DHC髙谷成夫氏インタビュー「今必要な変革」とは~ECのミカタ 小林亮介が聞く~

ECのミカタ編集部

2018年を境に減収に転じ、2022年11月、オリックスによって買収されたディーエイチシー(以下「DHC」)は2023年4月、化粧品通販大手のオルビスなどで代表経験を持つ髙谷成夫氏を代表取締役会長兼CEOとして招へいした。経営体制刷新により、DHCは今後、どのように変貌するのか。MIKATA株式会社代表の小林亮介による、髙谷成夫代表取締役会長へのインタビューを3回にわたって紹介する。第1回のテーマは「レガシーブランドとしての立場と“今”必要な変革」について。

お客様との関係性をどう作り上げるかが、求められている

小林亮介(以下、小林) DHCと言えば、創業オーナーである前会長が一代で築き上げた会社であり、強烈なカリスマ経営者によるトップダウン経営で知られていました。現在のDHCの強みと弱みを、どのように見ていらっしゃいますか?

髙谷成夫代表取締役会長(以下、髙谷) 企業が存在できるのは、「お客様に対する課題解決」を常に行っているからだと思っています。これはあらゆる企業に言えることだと思います。その方法の独自性が企業の価値、即ち強みだとするなら、DHCの創業当時からの最大の強みは、ビューティーケアやヘルスケア領域においての商品・サービスとしての機能価値と、それを提供する上でのお求めやすい価格だといえます。

当社がヘルスケア領域で事業展開を始めた当時は、日本ではまだサプリメントの分野でそれほど強い競合他社がいたわけではありませんでした。今では、その市場は年々拡大していて、参入企業も数多あります。こうした状況で単純に機能価値と価格だけでお客様の目にとめていただくのは非常に難しくなってきていますので、選ばれるブランドとしてどうアピールしていくか、そこが一番の課題とも言えます。

ですからこれからはお客様との関係性をどう作り上げるかが、一層求められる。ただ、そのつながりはイメージ戦略だけで作り上げられるようなものではなく、あくまでも我々の原点にある商品・サービスの機能価値と価格を追求し、それを実際に体験いただく中で生まれてくるものだと考えています。いかにお客様の課題に寄り添いながら、一貫性を持って追求し続け、唯一無二のレベルまで上げられるか。そこがこれからの勝負かなと思っています。

情報を編集するという行為自体が、お客様にファンになってもらうための一つの開発

小林 それは端的に言うと、ブランド価値の強化ということでしょうか。

髙谷 僕は「ブランド」という言い方が人によって解釈が異なるのであまり使いたくないのですが、そもそもブランドは、「一般に知られている」ことが価値の大前提にありますよね。そういう意味でDHCというブランドはありがたいことに、50年間の歴史の中で、広く多くの方に認知されています。ですからブランドとしての最低条件はクリアできている。

そこから一歩進めて、「いい会社」「いい商品」と認識していただく、あるいは「この企業や商品が好き」というファンになっていただく、そこまでのレベルへ引き上げることがブランドの強化・確立には必要です。機能と価格でファンになってもらえることもありますが、本当の意味でのファン獲得には、人でいうところの人柄・品位を表す「人格」のような、「社格」ともいうべきものが、必要だと思っています

「社格」を形成するには、会社としてのあり方を商品が実装している必要がありますし、さらにその価値が消費者にきちんと伝わらなければなりません。

僕は基本的に、商品と情報はセットだと思っていて、自分たちで商品という情報を編集し、コンテンツにして、発信しなければならないと考えています。そういう意味で、伝えたい情報を包括的に提供できるお客様への会報誌などのオウンドメディアは重要なメディアだと思っていますし、情報を編集するという行為自体が、お客様にファンになっていただくための一つの大切な開発といえるかもしれません。

特にビューティーケアとヘルスケアは一過性の商品とサービスではなく、習慣化しずっと使い続けていただいて初めて価値を持つもの。ですから、お客様の心の琴線に触れるところまでしっかり入っていくことが、実はものすごく重要であると考えていますし、それこそが、DHCが改めて作り上げていかないといけない部分だと考えています。

基盤の一番の重要ポイントは「人材」

小林 今のお話、すごく感じ入りました。というのも実は弊社も今、第二創業期として事業のあり方を自ら問い直しているところでして、といっても御社とは比較にならない小さな組織なのですが……。

髙谷 一度できあがった固有の企業文化や仕組みを見直すというのは簡単なことではなく、それは組織の大小に関係ありません。無駄に見えても変えるべきでないところも当然ありますから、一気に全てを変えるべきだとも思ってはいません。ただ、本来大切にしてきたことが単なる手段になってしまい、その目的が見失われてマイナスにはたらくところもありますから、そこがまさにこれからの変革のポイントだと思っています。

小林 変えていくべきマイナスの部分とは?

髙谷 企業にはいろんな意味での基盤があります。研究開発、マーケティング、システム、ガバナンスなどのインフラ面において、過去にはトップランナー、リーダーとして引っ張ってきた会社が、その成功体験に、ある意味安住する中で、逆に時代から取り残されてしまっていたり、当たり前にやるべきことが、いつの間にか当たり前にできなくなってしまっていたりする状態もあると思います。DHCも、新しい経営体制になってからのこの1年ぐらいは、まずマイナスの部分をゼロにするということに注力し、その整備をしています。

小林 整備を進めている基盤の一番の重要ポイントはどこでしょう?

髙谷 最終的にはやはり人材です。社内の意識改革を含めた人材・組織の強化というところが最も重要なことですが、やはり時間がかかります。この半年から1年の中でやるべきことはできてきたのではないかと思っていますが、本当に戦えるような企業になっていくためには、まずは自分たちの中に『本質』をしっかり持つことが重要。と同時に、自分たちの本質を伝えるための、発信力もしっかり持たなければいけない。自分たちの本質を伝える情報を、お客様とどういった形で共有できるか。一方通行の広告だけではなくて、これもブランド作りのゴールにつながっていく話かなと思っています。

小林 本質をしっかり自覚し、発信することでブランド力を高めるということですね。ありがとうございました。次回は直球になりますが、ECで成功するための戦略についてお聞きします。


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