売れるECサイトのレスポンス獲得法は?知っておきたいマーケティングの鉄則

古西なつ子

マーケティング手法について解説する鈴木氏

一流講師陣がわかりやすく教えてくれる、と評判のJECCICA勉強会。第10回のテーマは『レスポンスを得るキモは、知れば知るほど「STP」』。レスポンスを得るために必要なマーケティングの考え方を鈴木準氏がレクチャーしてくれました。鈴木氏は電通ワンダーマンなど数社の広告会社を経て会社を設立。マーケティングの専門家として活躍されています。レスポンスを得るために知っておきたいSTPとは?レクチャーの一部をご紹介します。

レスポンスの80%を決定する要素とは?STP分析の重要性

レスポンスの80%を決定する要素とは?STP分析の重要性

顧客のレスポンスを得るカギとなるファクターをご存知でしょうか?
レスポンスを獲得する定石として知られる「4.4.2の法則」というものがあります。
これはアメリカのダイレクトマーケティング協会が提唱した法則です。レスポンスに影響を与える要素として3要素が挙げられています。

誰に使えるか、「ターゲット」が40%。
何を伝えるか、「オファー(訴求要素)」が40%。
どのように伝えるか、「クリエイティブ」が20%

「ターゲット」と「オファー」で80%が決まります。

「クリエイティブ」はレスポンスに与える影響度が高そうな印象ですが、実際はパーセンテージが低いことに気付きます。
ブランド広告の場合は、クリエイティブが顧客の態度変容(認知や理解)に与える影響は60%~70%くらいに上昇しますが、レスポンス広告の場合には、表現を作る前段階の論理的部分「誰に?何を伝えるか?」が大きく影響します。

どうしてなのでしょうか?
クリエイティブは「ターゲット」と「オファー」を踏まえてつくられます。レスポンスを得るためには、「説得から欲求喚起」する必要があります。「誰に?何を伝えるか?」を明確にして伝えないと、レスポンスが得られないのです。

その「誰に?何を伝えるか?」を導くのがSTP分析になります。

STPは、「Segmentation」「Targeting」「Positioning」の頭文字をとったものです。
STPを明確にすることは、マーケティング全体を俯瞰した場合、現状の環境を鑑みて「どんな顧客に、どのような価値を提供するか」と言う戦略を決定づける要因であり、それを踏まえてマーケティングミックス「4P」(Product,Place, Price, Promotion=製品戦略・価格戦略・チャネル戦略・販売戦略)までの道筋を決めていきます。

往々にしてマーケティングミックスから始める人が多々おりますが、これは誤りです。まず、どういう市場の状況かを把握しなくてはなりません。

どの市場の、どのような顧客に、どのような特徴・価値を提案するのか。
STPが明確になれば、誰に何を提供するECサイトなのかが明らかになり、レスポンスも多く獲得できるのです。

そもそもマーケティングとは?ニーズの本質を掴めば売れる?

そもそもマーケティングとは?ニーズの本質を掴めば売れる?

マーケティングは、「顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、おのずから売れるようにすること」だと言います。

押し売りではなく、自然に売れるようになる、「売れ続けるしくみづくり」をすること。それがマーケティングです。顧客を理解するということは、ニーズを深堀して洞察することです。

多くの人が「Needs」と「Wants」を混同しています。

例えば、砂漠でさ迷っている男性がいたとします。
この男性の「Needs」は何でしょうか?

「水」、「らくだ」、「木陰」、「休憩できる場所」など、人によって思い浮かべるのは様々だと思います。
ただ、「水」も「木陰」も「Needs」ではありません。これら「Wants」になります。

「Needs」は、喉の渇きが満たされた状態になることです。

今実際こうであるという「現状」と、こうなりたい「理想状態」。そのギャップが「Needs」で、ギャップを埋め合わせてくれる対象物が「Wants」になります。

ニーズをつかむためには、「不」の字に着目するのがコツです。例えば不足、不満、不完全など満たされていない状態に注目してみます。それによって、「何が満たされていないのか」が明らかになります。

ヒットしたミツカンの納豆、『金のつぶ パキッ!とたれ』という商品があります。タレがジェル状になっていて、すぐに食べられる、という納豆です。ミツカンの調査では、タレやカラシが別々になっていてイライラした経験がある人は90%でした。その「不満」に着目して生まれた商品です。

また、ニーズの重要性を示す例として、売れない商品が名前を変えただけで売れた事例もあります。
無印良品がシワになりにくいジャケットを「たためるジャケット」をとして発売しましたが、売れませんでした。
ところが、「旅に便利なジャケット」と違うネーミングを付けたところ、爆発的に売れたのです。シワになりにくいジャケットを求めている人は誰か、そのニーズをキャッチし、ネーミングを変えただけで売れるようになりました。

「たためるジャケット」は売り手の言葉で、一方「旅に便利なジャケット」は買い手の言葉です。

低反発マットレス「「トゥルースリーパー」も人気の商品です。

明言されているニーズは「寝心地を良くしたい」ですが、真のニーズは「良質な眠りを得て体調を良くしたい」というものです。

また、実際お客さんが使ってみて学習されるニーズもあります。
ユーザーボイスで「こういう価値もある」と新たなニーズがわかる場合もありますし、それを使った訴求の仕方もできます。

ターゲットの決め方は属性ではなくニーズから入る!

ターゲットの決め方は属性ではなくニーズから入る!

それでは、ニーズを把握するためにはどうしたらよいのでしょうか?

