自律型AIがECの購買体験を塗り替える Fanplayrの「Verada AI」が実現する、データ主導の行動インテリジェンス
変化の激しいEC業界では、AIの活用が購買体験やマーケティング戦略を大きく塗り替えつつある。なかでも、消費者の代わりに商品を検索・比較し、購入まで導く「自律型AI（Agentic AI）」の登場は、ブランドの在り方そのものを変えようとしている。特に、行動データをもとに購買体験をリアルタイムで最適化するプラットフォーム「Fanplayr（ファンプレイヤー）」のAI基盤「Verada AI」は、コンバージョン率の向上や顧客ロイヤルティの強化を支える中核として重要な役割を担っている。AIが牽引する新たなコマースの潮流とは何か――。米Fanplayr社のデレク・アデルマン氏、Fanplayr Japan 代表の上田英明氏に話を聞いた。
自律型AIがもたらすパラダイムシフト
――自律型AIの登場が、EC業界にどのような影響を与えているとお考えですか。
Fanplayr Vice President デレク・アデルマン氏（以下、デレク） 近年、MetaやGoogle、TikTokなど、主要な広告プラットフォームでの顧客獲得コストが急上昇しています。その一方で、消費者の購買行動は多様化し、商品を知る経路も複雑化しているのが現状です。
こうした状況のなか注目されているのが、ユーザーの代わりに商品を検索・比較し、最適な購入を支援するAgentic AI（自律型AI）です。OpenAIやGoogle、Anthropicなどが開発を進めており、AIが消費者の代わりに購買判断を行う時代は、すぐそこまで来ています。
Fanplayr Japan 代表 上田英明氏（以下、上田） AIが決済まで担うようになると、従来のようにオンラインストアを経由せず取引が完結するケースも増えていくでしょう。これは、2000年代初頭にAmazonが登場し、購買の主流が実店舗からオンラインに移ったときの変化に似ています。
現在、Amazonは米国の小売市場（約5.29兆ドル）の8％を占めていますが、自律型AIの普及もそれに匹敵する規模の変革をもたらすかもしれません。AIが購買を主導する時代では、ブランドがどこまで顧客体験やプロセスを自ら設計・管理できるかが勝負の分かれ目になります。
Fanplayr Vice President デレク・アデルマン（Derek Adelman）氏
――そのような時代に、EC事業者がまず取り組むべきことは何でしょうか。
デレク AIが商品検索から購入まで担うようになると、「どんなデータをどう活用するか」が最も重要になります。これまでのように広告費を投じてトラフィックを集めるだけでは、AI主導の購買に対応できません。自社サイトで得られる行動データや購買データを整備し、AIが理解できる形に整理しておくことが第一歩です。さらに、商品ページの情報をAIにも読み取りやすく構築することで、検索や推薦の際に自社商品が選ばれやすくなります。
上田 加えて、ブランド独自の体験価値をどう維持・発信していくかも大切です。AIが購買判断を下す時代だからこそ、ストーリーや世界観で「このブランドを選びたい」と思わせる力が問われます。また、チャットや音声などの対話型インターフェースを整備し、AIと人の橋渡しをすることも重要です。最終的にはデータを自ら保有し、AIと連携できる体制を構築しているブランドが、次の時代の主役になるでしょう。
行動データをもとにした精緻なパーソナライズ
――Verada AIは、どのような発想から生まれたのですか。
デレク 私たちは、ファーストパーティの行動データこそがデジタルビジネスにおける最も価値ある資産だと考えています。これまでもそのデータをリアルタイムに活用し、ブランドが顧客理解を深められるよう支援してきましたが、そこに機械学習を組み合わせることで、より正確な提案や予測ができると気づいたのです。
この発想から誕生したのが、独自のAIエンジン「Verada AI」です。企業が自社データを活かしながら顧客関係を深化させ、変化の激しい市場環境でも関連性を維持できるよう設計されています。
――他社のAI基盤と比べたときの優位性はどこにありますか。
上田 最大の特徴は、「行動データ」を学習の軸にしている点です。一般的なAIは汎用的な公開データや合成データをもとに学習しますが、Verada AIは実際の購買データや閲覧データなど、一次情報に基づいて構築されています。そのため、顧客が「何をしたか」だけでなく「なぜそう行動したのか」まで深く理解できるのが特長です。
さらにFanplayrのパーソナライズ機能と連携し、得られた洞察をすぐにマーケティング施策に反映できます。つまりVerada AIは、行動データから予測と販売施策をつなぎ、透明性と即応性を両立させたAI基盤なのです。
Fanplayr Japan 代表の上田英明氏
――Verada AIの導入で、Fanplayrはどのように変化しましたか。
デレク Verada AIにより、Fanplayrは単なる行動分析ツールから「行動インテリジェンス・エンジン」へと進化しました。ユーザーの行動を観察・分類するだけでなく、その意図を読み取り、次の行動を予測して最適なアクションを即座に実行できるようになったのです。
これにより、商品の自動並べ替えやニーズに即した提案など、精度の高いパーソナライズが可能になりました。Fanplayrはユーザー行動を学習・最適化する“進化型プラットフォーム”として機能し、ブランドは高精度な意思決定で高いCVRと持続的な成長を実現しています。
シンプルでスマートなECの未来へ
――Fanplayrの導入実績を教えてください。
上田 世界では約130社がFanplayrを採用しています。たとえばSamsungではクリック率が17％、購入転換率が3％向上し、ROASは年間で2500％まで改善しました。イタリアの化粧品ブランド「KIKO Milano」では、Webプッシュ通知と行動分析で購入導線を最適化し、カート回復率3.3％を達成しています。また、ファッションサイト「Select」では、データに基づくポップアップやバナーの最適化でコンバージョン率が251％増、売上124％増という成果が出ています。
――御社はFanplayrを通じて、どのようなECの未来を目指しているのでしょうか。
デレク 私たちは、デジタルコマースをより直感的でシームレスなものにしたいと考えています。ブランドと顧客のすべての接点が行動を理解しながら自然につながる、そんな世界を目指しています。
上田 FanplayrとVerada AIは、事業者様が自社のデータを自由に活用できる環境を提供します。複雑なAI技術を扱いやすくすることで、マーケターが創造や戦略に集中できるようにする。AIが煩雑さを取り除き、ブランドと顧客の関係をより豊かにしていく――。それが私たちのビジョンです。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
上田 AIによる購買や自律型エージェントの登場は、企業と顧客の関係を大きく変えていくでしょう。ただし、日本の消費者にとっては「人間らしい対応」や「信頼関係」が何よりも大切です。だからこそ、企業はAIを“人の代わり”として使うのではなく、“人の理解を深め、サービスを高めるための支援ツール”として活用することが重要だと考えています。
FanplayrとVerada AIは、そうした方向性に対応できるよう設計された、安全で柔軟なソリューションです。AIの進化を恐れるのではなく、自社らしい活かし方を模索しながらまずは一歩を踏み出すこと――その行動こそが、未来を切り拓く鍵になるはずです。
デレク 今後は、Fanplayrを行動AIプラットフォームのリーディングサービスへ育てていきます。「商品発見」「自動化」「会話型コマース」の3つの軸でVerada AIを拡張し、AIが文脈を理解して最適な商品を提案し、自然な会話で顧客とつながる世界を実現していきます。このVerada AIの3つの軸の中から、第1弾として「商品発見」のVerada AI-TAGをリリースする予定です。
