TikTok Shop日本上陸から半年 「ディスカバリーEコマース」の現在地

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大矢根 翼

「TikTok Shop」が2025年6月に日本での提供を開始してから約8カ月。TikTokが「ディスカバリーEコマース」と位置付ける、動画やライブ配信を通じてアイテムに出会いその場で購入できる特色を活かした成功事例も出てきている。

今回は2026年2月に行われた日本での提供開始半年を振り返るメディアイベントから、TikTok Shopの現状と今後の展望、さらに登壇したセラーが語る運用の手ごたえなどを紹介する。

発見や気づきが購入につながる「ディスカバリーEコマース」

イベント冒頭では、TikTokの現在地が改めて示された。TikTokは世界150以上の国と地域で展開され、日本国内の月間アクティブユーザー数は4200万人に到達。日本人口の約3人に1人が利用している計算だ。2025年6月時点の推計では、TikTok経由の推定消費額は約2375億円、国内雇用者数への影響は約4.2万人(※1)となっている。

2025年6月30日に日本でローンチされ、幅広いジャンルのセラーが参画する「TikTok Shop」の最大の特徴は、ショート動画やライブ配信を起点に、アプリ内で出会いから購入につながる「ディスカバリーEコマース」だ。TikTok Japanでは「コンテンツを楽しみながら購入につながる新たな購買体験である『ディスカバリーEコマース』が、日本でも定着し始めている」としている。

キーノートに登壇したTikTok Shop Japan ゼネラルマネージャー 執行役員 邱開洲(Carlos Qiu:以下、カルロス)氏は、TikTok Shop日本展開の半年間の成果として「セラー数が5万以上、クリエイター数は20万以上に拡大し、コンテンツを起点としてGMV(総取引額)の約7割を創出した」と語った。

カルロス氏は成長の要因を「セラーは単に商品を販売するだけでなく、詳細や背景、使い方、価値、魅力をオリジナリティあふれるかたちで伝えている。そしてクリエイターは自分ならではの視点、価値観、表現の手段を通して商品を紹介し、ユーザーに新たな発見・気づきを与えていると同時に、収益の機会を拡大している」と解説。スペックや価格を中心として競合と比較される一般的なECと異なり、TikTok Shopでは“体験と納得”を通じて購入が生まれていることを説明した。

またプラットフォームとしての安全性確保の取り組みについても触れ、(同社の基準を満たしていなかった)140万件の販売者登録申請を却下、7000万件以上の商品を掲載前に却下した(※2)ことを報告。それらによってユーザー満足度やプラットフォーム全体の信頼性も向上しているという。

※1 TikTok、日本における経済効果を発表。4.2万人の雇用を支え、国内名目GDPに4,855億円の貢献
※2 TikTok Shopセーフティレポート 2025年1月~6月

カテゴリー別に見る、日本市場ならではの特徴

「TikTok Shop Japan カテゴリー別動向」のセッションには同社 Senior Director of Multi-Category担当の王喆氏、Senior Director of Beauty & Fashion Category担当の黄益氏が登壇。カテゴリーを横断したTikTok Shopにおける売れ筋商品の生まれ方や、ファッション・美容カテゴリーにおける販売トレンドを紹介した。

「従来のECでは、認知はサイト外、購入はサイト内という構造が一般的だった。一方、TikTok Shopでは、ショート動画やライブ配信、クリエイターによる体験共有といったコンテンツとの出会いを起点に、認知、検討、購入までをアプリ内で実現できる」(王氏)

FMCGカテゴリー(日用消費財)ではローンチ以降約57倍の成長を記録したと発表。また、同カテゴリーでは地方創生✕TikTok Shopのプロジェクトである「TikTok Shop Local」に力を入れていくことが示され、事例として兵庫県豊岡市の但馬米が挙げられた。

ファッションカテゴリーでは売上導線に占めるライブ配信の比率が高く、コンテンツ起点の売上が7割、そのうちライブが7割以上を占めるという。さらに多くのマーチャントが自社でコンテンツを駆使して売上を作り出しており、黄氏は「ファッションは、マーチャントがTikTok Shopにおいて、拡販だけではなく、コミュニケーションを通してプロモーションとフォロワー構築ができるカテゴリー」と解説。一方、ビューティーカテゴリーもライブ配信の比率が高いが、GMVの53%をアフィリエイト(クリエイターとのコラボレーション)が創出していることが特徴だという。

黄氏は、こうした数値をユーザーとの信頼関係構築の結果と語り、ビューティ・ファッションカテゴリーの今後の方向性として「ライブ実施のさらなる促進と支援、さらにCRM・ポイント・定期購入といった機能の検討、新たなトレンド創出に注力していきたい」と意欲を見せた。

