に密着した商店街などで定期的にインタビュー調査をしていますが、そこから、シニア層の6割の方が月に1回も通販で商品を買っていないことや、買わない理由は個人情報の入力が嫌だからといった“生の声”を把握しています。介護施設の方々から意見をいただいたり、富裕層シニアが多い場所で調査したりもします。
──様々なシニアの生の声を集め、把握していることが一番の強みといえそうですね。日本では今後も超高齢社会が続きますが、貴社では今後どういったことに注力するのでしょうか。
今後はシニア層も、徐々にスマホを使いこなす人が増えていくと思いますが、その一方で、リアルの対面プロモーションは絶対になくならないと思います。現在は国内での事業が中心ですが、今後は海外での展開、例えば台湾のシニア層にアプローチする展開も考えております。