フェイスブックの「いいね」でわかる衝撃の計量心理学と最新アルゴリズム
超一流の講師陣にレクチャーしてもらえると大人気のJECCICA(一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会)勉強会が開催されました。『Facebookの計量心理学』と題し、アメリカのEC業界やソーシャルメディア事情に精通したJECCICA代表理事の川連一豊氏が、フェイスブックの計量心理学とアルゴリズムの最新情報についてレクチャーしてくれました。
フェイスブックの計量心理学とは
フェイスブックは、ご存知のように人と人とのつながりをテーマにしています。つまり、フェイスブックは人を見ています。例えば、既婚か未婚か、子供の有無などフェイスブックは個人の情報を持っていますが、ポイントはそこではありません。
計量心理学のポイントは、人がどれに「いいね」を押して、どれにリアクションして、どれにコメントしているか、どの投稿をじっくり見ているか、それをFacebookが知っているということです。人が見ている情報、非公開になっている情報を調べているのです。
フェイスブックはどんどん進化していますが、それを利用しようとする企業もどんどん増えています。情報が公開、非公開にかかわらず、「その人がどんな人か」を調べようとしているのです。しかも、それをマーケティングに利用しようとしています。では、どうすればよいでしょうか。
某企業に勤めていた知人が、私と海外に行くことになりました。ただ、会社には言えない状況でした。そのためフェイスブックをスマホから消し、ログインできないようにしました。私はフェイスブックをオンにしたままで、商談を済ませ、帰国しました。帰国してフェイスブックを開いてみたら、彼のフェイスブックも私のフェイスブックもお互いが「親しい友達」になっていた。削除してあったにもかかわらず、です。
5月25日の日本経済新聞社の朝刊に計量心理学についての記事が掲載されました。
(https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3090927024052018TJN000/)
2016年の大統領選では、研究目的で集めたフェイスブックの個人情報がケンブリッジ・アナリティカに渡り、トランプ陣営の選挙活動で使われた疑いが持たれて問題になりました。
計量心理学は心を測る研究をする分野で、目に見えない分野を目に見えるように解釈します。統計学と心理学をミックスしたような研究です。日本であまり関心を集めていないのは、昔から「単一民族」と言われ人種の多様性に乏しいためだと思いますが、欧米はいろんな人種が混じっているので、人の研究への関心は高いのです。
フェイスブックの「いいね」で個人情報が広い範囲でわかる
計量心理学を考えるときに、私は記述統計学が一つのポイントになると考えています。
フェイスブックやインスタグラムに投稿するときに、誰でも写真や情報の一部を切り取って投稿しています。情報を取捨選択して、切り取って要約しているのです。そのため、要約したデータは都合の良い情報が多くなり、バイアスがかかります。記述統計学では捨てた情報にヒントがありますが、ポイントは、「情報を取捨選択して捨てる作業」が含まれるということです。そのため、その人の性格も顕れるのです。
先ほどの日経新聞の記事では、フェイスブックの「いいね」で、人種や性別、支持政党、宗教、喫煙、飲酒、配偶者まで、隠してあってもわかってしまうということでした。情報はフェイスブックのアプリを使って集められて、利用者本人ではなく友達のデータまで吸い上げて利用する仕組みになっていました。
少し考えてみてください。もし仮に、私がトランプ大統領に会おうとしたら、中間に何人いれば会えるでしょうか?
