パナソニックがプロダクトデータ活用で目指す一貫した顧客への価値提供とは?【Lazuli×Panasonic セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

9月12日にECのミカタが開催した「AIとデータで進化するECビジネスカンファレンス~実例で探る新たな可能性~」にパナソニック株式会社 コンシューマーマーケティングジャパン本部の山下亮氏が登壇。100円の電池から300万円の太陽光発電システムまで扱うパナソニックが、Lazuli株式会社と進めているデータ収集・マスタ整備による一貫した顧客への価値提供について語った。Lazuli株式会社からは執行役員の北庄司英雄氏が登壇した。

商品価値と顧客接点を強化するビジネスモデルへの転換

生活やビジネスのあらゆるシーンに向けた商材をフルラインナップしているパナソニック株式会社(以下、パナソニック)の商品はBtoBからBtoCまで100カテゴリー、1万品番に及ぶ。この商品群に高い価値を持たせるため、創業者・松下幸之助氏の「売る前のお世辞より売った後の奉仕。これこそ永久の客を作る」という言葉を体現する必要があると考えたという。

「従来の商品価値の追求に加え、顧客接点(CX)の強化を重視した新たなビジネスモデルへと転換しました。『暮らしのベストパートナーはやっぱり、パナソニックだよね』と感じていただけるお客様を増やすことで、総合的な満足度を高めたいと思っています」(山下氏)。

顧客体験強化に取り掛かったパナソニックは、顧客が課題を解決できるコンテンツ構造へとオウンドメディアの動線を再設計している。

「オウンドメディアをトップ、カテゴリー、単品商品、購入の4レイヤーに整理し、デジタルとフィジカル(リアル)の顧客接点を問わず、カスタマージャーニーの全域において世界観の統一を図りました。また、それぞれの接点で得られたデータを最適な形で提供することにより、お客様がどこにいても一貫した価値提供ができる仕組みづくりをしています」(山下氏)。

※画像提供:パナソニック株式会社/「ECのミカタ カンファレンス」AI/データサイエンスより

顧客提案の高度化を目的にAIを活用

では、最新の顧客ニーズを把握し、一貫した世界観で価値訴求するためにはどうすればいいのだろうか。山下氏は、これまで顕在化していた商材ごとのデータをマスタ化し、データの収集から分析までを機械的に完結させる必要があったと語る。

「最新のユーザーペインを把握するためには、コールセンターで一人ひとりに聞き取りを行うのが一番です。しかし、全てのお客様への対応は現実的ではないため、コールセンターでの対応とあわせて、IoT商材や会員情報データを元にお客様へ寄り添う施策を展開していました。そうするとデータ量は集まりますが、お客様理解度の深さが広がらないことが課題でした」(山下氏)。

マスタデータの統合とAIによる商品情報の整備により、今後はお客様理解度と顧客数をかけあわせて、より多くのお客様へ質の高い提案を行う世界観をLazuli株式会社(以下、Lazuli)とともに目指していくとした。

※画像提供:パナソニック株式会社/「ECのミカタ カンファレンス」AI/データサイエンスより

従来の商品マスタデータは顧客理解をするためのデータではない

パナソニックが目指す、一貫した価値提供やデータ統合に寄与している企業の一つがLazuliだ。本セミナーに登壇した北庄司英雄氏(以下、北庄司氏)は、商品マスタデータだけでは顧客理解や一貫した価値提供は難しいだろうと推測する。

「商品マスタで蓄積されるデータは、JANコードや商品名・価格など取引や売上を管理するためのデータです。顧客を理解し、ビジネスの成長につなげるためには、市場価格やレビュー、関連商品情報など多元的な情報を商品マスタデータと統合したプロダクトデータが必要だと考えます」(北庄司氏)

※画像提供:Lazuli株式会社/「ECのミカタ カンファレンス」AI/データサイエンスより

Lazuli PDPは、AIを活用した商品情報のプラットフォームとして、各種データを統合しツールへ自動連携するためのデータ加工や生成を行う。本セミナーでは、EC商品ページを例に商品マスタのみの場合と、多元的な情報も含めたプロダクトデータの場合で顧客体験がどう変化するのか北庄司氏より解説がなされた。商品情報の充実により、ECサイト上の顧客体験の向上や商品の特徴をメタタグとしてマスタに持たせることで実現できるパーソナライゼーションが今後重要視されていくと考えられる。

AIは文章や画像の生成が注目されがちだが、大量のデータを、人間の限界を超えて処理できる点が本来の強みだ。パナソニックのような大企業はデータを集めやすいが、データを適切に扱うための労力が大きい。企業がAIを活用したサービスを導入することで、データ統合や商品情報の充実化に課題を抱えている事業者はひとつ、壁を打ち破れるかもしれない。

北庄司 英雄(きたしょうじ ひでお) Lazuli株式会社執行役員
2001年ヤフー株式会社に入社、エンタープライズを中心に黎明期のインターネット広告を活用したデジタルマーケティングの定着化に従事。その後ブライトコーブ、New Relicなどの複数の外資系SaaS企業の日本マーケット立ち上げフェーズに参画、セールスマネジメントとビジネスデベロップメントを強みとする。2020年10月にLazuliのSales Directorとして参画後、2022年2月より同社VPoSに就任。

山下 亮(やました りょう) パナソニック株式会社 コンシューマーマーケティングジャパン本部 PXドリブンセンター DX企画部 デジタル総括
海外BtoB事業のハードウェア技術者として入社、その後、商品企画として欧州地域を担当。国内BtoB事業へ異動後、事業企画としてIoT向けモバイル通信サービス事業およびリカーリングビジネスの立ち上げに従事。現在は国内家電マーケティング部門にてデータドリブンマーケティング、特にプライベートDMPの立ち上げ、CMS・CDP・MA・BI等のマーケティングテクノロジースタックの責任者としてオペレーション力強化を推進中。


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