ニーズを的確に掴むためには
・マクロ環境
・ミクロ(業界)環境
を分析することが大切です。

自社商品のおかれた環境を明確にすることで、「誰に何を売るか」というコンセプトが明確になります。

その環境分析をするときのツールとして役に立つのが、マクロ環境を整理する「PEST分析」と、自社の置かれている「ミクロ環境」を分析する「3C分析」です。

「3C分析」では、市場環境(Customer)と競合環境(Competitor)、自社環境(Company)を分析し、顧客像を明確化することでニーズを深堀していきます。
その上で、「KBF(Key Buying Factor):買う理由」と、「KSF(Key Success Factor):成功の理由」を抽出します。


「市場環境」では、市場の動きや変化に着目。顧客が誰になるのか、ニーズやニーズの変化、顧客の購買決定要因を考察します。

「競合環境」では、代替品も含めて競合がどこになるのか、競合が市場変化に対応しているか、競合が取り込めている、取り込めていない顧客層やニーズを分析します。
また、「自社環境」では顧客ニーズと競合の動きから、自社の強みと弱みを分析し、自社が成功するためのKSFを探ります。

例えば業績好調なコメダコーヒー。コメダは「従来のカフェではゆっくりできない」という不満をもった人や、コーヒーやフードの美味しさを求める人、くつろげる店内空間で選択する人のニーズをとりこみました。昔懐かしい喫茶店の雰囲気とゆとり空間を提供することでリピーターを増やしていったのです。

ここで重要になるのは、市場のセグメントやそこに存在するターゲットは属性から入るのではなく、顧客になるグループのニーズを掴むことです。

「20代前半OL」など属性を先に定めるのはNGです。
まずニーズから入ること。そしてそのニーズを持つグループは、どういう属性が多いかを考える、という順番です。

複雑なマーケットでは、多様なニーズを有する顧客がいます。その中で同質なニーズを持つ顧客をグループ化し、ターゲットを単純化していきます。セグメンテーション・ターゲティングは属性から入らず、共通したニーズから入ることがポイントになります。

その上で、ターゲティングを明確化する際には、ペルソナが何に対して「不足」「不便」を感じているかと、買う理由「KBF」を明確にし、プロフィールを具現化していきます。

ポジショニングは勝てる軸を探せ!

ポジショニングは勝てる軸を探せ!

決めたターゲットに、どのような価値を提供するかを考えるポジショニング。良く目にするポジショニングマップの軸は、KBFで縦軸と横軸を考えます。

幾つかあるKBFの中から自社の強み(価値)を最大限に訴求出来る、競合に勝てる軸を設定しポジショニングを行います。

ポジショニングマップは一発で勝てる軸はなかなか探せないため、複数のポジショニングマップを作成して比較検討し、勝てるポジショニング設定と、そこから訴求ポイント(何を伝えるか?)を明確化します。

そして何回行っても勝てる軸とポジショニングが出来ない場合には、セグメントとターゲットが異なっていることを考え、あえて「戻って」再度セグメンテーションとターゲティング、あるいは3C分析を行います。

つまり同じ商品でもセグメントとターゲットを変えると、有利・不利なポジションが設定されます。それらも踏まえて、競合に勝てる軸を考えていきます。

セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング。マーケティングの「キモ」となるSTPが明確になると、「誰に?何を伝えるか?」が明確になります。

20世紀の「世界3大広告人」の一人であり、ダイレクトマーケティングの提唱者であるレスター・ワンダーマンは「主人公は商品でなく、顧客である」という言葉を残したそうです。「なぜ私にその商品を勧めるの?」という顧客の疑問に答えること。顧客にとって利益になる商品を、合理的な理由を明確に告げた上でおすすめすることが大切だそうです。

以上、レクチャーの一部をご紹介させていただきました。
「マーケティングの本質が何か」をわかりやすく解説していただき、ためになるレクチャーでした!!

鈴木準(株式会社ジェイ・ビーム代表取締役)

マーケティングコミュニケーションコンサルタント。放送文化事業株式会社、株式会社エーシーシー、株式会社新東通信、株式会社電通ワンダーマンケイトージョンソンと、特色の異なる広告会社を経て1998年に独立開業。現在「株式会社ジェイ・ビーム」代表取締役。広告会社時代は、「媒体(ラジオ・テレビ)・営業・セールスプロモーション・マーケティング・ダイレクトマーケティング」と、様々な部署で広告や販売促進の実務を行う。この経験をもとに「売りにつなげるためには何をすべきか?」と言うテーマのもと、課題発見と解決を図るため、顧客視点での考え方を踏まえて、様々な業種のコミュニケーションコンサルティング&プランニングを手掛ける。著書~広告ビジネス戦略(誠文堂新光社)、その他業界紙誌や講演・セミナー・企業研修多数。
連絡先:jun@j-beam.com

次回は最新版SNS講座!

次回5月の勉強会は、JECCICA理事松本順士氏を講師に迎え、『最新版SNS講座(仮)』をテーマに開催されます。インスタグラムを中心とした最新のSNS攻略法。聞き逃せません!

■日時 5月(日程未決定)
■場所 清水さんPCルーム(渋谷)

少人数で行われる勉強会は、講師にどんどん質問できるのも、他にはない魅力です。トップランナーが気軽に質問に答えてくれます!
いきなり質問を振られることもありますが(笑)

貴重な話が聞けるJECCICA勉強会はJECCICA会員であれば参加可能です。

http://jeccica.jp/page-36/


勉強会の後は、お洒落なタイ料理のお店で和やかに懇親会。
美味しいタイ料理に舌鼓をうちながら、楽しい時間が過ごせました!!

JECCICAの懇親会は、初参加でも楽しめます。
セミナー後の懇親会、勉強会の懇親会ともにおすすめです。
http://jeccica.jp/page-36/


著者

古西なつ子 (Natsuko Konishi)

出版社などを経て、ライターとして入社した会社でネット通販に携わるように。モール店舗運営、分析、OEM商品開発、LP作成、中国仕入れ、卸、ブログ関係の業務を行う。