「真贋保証サービス」を日本の全セラーに無料で開放 eBayが示すグローバルプラットフォームとしての責任
イーベイ・ジャパン株式会社は2023年末にアジアで初となる真贋鑑定・配送サービス日本鑑定センターを開設し、一部セラー向けに「真贋保証サービス」を展開してきたが、2025年4月からその対象を日本の全セラーに拡大。カテゴリーもこれまでのハンドバッグに、ジュエリーと腕時計が加わり、「eBay」を通じて米国に販売する日本のセラー(売り手)にとって、より安全な取引環境が整ったと言えるだろう。
バイヤー(買い手)とセラーの双方に大きなメリットをもたらす今回の「真贋保証サービス」の拡大について、日本鑑定センターを牽引するイーベイ・ジャパン株式会社 ジャパンアカウントマネジメント部 ストラテジックアカウントマネジメント課 マネージャー 北爪紀子氏に聞いた。
真贋保証サービスを日本の全セラーへ無料で開放
──2023年12月から日本で提供しているeBayの「真贋保証サービス」について、あらためてその概要をお聞かせください。
真贋保証サービスは、対象の商品を真贋鑑定・配送サービス日本鑑定センター(以下、日本鑑定センター)で鑑定し、認証された商品のみを米国のバイヤーに届けるeBay独自のサービスです。セラーは無料で利用でき、商品情報を正しく記載したうえで通常どおりに出品いただければ、条件を満たす商品には自動的に真贋保証マーク(「Authenticity Guarantee」というバッジ)がストア上に表示されます。
ストア上に表示される真贋保証マーク(画像提供:イーベイ・ジャパン株式会社)
──具体的には、どのような流れで行われるのでしょうか。
まず、セラーは正確に商品情報を記載し、eBayに商品を出品していただきます。すると、真贋サービスの対象となる商品ページに「Authenticity Guarantee」というバッジが米国のバイヤーだけに表示されます。
このバッジが付いている商品が売れた場合に、商品を日本鑑定センターに国内配送で送っていただき(※1)、到着後通常1営業日で真贋鑑定を行います。鑑定を通過すればDHLで米国のバイヤーに向けて出荷され、検査を通らなかった場合はセラーに返還されます。
※1:日本鑑定センターへの配送は佐川急便、ヤマト運輸、日本郵便のいずれかを利用。ただしジュエリー真贋保証サービスは日本郵便が利用できない。詳細は公式サイトを参照
真贋鑑定検査と配送の流れ。商品の真贋性が確認できない場合、または商品が商品ページの説明と異なる場合は、商品はセラーに返却され、バイヤーに返金される
──今回、真贋保証サービス」対象が拡大されました。新たに加わったカテゴリーなどについて教えてください。
今までは一部のセラーが対象で、カテゴリーはハンドバッグのみでした。2025年4月1日からは、無料であることは変わらず日本の全セラーが対象となり、カテゴリーにジュエリーと腕時計が追加されました。
──サービス拡大の背景として、日本から販売する商品に対する需要の高まりといったこともあるのでしょうか。
確かに近年は資産価値の高まりや入手の困難さから、ハンドバッグ・ジュエリー・腕時計の価格が高騰し、実際の売上も伸びています。しかし、「Used in Japan」という言葉で日本からの商品が信頼を集めるようになってきた中でも、eBay USインサイトチームの調査によると、米国ではEUよりも日本の購買検討率のほうが低い状況です。(※2)
これは他のアジア諸国の評判に日本も引っ張られている側面があるためだと思います。だからこそ、日本で真贋保証サービスを拡充し、バイヤーの信頼を得ることが欠かせません。その結果、日本のセラーの商品がより検討されるようになり、売上につながると考えています。
※2:eBay USインサイトチームが実施した調査結果によると、越境EC取引における日本への購買に対する期待度はヨーロッパと同等に高いものの、「購買の検討率」はEUが74%だったのに対して日本は61%だった(米国在住者に対し、過去12カ月以内に外国<越境EC>にて高級ファッションアイテムを購入した顧客からのデータ)
画像提供:イーベイ・ジャパン株式会社
真贋保証サービスはバイヤーとセラー双方に多くのメリットがある
──真贋保証サービスはバイヤーとセラーの双方にとって、さまざまなメリットがあると思います。まずはバイヤーのメリットからお聞かせください。
バイヤーのメリットは、「確実に本物が手に入ること」です。日本のセラーからの偽物の出品は少ないものの、グローバルで見れば本物かどうか不安な場合もあるため、米国のバイヤーにとって「Authenticity Guarantee」の有無は重要です。
