EC-CUBEユーザーカンファレンス2015
EC-CUBEパートナー新年会が装いも新たに
株式会社ロックオンは1月22日、同社が運営するECオープンプラットフォーム「EC-CUBE」利用者を対象としたカンファレンス「EC-CUBEユーザカンファレンス2015」を開催した。
同イベントは毎年行われている「EC-CUBEパートナー新年会」をリニューアルしたもので、現在EC-CUBEを利用している方はもちろん、同サービスに興味を持っているWEB制作者が情報を得たり交流を深めたりできる場として、セミナーやネットワークングパーティーなどを織り交ぜた内容。セミナーとパーティの二部構成となっている。
第一部のセミナーでは「セキュリティ」「パフォーマンス」「クリエイティブ」をテーマに3セッションが開催された。
第二部では、参加者同士の交流を深める場として立食形式でのパーティーが行われ、EC-CUBE総括責任者である金陽信氏より、2015年の展開についての発表がされた。
モジュール•プラグイン開発のセキュリティ虎の巻
第一セッション「セキュリティ」では、株式会社アラタナ取締役の最高情報セキュリティ責任者の松野真一氏、株式会社スピリット•オブ代表取締役社長の川口歩氏の二名が登壇し講演を行う。
2013年9月より活動してきたEC-CUBEセキュリティワーキンググループの活動成果物である、モジュール•プラグインの開発ガイドラインについて、EC-CUBEの開発者が押さえておくべきセキュリティのポイントを解説する。
企業の枠を超えて個々のつながりをもっと強めたい、EC-CUBEを、業界全体をよくしたい、という思いより、2013年10月3日にEC-CUBEセキュリティワーキンググループを発足。「お客様がEC-CUBEとEC-CUBEをベースとしたパッケージを安心して使用できる状態」をゴールに設定し、EC-CUBEのセキュリティガイドラインの作成に尽力したという。
ガイドラインには、カスタマイズを行う開発者へのメッセージ、実際に発生した問題事例からの教訓集、安全であることの確認事項などが記されている。細かく書くと、本が一冊書けるボリュームがあるが、そうではなくEC-CUBEユーザーに分かりやすいよう意識して作成されている。
ガイドラインの解説後、松野氏と川口氏は、
「一回の情報漏洩で起こるダメージが非常に大きい時代です。我々ワーキンググループができることは、安全で分かりやすいガイドラインを作成するまでです。ユーザーのご理解とご協力をお願いします」
と講演を締めくくった。
売上げ向上のためのECサイトの品質3指標
第二部セッション「パフォーマンス」では、株式会社spelldata代表取締役の竹洞陽一郎氏による講演。
米国ではAmazonやebayのような大規模なECサイトから、年商数億円規模のECサイトまで、KPIとしてサイトの品質を定常的に監視して、品質の低下によって売上げに影響を及ぼさないようにしている。
ECサイトの品質とは「1:つながる」「2:早い」「3:分かりやすい」の3つで、これを24時間365日、定量的に分析して売上げを向上させている。
この講演では、なぜこの3つの品質がECサイトのKPIになっているのか、欧米のECサイトと比較しながら日本のECサイトの問題点と共に具体的に解説をする。
ECサイトの品質を担保する上で守らなくてはいけない指標3つは、実は日本のECサイトの約9割はできていない。何よりもまず、パフォーマンスである「スピード」が重要であるとし、そこを改善することはイコールで「売れない理由」を潰すことにつながるという。
トップページが100%表示されるまでの時間を比較した際、アメリカのモバイルサイトは早いサイトで1.7秒、遅いサイトで7秒であることに対し、日本のモバイルサイトは早くても5.4秒、遅いサイトだと26秒かかるという結果が出ている。26秒も経つ頃にはユーザーは離脱していることも多く、この状況では100%正しいWEB分析は行なえない。
また、欧米がWEB分析を行う際の項目が、アクセス解析、パフォーマンス計測、情報品質、の3項目であることに対し、日本はアクセス解析だけであるという。これが、日本のECサイトの9割以上が守るべき指標3つを守れていない原因としている。
ほとんどのECサイトができていないことは、裏を返せば「やったもの勝ち」であるとし、実際にパフォーマンスを上げたことで成果を出した実例を述べ、「ECサイトの品質」の重要性を総括し講義を締めくくった。
ECサイトに本当に必要なもの「ブランディング」をEC-CUBEで
第三部セッション「クリエイティブ」では、株式会社フルブライト代表取締役の河野貴伸氏が登壇する。
数多く存在するECサイトのソリューションの中でEC-CUBEを選択する意義を、「ブランディング」という観点からECサイトのブランディングTIPSを交えて講義を展開していく。
ECサイトが簡単につくられるようになり、競合は日々増え続けてる。そのような状況の中、何よりもまずは自社の強みを明確化し、そこから見えるターゲットをしっかり意識することが第一歩という。極論を言えば、不特定多数のユーザーには使いづらいサイトでも、コアなファンに絞り込んだ作り込みをし、「ファンの心に響く仕様」を作る努力を続けることがブランディング成功率を高める上で重要だとする。売れるか、良いか、ということを考えるよりも、「誰のためか」ということを考えると、結果として良いものがついてくることが多い。
「ブランディングとはエモーショナルな部分が多く、正解のない所を攻めていかなければいけません。セオリーを気にせず恐れずに、色々なことにチャレンジすることが大切です。やってダメなことはまた戻せばイイ。プラットフォームに縛られないEC- CUBEなら、自分たちの経験とノウハウを蓄積していくことができるので、ファンに受け入れられるまでチャレンジを繰り返してください。まずは、トライアンドエラーを続けられる体制を作ることが優先です」
また、オリジナルECサイトでブランド活動を行うことのメリットとして、ユーザーだけでなくバイヤーや百貨店の担当者など色々な人が閲覧するので、ターゲットに刺さる動きをすればECだけじゃなくリアルでの取引につながるチャンスもあるという。自社のECサイトがBtoCのみであるとこだわらず、BtoBも想定に入れておいて損はない。ECサイトのブランディングからリアルでの取引先開拓につながった実例を紹介し、「頭を使い歴史を重ねること」が差別化につながると締めくくり講義を終えた。
2015年EC-CUBEの展開
第二部、参加者同士の親睦パーティーの前には、EC-CUBE総括責任者である金陽信氏より、2015年の展開についての発表がされた。
EC-CUBEを取り巻く環境は、クラウド会計、越境EC、オムニチャネルなど多種多様なサービスが登場し、スマホやタブレットの普及が進み利用デバイスも多様化している。EC-CUBEは、新しい市場を創出するような存在でなければならないとし、これまでの機構へ追加するだけのバージョンアップだけでない大きな改革が必要となる。そこで、2015年EC-CUBEは、バージョン3を出すと金氏は発表した。
EC-CUBE3には3つの大きな変更があり、内部機構の刷新、UIの刷新、APIの実装といった革新を行うとともに、「EC-CUBE SDK」の提供を開始し、WEBサイトだけでないECプラットフォームとして新たにSDKを併せて提供していくとした。
EC-CUBE3は2015年5月リリース、EC-CUBE SDKは2015年秋リリースとなる。
EC-CUBEユーザー親睦パーティー
その後行われた親睦パーティーでは、立食形式で参加者全員が歓談と情報交換を行った。
セミナー登壇者なども参加し、お酒で喉を潤しての談話で横同士のつながりを作る光景があちこちで見られた。
新しいバージョンのリリースも発表され、今後ますます加速していくであろうEC-CUBEの動向に注目していきたい。
取材/写真/文:島名タスク