海外販売のハードルを乗り越える――eBayで始める越境ECのすすめ【イーベイ・ジャパン セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

越境ECを始めるにはさまざまなハードルがある。しかし、190カ国以上で展開する世界最大規模のマーケットプレイス「eBay」への出店を通じて日本のセラー(販売事業者)の越境ECを支援するイーベイ・ジャパン株式会社は、現在、越境ECを始めるハードルが下がっているという。

2024年10月17日にECのミカタが開催した「越境ECカンファレンス」では、同社 カテゴリーマネジメント部 部長 北村直樹氏が、越境ECを始める際の“壁”と、越境ECで得られる“利”について解説した。

今、越境ECを始めるハードルが大きく下がっている

かつては自身もセラーとしてビジネスを展開していた北村氏は、越境ECを始めるにあたってプラスとマイナスの両面があると認識しながらも、越境ECを始めるべきだと考えている。

イーベイ・ジャパン株式会社(以下、イーベイ)では、日本の事業者が海外で商品を販売する上で、大きなハードルとして「物流のハードル」「言語のハードル」「文化のハードル」の3つを挙げている。「5年ほど前まではこれら3つのハードルを乗り越えるのは困難でしたが、現代では非常に簡単に越えられるようになりました」(北村氏)。

※画像提供:イーベイ・ジャパン株式会社/「ECのミカタ 越境ECカンファレンス2024」登壇資料より

日本から配送しても、日数と費用はアメリカ国内便と大差はない

まずは「物流のハードルが下がった理由として、北村氏は以下の3つを挙げる。

・ コロナ以降のクーリエサービスの拡大
・ eBay独自配送サービスSpeedPAK開始
・ 物価高による配送料金の平均化

コロナ禍以降のクーリエサービスの拡大により、海外へ商品を発送するハードルは格段に下がったと言える。アメリカ国内で西海岸から東海岸に送るよりも、日本からアメリカに送ったほうが早く到着するといったケースもある。「(日本からアメリカに)早ければ2日で到着し、日本の国内配送と同じ感覚で発送することができます。買い手目線でもアメリカ国内より日本から買ったほうが早く届くので選ばれやすくなっているのも事実です」(北村氏)。

また、イーベイでは「SpeedPAK」というサービスを開始しており、個人でもコンビニから簡単に海外へ配送することが可能だ。配送までの日数がサイト内のSEOに関わっているという話しもあり、すばやく海外発送できることでセラーはメリットを得られる。

※参考記事:コンビニが海外配送の窓口に! 越境ECの“壁”を突破する新配送サービス「eBay SpeedPAK Economy」始動

ここでセラーが不安に感じるのは配送料だ。海外へ発送すると配送料が高くなるのではと思うかもしれないが、商品価格によっては販売価格に含ませたり、送料を別に設定したりすることで解決できる。例えばアメリカでは近年の物価高により、日本の60サイズくらいの荷物を西海岸から東海岸へ航空便を使って送る場合には20~30ドルかかり、さらに翌日配送サービスを利用すると50ドル近くかかる。つまり、日本からの送料と大差のない状況となっているのだ。

「言語のハードル」は越境ECを成功させる鍵となる

続いて北村氏は言語のハードルについて、現在では下記のようなツールを活用することでほとんど認識されていない程度のハードルになったと解説した。

・ AI翻訳ツールの拡大
・ 外部チャットツール

近年はAIを使ったサービスが発達し、多くの言語を正しく日本語に訳すことができ、日本語を他言語で表示させることができる。越境ECではメールやチャットで買い手とやり取りをするケースが多く、その際の言語の壁はなくなったと言えるだろう。

また、チャットツールもさまざまなサービスが登場し、よりシームレスにコミュニケーションできる環境となった。越境ECでは、買い手と売り手のやり取りは販売につながるかどうかにおいて大きな役割を担っている。海外の購入者は売り手とのコミュニケーションを通じて、不安の解消や買い物を楽しむ気持ちを満たしている。「買い手とのやり取りが越境EC成功の鍵となるので、言語のハードルを越えることは強みになります」(北村氏)。

返品しやすい環境にして販売数の増加を実現

越境ECを始めたもののうまくいかない事業者が強く感じているのは「文化のハードル」だと北村氏は指摘する。中でも日本と海外で異なるのが「返品文化への対応」だ。

・ 返品文化への対応

日本では返品を“申し訳ないこと”と考える買い手が多く、社会的にも推奨されない文化となっている。しかし、海外では真逆であり、ECでもリアル店舗でも返品を受け入れる文化が醸成されているのだ。

「場合によっては店舗が返品にかかる送料を負担するケースもあります。アメリカでは返品を受け付けることで購入のハードルを下げています。それによって販売量を増やすといったマーケティング手法が主流となりました。返品の可否は、購入の意思決定に大きく影響しています」(北村氏)。

越境ECに慣れていないと返品に嫌気がさしてしまうかもしれないが、返品による売上額の減少を差し引いても販売額のほうが大きければ利益となる。「『返品は文化の違い』であると理解して次へ進むことで、文化のハードルを越えることができると考えています」(北村氏)。

越境ECは計り知れない魅力であふれている

続いて北村氏は越境ECを始めることで得られる利点を「数の利」「税の利」「知の利」という3つの視点で解説した。

「数の利」とは、越境ECによってリーチできる人の数が圧倒的に増えることを意味する。日本の人口は約1.25億人だが、海外まで販路を広げると北米の約3.7億人、ヨーロッパの約6億人、中東・インド・アジアの約46億人にリーチできる。「人口の差だけでも売上が数倍変わってくることも考えられます。世界中でバイヤーを獲得し、マーケットを拡大できるのは越境ECの魅力です」(北村氏)。

特に日本はインバウンド需要が高まっており、2024年度の予想訪日外国人旅行者数はピークを上回る3,310万人だ。SNSの普及や慢性的な円安によって日本製品のプレゼンスは高まっている。

「税の利」としては、消費税における優位性がある。国外販売には消費税が課されないため、仕入にかかった消費税の還付の権利が得られるのだ。例えば、国内の売上が1億円で仕入に4000万円かかったとすると、売上で受け取った消費税1000万円から仕入にかかった400万円の消費税を差し引いて600万円の納税となる。しかし、国外販売では売上にかかる消費税がないため、仕入にかかった消費税400万円の還付を受けられるというわけだ。

※画像提供:イーベイ・ジャパン株式会社/「ECのミカタ 越境ECカンファレンス2024」登壇資料より

北村氏は「知の利」として、越境ECが海外進出のための市場調査になることを挙げた。eBayでは1.32億人のアクティブバイヤー数を抱えているため、自社の商品需要があるかどうかを調べられる。実際にeBayをきっかけに商品の認知をとり、日本の店舗に訪れる海外客もいるそうだ。

「越境ECにはいくつかの課題がありますが、それらを一つひとつ乗り越えることで、多くの魅力とともに新たなビジネスチャンスが広がります。今がそのチャンスをつかむ絶好のタイミングです」(北村氏)。

越境ECにはハードルもあるが、“利”も大きい。自社のビジネスを拡大するため、今がスタートする好機であることを伝えるセミナーとなった。

※画像提供:イーベイ・ジャパン株式会社/「ECのミカタ 越境ECカンファレンス2024」登壇資料より

北村 直樹(きたむら なおき)
イーベイ・ジャパン株式会社 カテゴリーマネジメント部 部長
米国から帰国後ブランド品を輸入販売するファッションECの会社を立ち上げる。その後ECコンサルティングの業務を経て、イーベイ・ジャパンへ参画。


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