顧客の不安を解消したTENTIAL「BAKUNE」の「生成AI×CS」改革

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ECのミカタ編集部

株式会社TENTIAL ビジネス本部カスタマーサポート部 部長 谷合北斗氏

「365日、すべての人にコンディショニングを」──。

リカバリーウェア「BAKUNE」で知られるウェルネスブランド、TENTIAL。着るだけで疲労回復を促すパジャマ「BAKUNE」や、血行促進をサポートするジャケット「MIGARU」など、科学的根拠に基づいた製品力で急成長する同社は「生成AI×CS」による徹底した顧客体験(CX)の磨き込みを行っている。

本稿では、同社 カスタマーサポート部の谷合北斗氏が、AIを活用したCS改革と、人だからこそ提供できる価値との両立を目指す取り組みを解説する。

※本記事は2025年10月開催「ECのミカタ カンファレンス」で行われた谷合氏とBodygram Japan株式会社 設樂勝大氏とのセッションをもとに再構成しています

人だから提供できる価値と「月2000時間」を代替するAI

TENTIALは、睡眠・回復を軸にしたコンディショニング製品を展開するヘルスケア企業だ。着るだけで疲労をリカバリーするパジャマ「BAKUNE」や、血行促進により筋肉のコリや疲労を軽減するジャケット「MIGARU」など、機能性とエビデンスを重視した商品群を展開している。

「土日だけでなく、平日も含めた7日間ずっと元気に生活できる。そんなコンディショニングを意識してもらえる社会を作っていきたい」と谷合氏が語るように、同社は単なる物販にとどまらず、健康課題を解決するインフラとしてのブランドを目指している。

同社CS部門の方針は明確だ。「生成AIと人、それぞれの強みを最大化する」ことにある。

「既存のカスタマーサポート業務の多くは、いずれ生成AIで対応可能になります。しかし、人が不要になるわけではありません。『人だからこそ提供できる価値あるサービス』にリソースを集中させるためにも、AI活用が不可欠なのです」(谷合氏)

現在、CS部門では月2000時間相当の業務を生成AIが代替している。特筆すべきは、社内で使用するAIツールはエンジニアではなくCS部のメンバー自身が内製している点だ(※)。現場の課題感を持つメンバーが自らAIを実装することで、実効性の高いDXを実現している。

※対外的な機能はBodygramなど外部SaaSと連携

AIサイズ推奨機能で「CVR2.3倍・返品ゼロ」を実現

アパレルECにおいて、サイズ選びの失敗による「返品・交換」は利益を圧迫する大きな課題だ。特にTENTIALの主力商品「BAKUNE」は上下セットで約3万円の高価格帯であり、ギフト需要も高い。

「親に贈りたいがサイズがわからない」という問い合わせが多く、また医療機器区分に該当するため、開封後の返品商品は廃棄せざるを得ないという事情もあった。

この課題に対し、TENTIALは身体計測テクノロジー「Bodygram」のAI技術を活用した「サイズ推奨機能」を導入。身長・体重・性別・年齢を入力するだけで、最適なサイズを提示する仕組みを構築した。

その成果は劇的だった。

■ AIサイズ推奨機能を利用したユーザーのCVR(購入率):非利用者の2.3倍
■ カメラを用いたAI採寸を行ったユーザー:返品ゼロ、交換わずか2件

画像提供:株式会社TENTIAL(カンファレンス登壇資料より)

「贈る相手の写真があれば、高精度なサイズ判定が可能です。ギフトで『サイズが合わない』という失敗は避けたいもの。もらったその日から快適に使えることが、ギフト体験の向上につながります」(谷合氏)

単なる業務効率化ではなく、顧客の購買体験そのものを向上させた好例といえる。

「知りたい瞬間に、知りたい角度で」データを届ける

CS部門に集まる「顧客の声(VOC)」の活用においても、同社はAIで進化を遂げている。特徴的なのは、「大分類→中分類→小分類」と段階的にAIを適用する多層構造のタグ付けだ。

まず大分類で主旨を捉え、段階的に精緻化することで、1件のVOCに対して「分析可能な意味のあるタグ」を自動付与する。これにより、定性的な声が定量データとして構造化される。

多層的なタグ付けにより、定性データを定量データへ変換する
画像提供:株式会社TENTIAL(カンファレンス登壇資料より)

さらに、商品カテゴリ(パジャマ、サンダルなど)やキャンペーンごとに、事業部が欲しい切り口(出力設計)を柔軟に変更できる点も強みだ。この自動化により、分析業務だけで月100時間以上の効率化を実現した。

「CS部門だけが分析結果を知っているのではなく、誰もが必要なタイミングでデータにアクセスできる『データの民主化』を目指しています。現場のメンバーがプロンプトを内製しているからこそ、知りたい角度でデータを取り出せるのです」(谷合氏)

その先にあるのは、「24時間365日、顧客が好きなチャネルで即座に解決できる完全自動化サービス」だという。

「顧客自身も『正しい質問』ができるとは限りません。オペレーターが行っている『意図を汲み取って聞き返す』プロセスまでAIに実行させることで、真の自動化が実現します」(谷合氏)

例えば、返品希望のメールをAIが読み取り、管理画面で注文情報を検索、条件を確認して返品・交換を提案し、不足情報があれば自動で質問を返す──。そんな「無人化」と「ホスピタリティ」が両立する未来が、TENTIALでは現実のものになろうとしている。

ブランド理念を軸に、「人・チャネル・データを横断して育てていく」シップスのチャネル戦略は、次のフェーズへと進み始めている。