答えは六人です。
といことは、友達の友達を辿っていくと、地球の人口のかなりの部分の情報がカバーできます。
マイケル・コシンスキー氏が2013年に発表した研究では、「年齢や知的水準、誠実さといった性格も一定の精度で推定できた」ということです。(https://www.cam.ac.uk/research/news/digital-records-could-expose-intimate-details-and-personality-traits-of-millions)
マイケル・コシンスキー氏は5万8千人を対象に調査しましたが、フェイスブックで押した「いいね」で、アルコール摂取や親の離婚体験なども高い精度でわかってしまうということでした。つまり「いいね」を押すことで、非公開に設定してあっても個人データがわかってしまうというのです。
「いいね」を押すときには注意が必要です。特に政治家や極端な主義主張に怒りのアイコンなどをつけると相当分析されてしまうと思います。
もともと計量心理学は、非常によく内容を考えた一連の質問に答えてもらい、「うつ病になっている」とか「この製品が気に入っている」といった心理状態を測定する手法でした。サンプル数も数百人規模のことが多いです。
日本では中央大学の檀一平太氏が第一人者です。(http://www.human.chuo-u.ac.jp/teacher/3269)
このような方でも質問内容を一生懸命考えて、徹底的に練られた質問を通じて、ヒトの思考パターンを解析されていますが、フェイスブックを研究するほうがよりわかってしまうということです。
フェイスブックのアルゴリズムと最新の変化は?
一方で、フェイスブックのアルゴリズムについてお話をしておきたいと思います。
ご存知の方も多いと思いますが、これは「エッジランク」と呼ばれていたものです。エッジランクはaffinity(親密度)やWeight(重み)、Time(経過時間)で、この3つの要素でハイライトの表示順が決まりますが、これがかなり変化してきたと思います。
「投稿のタイプ」が追加されました。さらにユーザーの興味関心やFacebook内での行動、投稿者の信頼性など、さまざまな要素がニュースフィードの表示順に影響を与えるようになりました。
フェイスブックのアルゴリズムに関する最新情報はフェイスブックの「News Feed FYI」で確認できます。(https://newsroom.fb.com/news/category/inside-feed/)
フェイスブックはフェイクニュース対策を進めているので嘘や偽の情報については特に厳しくなっています。またクリックベイド、エンゲージベイドといった、大げさな「釣り」もニュースフィードの表示順位が引き下がりました。クリックやシェアを狙ったり、煽る投稿に対しても規制を強化しています。
フェイスブックは親子、家族、友達、親しいグループ、ちょっとした友達に区分けしています。そして、価値が高い友達や家族の投稿を優先して表示し、適切なユーザーに有益な情報を届けようとしています。
これまでもフェイスブックのアルゴリズムは変化をしてきましたが、最近明らかに変わりました。私が携わっているフェイスブックページの一つは3.6万件「いいね」がついていますが、シェア系はダメになり、シェアでプロモーションが打てなくなりました。宣伝っぽいものがダメになりました。
ソーシャルメディアの利便性とプライバシーをどう考えるか
ここで記述統計学に戻って話をしますと、フェイスブックはフェイクニュース対策をとっています。誇張して言ったり、嘘を言う人は、分析されてしまいます。気を付けたほうがよいと思います。ハッシュタグも、関係ないハッシュタグを付けるとノイズとみなされます。フェイスブックは、人とデータとアルゴリズムを見て評価し、ラベリングをしています。
今、フェイスブックは英語とフランス語はリアルタイムで同時翻訳できるようになっていますが、6000言語でリアルタイムの翻訳をしようとしているということです。フェイスブックはMeaningful Communityをどうしても作りたいと言っていて、人と人とのつながりやコミュニケーションはどんどん進めていこうとしています。
一方で、先ほどのアナリティカのように分析しようとしている人たちもいます。
ここで、どうすればよいか、ということです。フェイスブックは楽しいので「いいね」や投稿をどんどんすればいいと思うか、分析される危険性をどう考えるか、です。ラインでも、実名では、わかってしまいます。もうみなさん今はやっていないと思うのですが、携帯の番号もすべてわかってしまいます。
「スノーデン」という映画を見た方はいらっしゃるでしょうか。見ていただきたい映画です。元NSA職員のスノーデンが、アメリカが世界中の通信データを傍受し「監視」しているという驚愕の実態を暴露しました。実話なのですが、それが映画になったものです。元々はスパイ容疑のある人の行動を分析していたのですが、この人とメールしている人、通話している人、など辿っていくとほぼ全世界の情報が集まってしまいます。それをスノーデンは暴露しました。TEDでも話していましたが、スノーデンは理解に乏しい日本人を憂慮する、ということで緊急メッセージも発していました。