セラー鼎談で示された「共感が生む売上」

イベント後半では、実際にTikTok Shopを活用する事業者によるトークセッションを実施。日用品、食品、ビューティーブランドの各社が、ライブ配信による双方向コミュニケーションや、共感を軸としたブランドづくりが売上とファン化の両立につながっていることを語った。

登壇した事業者は王子製薬株式会社 PR部アシスタントマネージャー 柳川弓華氏、株式会社オカラテクノロジズ 代表取締役 山内康平氏・同社 工場長 神戸敏子氏、KATEブランドマネジャー 岩田有弘氏。

柳川氏は「反応の速さに驚いた」とコメント。参加型の企画などによってライブ配信の”熱量”を出す仕掛けを通して顧客に商品の魅力が届いている実感を語った。 TikTokならではの「検索ではなくおすすめから始まる購買」が実店舗への訪問にもつながったという。

おからを使った「OKARAT」シリーズなどを製造・販売するオカラテクノロジズは、スタートアップの食品事業者としてECに参入。TikTok Shopでは工場長の神戸氏が出演するライブコマースが成功し、「TikTokトレンド大賞2025」では「真面目なおからクッキー」がヒットアイテム部門賞を受賞している。2024年からTikTokの運用を始めた同社では、動画の企画や編集、出演を既存の業務とかけ持ちする運用体制を敷く。

左:株式会社オカラテクノロジズ 代表取締役 山内康平氏、右:同社 工場長 神戸敏子氏

神戸氏が「嘘のないスタンス」と語るコンテンツ作成においては、ユーザーを巻き込んでの“商品開発会議”の配信なども含まれており、ファンダムの形成と商品の改善を両立する仕組みを作り出している。また、ライブ中に商品が売れた際に工場内にベルを鳴らす取り組みもユニークだ。「会社の雰囲気がすごく良くなりました。お客様からの良い意見も改善点も直接聞けるので、自分たちの仕事が喜ばれていると実感でき、モチベーションが上がりました」と山内氏は語る。

KATEの岩田氏は「クリエイターによるライブでは生活者視点のリアルな声で商品の使い方をわかりやすく伝えていただき、自社ライブでは商品の開発背景やブランド価値をていねいに伝えることができる。こうしたライブ配信と広告を掛け合わせることで、TikTok Shopならではの立体的なコミュニケーションができ始めていると、ブランドイメージ醸成への貢献を語った。また、岩田氏はTikTok Shopの特徴について「購買の起点が検索ではなく、共感にある」ことを挙げ、TikTok Shopでのライブ配信を見て実店舗に訪問する顧客も増えている事例を紹介した。

オンラインの体験がオフラインの来店につながる流れが想像以上。オンラインとオフライン、国内と海外を分けて捉えず『ブランド体験をいかにつなぐか』という問いに対するひとつの答えが、TikTok Shopを通して見えつつあると感じている」(岩田氏)

KATEブランドマネジャー 岩田有弘氏

地域連携と広告で次の成長フェーズへ

同日、新たな取り組みとして発表された「TikTok Shop Local(ティックトックショップ ローカル)」は、各地の事業者の商品を全国へ届けるプロジェクト。2026年3月からの展開を予定し、動画とライブを通じた地域の魅力発信を強化する。

TikTok Japan 執行役員 公共政策本部長 安永修章氏は「検索ではなく、動画を見ている中で偶然出会い、気になり、理解し、購入する『ディスカバリーEコマース』の仕組みを活用する」と語る。狙いは広告出稿やECの専門知識に依存しない環境の整備だ。

また、イベントでは2025年から展開されているTikTok Shopにおける広告ソリューション「GMV Max(※3)」も紹介された。

※3:参考 TikTok Shop、広告ソリューション「GMV Max」を7月から展開(ECのミカタ)

TikTok for Business Japan, Global Business Solution, Client Partner担当の石原正人氏は「GMV Max」の期待効果として、「1セッションあたりの平均GMV(流通額)が約1.5倍に伸長」「新規ユーザーへのリーチ率がオーガニックの2%に対して8%」「平均GPM(=100万Imp/GMV)は広告配信前と比較して31%向上」の3つを挙げた。

TikTokの発表によれば、TikTok Shopのユーザー層は、18~34歳と35歳以上がほぼ同数。この日も「共感」や「リアルな体験」といったキーワードで、プラットフォームにおける購買行動が語られた。事業者にとっても、【自社の商品の魅力やブランド価値をショート動画で表現する】という課題と、真剣に向き合う時代の波が足元まで届いていることがうかがえるイベントとなった。


記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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