グミッツェルで話題沸騰のカンロが取り組む、Shopifyでのデータ活用 【カンロ セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

10月31日、ECのミカタが開催した「Shopify活用最前線カンファレンス 2024」にカンロ株式会社 デジタルコマース事業本部 デジタル事業開発室 兼 デジタルコマース統括室 課長の武井優氏(※1)が登壇。創業100年を超える老舗企業がコロナ禍を機にECへ乗り出した経緯と、Shopifyデータ活用の事例を語った。

※1:武井氏の所属・役職はカンファレンス開催当時。現在はマーケティング本部 CX推進部 チーフマネージャー

コロナ禍で実店舗が休業、ECへの急転換

MIKATA株式会社 ECのミカタ事業本部 情報システム開発部 リーダー 吉見紳太朗(以下、ECのミカタ 吉見) まずはカンロ株式会社様のEC事業の沿革を教えてください。

カンロ株式会社 デジタルコマース事業本部 デジタル事業開発室 兼 デジタルコマース統括室 課長 武井優(以下、カンロ 武井) 当社は創業112年目になり、社名でもある「カンロ飴」や「ピュレグミ」などの商品を一般流通をメインに販売しています。直営店「ヒトツブカンロ」やオンラインショップ機能を含めたオウンドメディア「Kanro POCKeT(カンロポケット)」も運営しており、「Kanro POCKeT」は、EC機能以外にも会社全体の商品紹介やブランディング、問い合わせ窓口も兼ねています。

EC事業自体は以前から細々と運営していましたが、2018年に一度サービスを終了しました。しかし、コロナ禍でヒトツブカンロが休まざるを得ない場面が出てきたため、急きょECサイトを立ち上げました。立ち上げ当初はカートシステムも導入せず、銀行振込で対応するかたちでした。しかしお客様には好評で、ECを事業としてしっかりとプロジェクト化し上位レイヤーのデジタルマーケティング全体を強化しています。Shopifyを導入したのは、ヒトツブカンロのサイトが最初です。

ECのミカタ 吉見 Shopifyにおけるデータを活用し始めたのは、いつ頃からだったのでしょう。

カンロ 武井 「グミッツェル」の人気が高まっていましたが、当時は購入にあたって会員の必須化ができておらず、データを有効に活用できていませんでした。弊社ではEC、デジタルマーケティングのミッションを“カンロのファン作り”に置いていますので、「ECも伸ばしつつ店頭でも選ばれる」ブランディングにはお客様の声、つまりデータが必要です。Shopifyはデータを活用しやすいと知り、以降Shopifyの本格運用に乗り出しました。

データをファン作りに活用

ECのミカタ 吉見 カンロ様では、どのように顧客情報を整理されていますか?

カンロ 武井 まず、Shopifyで運用している領域は、フルファネルに対応している「Kanro POCKeT」です。「Kanro POCKeT」での顧客行動をCDP(Cusomer Data Platform)に送り、カンロへの関与度、一般流通での嗜好などを取得してファン度を測っています。従来はCDPも別サービスを利用していましたが、Shopifyは拡張性が高いので、Shopifyにデータを持たせる運用をしたいと考えるようになりました。

現在は、お客様が会員登録する際に回答していただくアンケートと顧客情報をセットで管理しているので、情報を掛け合わせてファン度のランクを計測、分析結果に応じた施策を打てるようになってきています。施策は「未ファン」のファネルにいるお客様を「ファン」のファネルに動かすことを目的のひとつとしています。その効果測定を履歴から行おうと、現在取り組みを進めているところです。

画像提供:カンロ株式会社(カンファレンス登壇資料より)

ECのミカタ 吉見 具体的な施策の事例を教えていただけますか。

カンロ 武井 例えば、定期購入サービスの「ポケサブ!」には、「グミッツェル」と月替わり商品をセットにした商品があります(※2)。「ポケサブ!」自体はアプリ視点で作ったサービスのため、お世辞にもうまくいったとは言えないのですが、その商品である「グミッツェル」の成功事例を紹介します。

12回以上購買を継続されているお客様にアンケートをとったところ、「なかなか買えない『グミッツェル』は自分へのごほうび」といった声をいただけました。実際に伺ったメッセージを商品の訴求に使ったところ、継続率が88%へと上昇。お客様の生の声を聞けたことで、お客様目線の施策を動かすことができました。また、顧客情報の解像度が高まることで、社内でもサービスを論理的に考えられるようになりました。

アンケートの実施自体はまだShopifyに移行できていませんが、コミュニティーサイトと同一のIDで利用できるようにして、お客様の声をさらに集めようとしています。現在プレオープンのサイトで、少しずつ客層が見えてきているところです。

※2:Kanro POCKeTの定期便サービス「ポケサブ!」は2024年6月にサービスを終了。現在は「グミッツェル」と月替わりのヒトツブカンロ商品が毎月1回届く定期便サービス「グミッツェル for me」が提供されている。画像提供:カンロ株式会社(カンファレンス登壇資料より)

画像提供:カンロ株式会社(カンファレンス登壇資料より)

ECのミカタ 吉見 月商アップに重要だったポイントを教えてください。

カンロ 武井 「グミッツェル」の“引き”が強かったことは事実ですが、Shopifyの機能を用いて分析が進むこと、社内の体制を変革して他部署との連携を強化したことでShopifyの拡張性を活かせていることが大きいです。

サイトのビジュアル改善はもちろん、顧客接点を持ち続けられるため、お客様の意見を施策にフィードバックする環境が整ってPDCAが回しやくなりました。

Shopifyと「Kanro POCKeT」をお客様とつながる中心に

ECのミカタ 吉見 カンロ様の今後の展望を教えてください。

カンロ 武井 Shopifyと「Kanro POCKeT」を、お客様とつながる場所の中心にしようと考えています。具体的にはShopify ID統合アプリである「App Unity IDP」を導入し、お客様とのデジタル・リアルの接点を「Kanro POCKeT」に集約しようとしています。

今後Shopifyに期待している点としては、データ自体はたまってきているので、売上やお客様とのコミュニケーションを向上するためにAIを活用したいです。人力で検討するには限界がありますし、ShopifyもAI活用の開発には注力していると思います。

ECのミカタ 吉見 Shopifyの導入を検討している事業者様に向けて、アドバイスをお願いします。

カンロ 武井 拡張機能として導入できるアプリの充実で、拡張性は2018年頃に比べるとかなり進歩しています。Shopifyは会社の独自性を出すのに長けたEC基盤ではないとも感じるので、システム選定の際には検討してほしいのですが、とはいえ、カンロはShopifyを選んで良かったと思っています。スクラッチ制作すると数百万円かかる機能が、Shopifyのアプリであればスピーディーかつ手軽に導入でき、開発に役立っています。

武井優(たけい ゆう)
カンロ株式会社 デジタルコマース事業本部 デジタル事業開発室 兼 デジタルコマース統括室 課長(マーケティング本部 CX推進部 チーフマネージャー ※1) 2010年カンロ株式会社入社。情報システム、マーケティング、EC、広報を経験する中で、各部門におけるデジタル分野を担当。2021年はデジタルマーケティングを推進する全社プロジェクトのリーダーを務めたのち、デジタルコマース事業本部にて、戦略立案・EC専用商品の開発・サイト運用を担当。デジタルマーケティング業務全般を担当するチームのマネジメント担当を経て、現在はマーケティング本部 CX推進部 チーフマネージャーを務める


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