「楽天新春カンファレンス2026」三木谷氏講演 鍵を握る「AIとモバイル」
楽天グループ株式会社が2026年1月30日に開催した「楽天新春カンファレンス2026」。当日は同社 代表取締役会長兼社長 最高執行役員の三木谷浩史氏が登壇し、楽天市場が2027年に迎える「30周年」という節目を見据えて、これまでの歩みと、AIとモバイルがもたらす顧客行動の変容を語った。
目指すは2030年までに「10兆円」
冒頭、三木谷氏は1997年に13店舗からスタートした楽天市場が、グループの国内EC事業において年間流通総額6兆円規模(※1)のECプラットフォームへと成長した経緯を振り返った。成長の原動力として挙げたのは「店舗とともに歩んできた歴史」「ウィンウィンの関係性」。楽天市場の特徴は店舗の独立性を尊重しながら、顧客との接点を最大化する“日本型・店舗型ECモデル”であると語った。
近年特に注力してきたと三木谷氏が語る領域が「配送」だ。独立した店舗が集まるモール型ビジネスにおいて、ユーザー視点で「確実で効率的な配送」は最大の課題でもあったという。2024年から本格的に取り組みを強化し、配送品質は大きく改善。ふるさと納税へのポイント付与規制などの影響を受けつつも、「流通額は6兆円を超えるところまで成長した」と振り返る。
示された次の目標は「2030年までの流通総額10兆円達成」。その鍵を握ると三木谷氏が語るものが、「生産性を倍増させることができる」AIと、「契約数1000万件を記録」(※2)したモバイルだ。
※1 株主・投資家の皆様へのメッセージ(楽天グループ株式会社)
※2 楽天モバイル、契約数が1,000万回線を突破(楽天モバイル株式会社)

生産性を「2倍」にするAI活用
三木谷氏は現代を「AIエージェントの時代」と表現。「これまでは話しかけると答えてくれるというレベルだったが、そこから実際の取引までハンドオフしてくれる」とAIエージェントの威力を強調した。
AIエージェントは、演算速度が18カ月で2倍になる「ムーアの法則」を上回る7カ月で2倍の速度で性能が倍増していると語り、企業活動におけるAI活用の重要性を説いた。「誰でも使えて、誰でも愛されて、誰でも便利なAIを作っていきたい」と三木谷氏が語る楽天グループでは約800人のAIエンジニアが開発に携わり、社内では約20,000のAIプログラムが各事業で利用されているという。
楽天市場の店舗運営システム「RMS(Rakuten Merchant Server)」やエンドユーザー向けの各種サービス、法人向けの「Rakuten AI for Business」にもAIを組み込み、店舗運営の効率化と質の向上を同時に目指している。

楽天市場などでの「新しいショッピング体験」、楽天トラベルなどでの「お店の提案から予約まで」、法人内での「問い合わせ対応、社内業務の整理、ドキュメント作成など」といった用途が紹介された。
楽天市場では商品説明文や画像の生成、問い合わせ回答作成、レビュー返信作成などをAIが支援する。三木谷氏は問い合わせ対応を70%削減した店舗や、商品画像制作時間を9割以上削減した事例を紹介し、AIを「人を置き換えるもの」ではなく、「人の時間を生み出す存在」として位置づけた。
広告出稿からショッピングの購入決定までを支援するAIのアルゴリズムは、統合されたAIによって実現しているといい、「(国内)月間4500万人のアクティブユーザー」「1000万を超えるモバイル回線」「24年分のエコシステムのデータ」を用いてAIを自社開発していると説明した。
モバイルの顧客接点で拡大する楽天エコシステム
三木谷氏は「楽天のAI戦略は、クラウド、モバイル、AI、データ、分析を組み合わせて、サービスを高度化していくもの」と語り、「(楽天市場)AIコンシェルジュでは、購入決定までの時間が約43%短縮され、平均注文金額は40%上がった」と成果を強調した。
AIの“食料”というべきデータソースのひとつでもあり、近年楽天グループが注力しているモバイル事業は、2025年12月に契約数1000万回線を突破。若年層の加入率が高く、人手不足の企業で福利厚生に役立てることも可能だという。講演では離職率を低減した飲食事業者の事例が紹介された。
また、モバイル加入者は楽天市場の利用率が高く、結果としてEC全体の活性化につながっていると三木谷氏。「楽天モバイル加入者は、楽天市場での利用率が(非契約者にくわべ手)約50%高く、若年層の利用も多い。毎月約5000万回の広告接点を生み出し、モバイル向けアプリ『Rakuten Link』公式アカウントを通じた集客も拡大している」とEC事業者へモバイル浸透を呼びかけた。
講演の終盤には前日に発表された「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2025」で総合賞(9位)ほか複数賞を受賞した「澤井珈琲Beans&Leaf」の澤井理憲氏も登壇。楽天モバイルユーザーの購入額・購入頻度が向上した成果を挙げ、モバイル推進に店舗としても協力する姿勢を見せた。
株式会社澤井珈琲 常務取締役 澤井理憲氏
楽天市場で店舗を運営する事業者としては、一社ではキャッチできない楽天エコシステムのビッグデータに基づいて進化する同社のAIを活用したいところ。出店者がこのAIを使い倒すことは、楽天の知見を自分たちの血肉にすることとも言えるだろう。