先日のJECCICAのセミナーで、アメリカでUBERを利用すると値段が人により違うという話がありました。同じ場所で、同じ目的地に行こうとしていたのに、三人でUBERの提示する値段が違ったのです。ソーシャルスコア、ソーシャルランクが関係しているのではないか、という推論もできます。今は、新卒採用や中途採用でも、フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどチェックするようになっています。
また、アメリカに入国するためにはESTAが必要ですが、ESTAにはソーシャルメディアを記載する欄があります。ペイパルの創業者ピーター・ティールは、フェイスブックの出資者でもあり、フェイスブックに関わっていて、ESTAの開発にも関わっています。この方の本『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』は大好きな本ですが、いろいろなものに関わっていますね。
SNSでの発言や行動をもとに人物像を推定する手法は、マーケティングや広告など各方面に応用されていて、この流れを止めることはできません。では、私達はどうすれば良いのでしょうか?SNSを利用する際には、そのことを意識しておくとよいと思います。
初めて知る事実に、深く考えさせられました。
とてもためになるレクチャーでした!!
この後、勉強会では行動経済学についてお話していただきました。
勉強会に出られなかった方には、『行動経済学まんがヘンテコノミクス』という本が30分くらいで読めるので、おすすめだそうですよ。
内容についてのお問い合わせ
→ http://jeccica.jp/page-36/
【川連一豊(カワヅレカズトヨ)JECCICA代表理事】
JECCICA(一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会)代表理事 、フォースター株式会社代表取締役
そろばん2級、書道6段。学生時代より音楽活動を行う。1988年ヤマハ音楽世界大会出場。TV番組、CM制作に携わる。
楽天市場の店舗では2003年楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー受賞。
2004年8月にSAVAWAYを設立。流通総額を1700億円まで成長させる。
現在、JECCICAの代表理事としてEコマース業界の発展のために各方面で活動。
【URL】
https://jeccica.jp/page-2/page-34/
https://forcetar.jp/
他では聞けない貴重な話が聞けるJECCICA勉強会はJECCICA会員であれば参加可能です。月一回不定期で開催されています。お問い合わせは、下記までお願いします。
→ http://jeccica.jp/page-36/
画像出典:日本経済新聞、ソーシャルメディアラボ、株式会社システム機構、中央大学HP
9月13日(木)東京で開催される「ネット&スマートフォン・コマース 2018」でJECCICA代表理事の川連一豊氏とJECCICA客員講師の唐笠氏が講演します。
■日程:9月13日(木)
■参加費用:無料。事前登録制です
■開催場所:JPタワーホール&カンファレンス(KITTE 4F)
<JECCICA代表理事 川連一豊氏>16:55~17:35
スマートフォンEコマースの2018年最新情報
最近の5つの事例を具体的にご紹介 あなたのスマホECは大丈夫か?
<JECCICA客員講師 唐笠氏>13:15~13:55
ショッピングセンターPARCOの「ニューリテール戦略」
詳細はこちらからご確認ください。
https://www.f2ff.jp/ns/2018/09/
次回のJECCICAセミナーは「パルコの最新情報とクラウドファウンディング」と「Eコマースで使えるInstagram具体的実践法」と「最新ECニュース」
月1回開催されているJECCICAセミナー。
9月は豪華3本立てで開催されます。
第1部ではECのミカタ編集長石郷氏が登壇し、注目の最新ECニュースを解説します。
第2部では、パルコの林直孝氏がパルコのデジタルマーケティング最新情報とパルコクラウドファウンディングの状況についてレクチャーしてくれます。
第3部では「Eコマースで使えるInstagram具体的実践法」をJECCICAの理事・講師の松本順士氏とエスアンドティーパートナーズ株式会社の三久保氏がレクチャーします。
どれもEC関係者にとって聞き逃せない内容ばかり!
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