
2024年から見据える、営業組織のDXを目指す2025年BtoB-EC戦略【ネットショップ支援室 セミナーレポート】
エンドユーザーが使いやすいECサイトを設けている会社でも、取引先とのやりとりは未だに電話やFAXで行っている。そんな事業者は意外と多いかもしれない。受発注を手作業で行うロスについて、真剣に考えてみたことはあるだろうか。
2024年12月に行われたミカタカンファレンスには、企業間受発注取引の電子化支援ツール「楽楽B2B」を展開している「ネットショップ支援室」が登壇。同社パートナーセールスの⼭本航氏が、BtoB ECを早急に始めた方がいい理由について語った。取引先とのやりとりにウェブ化を取り入れ、作業の効率化を促進したい企業だけでなく、「社員が事務に追われて新しいアイデアがなかなか出ない」と悩む事業者も、ぜひご一読いただきたい。
BtoB ECで業務を効率化し、さらに販路の拡大へ
山本氏は、企業間取引における電子化を「2025年中に取り組むことをおすすめします」と述べ、その理由として市場ニーズの変化を挙げ、ネットショップ支援室への問い合わせ内容の変化をデータとして示した。
画像提供:株式会社ネットショップ支援室(カンファレンス登壇資料より)
2023年の問い合わせ層は中小メーカーやコンサルタント会社が多かったが、2024年はそれらに加えて販売システム会社やディストリビューター(※)が増えてきている。「BtoB EC」というワードの検索ボリュームもまた、月単位で50~100件程度増えており、市場の興味関心は確実に高まってきている。
この変化から見えることとして、山本氏は「市場全体の興味関心が上がってきており、中小だけでなく大手企業様の関心も増えてきています。大手企業様は地方に支社を持っているので、情報が伝わってこなかったかもしれない地方の企業様も、情報が入ってくる経路ができている状況になっていると考えております」と語った。
なお、顧客からの問い合わせを分析したところ、2024年は販路拡大についての問い合わせが増えたという。この背景として山本氏は「システムを業務効率化のために導入する段階を経て、次のステップに行きたいという企業様が増えてきていることが背景にある」と指摘。競争激化の中、BtoB ECを販路拡大のために利用したいというニーズが高まってきているのだ。
※サービスを仕入れ再販する事業者(例:リコー、FBJ、キヤノン等)
BtoB市場の巨大なポテンシャル
続いて山本氏は、BtoB ECを早期導入することによるメリットを語った。経済産業省のデータによれば、2023年のBtoC市場規模は約14兆円に対し、BtoB市場規模は約465兆円と、実に30倍以上の規模を誇る。EC化率の伸び率もBtoBがBtoCを大きく上回っており、市場の成長性を裏付けている。
画像提供:株式会社ネットショップ支援室(カンファレンス登壇資料より)
それにもかかわらず、BtoBのECサイトを目にする機会は少ない。これは「EC化率40%」という数字に大手企業同士の取引で使われる企業間ウェブ受発注システムも含まれているためだという。「つまり、注文する仕組みに触れる習慣はあっても、一般的な通販サイトのようなものはまだまだ少ない状況です。市場は形成されつつあるものの、コンテンツ提供者、参入者はまだ少ないと言えます」と山本氏は指摘した。
さらに製造業、流通業では近い将来、人材不足が加速すると言われている。人材を増やすのが難しければ、業務効率化システムを導入し、一人当たりの生産性を高めるしかない。先行して生産性の高い環境を構築しておくことで人材不足が解消され、また生産性の高い企業であることをアピールすれば人材市場における競合優位性にも繋がると、山本氏は強調した。
BtoB ECの導入事例にみる成功のヒント
セミナーでは次に、BtoB EC導入事例の一つとして、コーヒー豆の卸売業をしているサザコーヒーロースターの例が挙げられた。サザコーヒーではピーク時に月3000件の受注処理が全て手作業だったが、BtoB ECの導入後、手作業がなくなり1日4時間の業務効率化に成功した。結果、営業が本来の業務に集中でき、昨年と対比して131.8%の売上向上につながったという。
また、理化学機器の製造販売をしているマイクロトラック・ベルへの聞き取りでは、「受注業務のマニュアル処理に追われていた頃は、あるものを売るという姿勢だった。しかしEC化でアイデアを練る時間が生まれ、ECを軸にした様々な新しい発想が出てくるようになった」という声が聞かれた。
なお、ネットショップ支援室が調査会社に依頼して行ったアンケート調査によれば、ウェブ化した企業の約4割が売上を10%伸ばし、約5割が取引先を増加させている。導入の効果は、顕著に見られていると言っていいだろう。
画像提供:株式会社ネットショップ支援室(カンファレンス登壇資料より)
BtoB ECによって販路拡大の可能性も
本セミナーでは最後に、BtoB ECによって業務効率化はもとより販路拡大の可能性が広がることが改めて強調された。「市場のニーズが変化しており、企業側もウェブで注文する習慣ができているものの、その受け皿となるコンテンツが不足している状況です。そして、売り手企業側も業務効率化から新規顧客獲得、販路拡大へと意識が変化しており、BtoB ECへの関心が高まっています。BtoCでノウハウを積んでいれば、BtoB ECでも優位な立場で参入できる」と山本氏はまとめ、本セミナーを閉じた。
インテグレーテッドマーケティング部 アライアンスユニット
2022年にネットショップ支援室に入社。入社当初はBtoCとBtoBの領域でカスタマーサクセスとしてクライアントと一番近い立場で運営支援に従事。フロントからバックの業務まで提案・サポートできる知識を活かし、2023年からはD2Cリピートカート『楽楽リピ―ト』の営業として事業者の課題解決に注力した。現在ではアライアンス担当としても従事をはじめ、現場目線、運用者目線、代理店目線と広い視野を持ったソリューション提案を行っている。