また、商品自体の真贋査定に加えて、eBay独自の鑑定もあります。例えば、セラーが商品情報に記載していなかった傷があった場合、バイヤーは「思っていた商品と違う」という理由で返品することができます。その際も、返品された商品は再度eBayの鑑定センターを通るので、バイヤーの主張が正しいかどうかが確認されます。これはバイヤー側が商品を傷つけてしまい、それを理由に返品することを防ぐ効果もあるので、セラーにとってもメリットと言えますね。
同じように、バイヤーが受け取った後に商品をすり替えて返品しようとする行為を鑑定センターで防止できることも、セラーが安心して出品できるポイントです。
──バイヤーもセラーも安心して取引できるようになるのは非常に大きいですね。その他のセラー側のメリットもお聞かせください。
日本鑑定センターへの国内配送だけで済むので、海外発送の手間が省けます。ジュエリーや腕時計といった高額商品を海外に送る時は傷がつかないように梱包しなくてはいけませんが、「真贋サービス」では、鑑定後に専用のパッケージで丁寧に梱包して発送します。このパッケージは、(配送時のトラブルなどを考慮して)高額品とわからないようロゴ等が全て内側に印字されています。
画像提供:イーベイ・ジャパン株式会社
また、ワシントン条約に触れるような商品を送ってしまった場合も、日本鑑定センターで止めることが可能です。例えば、時計本体は問題なくてもベルトがクロコダイル素材だった場合など、ワシントン条約に違反する商品は最悪の場合米国税関で処分されてしまいますが、日本鑑定センターで発見された場合は国内のセラーに返送できます。
イーベイ・ジャパン株式会社 ジャパンアカウントマネジメント部 ストラテジックアカウントマネジメント課 マネージャー 北爪紀子氏
ユーザーの安心感が高まり、ハンドバッグの取引額は前年同期比約1.5倍に
──日本鑑定センターでは、実際にどれほどの商品を扱っているのでしょう。
4月から対象が拡大されたことで、真贋鑑定をしている商品数は増加しています。現在は毎日100点から200点ほどの商品が日本鑑定センターに届いています。
──ジュエリーと腕時計が加わったことで、体制や仕組みで工夫されている点をお聞かせください。
それぞれのカテゴリーが追加されたことで、その領域に詳しい専門の鑑定士が真贋鑑定を実施しています。特にジュエリーに関しては、GIA®(米国宝石学会)という国際的に有名な宝石鑑定機関によって真贋鑑定が行われています
また、私たちは基本的に人の手で真贋を行っています。稀に真贋が難しい場合もあるのですが、その際は豊富なeBayのデータベースと照合したり、他国のセンターの専門家に相談したりすることもあります。このように、eBay全体で真贋の質を高める取り組みを行っています。
──グローバルで取引数が多いほど鑑定精度が上がる、eBayならではの仕組みと言えますね。では真贋保証サービスの効果や、実際にサービスを利用しているセラーの反応をお聞かせください。
取引額の面では、ハンドバッグのカテゴリーが2024年の第1四半期と比べて、今年は約1.5倍の成長を記録しています。
また、セラー様からは「真贋保証サービスがあることで安心して商品を出品できる」という声をいただいています。このサービスを開始したことで、バイヤーもセラーも安心感が高まっていることは大きな効果です。
ニーズに応じて今後もサービスを拡充してきたい
──あらためて真贋保証サービスに対する思いをお聞かせください。
今回のサービス拡充も含め、真贋保証サービスはeBayのグローバルプラットフォームとしての信頼を高める一環として実施しているものです。実際にセラーからも「真贋サービスがあれば高額な商品を出品したいけれど、ないと怖くて出品しづらい」という声がありました。また、真贋鑑定の対象となることで、セラーは商品ページにより詳しく正確な情報を記載するようになるでしょう。今回、日本の全セラーが対象となったことで、セラーもバイヤーも安心感が高まり、eBay全体が活性化していくことを期待しています。
──今後も、対象カテゴリーを増やしていく予定はあるのでしょうか。
日本では現在、ジュエリー、ハンドバッグ、腕時計が対象ですが、グローバルではストリートウェア、スニーカー、トレーディングカードなども対象となっています。日本でも今後、これらのカテゴリーにも拡大していきたいと考えています。
eBayでは各地域の特色やニーズに合わせて、対象カテゴリーのサービスを強化しています。今後も市場のニーズに応じて、セラーもバイヤーも安心して取引できるプラットフォームを目指していきます。