ロッテがUGC活用で見出した“お客さまの物語” ユーザーの「声」がメーカーECの未来をつくる
株式会社ロッテは「ロッテグループ公式オンラインモール」において、SNS投稿やレビューを活用したUGC(※1)マーケティングを強化している。導入しているのは、株式会社visumoが提供する「visumo(ビジュモ)」「ReviCo(レビコ)」「emoreco(エモレコ)」だ。「多くの方がご存じのブランドにはレビューが必要なのか?」という従来の考え方を変え、“お客さまの声をきく”という原点に立ち返ったこの取り組みは、レビュー投稿率10%以上、CVR1.3倍(※2)という成果につながった。
お菓子を、お客さまのライフイベントを彩る存在に――。ロッテはお菓子が持つ「楽しさ」という情緒的価値を、どのように可視化し、顧客とのエンゲージメントを深めているのか。同社 EC企画課の鬼頭真氏、菅原将太氏とvisumo社の代表取締役社長 井上純氏に、その戦略の舞台裏を聞いた。
※1:UGC=User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)の略。一般消費者が自発的に作成・投稿したコンテンツ(SNS投稿、レビュー、ブログ、動画など)を指す
※2:レビュー投稿率は2025年1月~12月実績。CVR(コンバージョン率)は「レビューを見た商品のCVR」と「レビューのない商品のCVR」の比較(2026年1月から2月26日までの実績)
「多くの方がご存じのブランドにはレビューが必要なのか?」の考えを転換
──「ロッテグループ公式オンラインモール」の概要について教えてください。
株式会社ロッテ マーケティング本部 コミュニケーションデザイン部 EC企画課 課長 鬼頭真氏(以下、ロッテ 鬼頭) 「ロッテグループ公式オンラインモール」は、当社が運営する直営の総合通販サイトです。2020年6月に、それまで個別に展開していたロッテ、メリーチョコレート、銀座コージーコーナーの3つのオンラインショップを統合し、より利便性の高いサイトへとリニューアルしました。定番のお菓子やアイスはもちろん、ギフト用の高級チョコレートや洋菓子、さらにここでしか買えないオンライン限定商品まで、幅広く取り揃えています。
──同サイトに導入されている「visumo」「ReviCo」「emoreco」とは、どのようなツールなのでしょうか。
株式会社visumo 代表取締役社長 井上純氏(以下 visumo 井上) まず「visumo」は、SNSに投稿された写真や動画を収集し、自社サイトのコンテンツとして活用できるマーケティングプラットフォームです。
「ReviCo」は、レビューを効率的に収集・活用できるツールで、2026年1月に提供元のReviCo社と経営統合し、現在は当社が提供しています。visumoが持つクリエイティブ資産と「ReviCo」のレビューデータを組み合わせることで、より高度なUGC活用が可能になりました。
さらにAIレコメンド「emoreco」は、ユーザーの行動履歴や好みを分析し、一人ひとりに最適な商品を提案する仕組みです。ロッテ様には2022年の「visumo」導入を皮切りに、2024年にはUGC活用をさらに強化するため「ReviCo」と「emoreco」も導入いただきました。
──ロッテ様はどのようなきっかけでこれらのツールを導入されたのですか。
株式会社ロッテ マーケティング本部 コミュニケーションデザイン部 EC企画課 菅原将太氏(以下、ロッテ 菅原) 商品情報だけでなく、お客さまのリアルな「体験」を公式モールで可視化することが、CX(顧客体験)向上やファン化に不可欠だと考えました。
例えば「オリジナルコアラのマーチ」は、誕生日や記念日など、さまざまなシーンでUGCが生まれています。そうした活用事例をサイト内で紹介することで、購買検討層に「こんな感じで使うんだ!」という具体的なイメージを持っていただき、ブランド体験の深化につなげたいと考えたのが導入の決め手です。
ロッテ 鬼頭 「ReviCo」導入の背景には、ECビジネスの基本に立ち返るという強い思いもありました。以前はレビュー投稿がほとんどなく、正直なところ「多くの方がご存じのブランドにはレビューが必要なのか?」と、オフラインの認知度に甘んじていた面がありました。
しかし、ECにおいてレビューはCVを左右する重要な要素です。改めてECの「当たり前」を徹底するため、レビュー基盤の整備のために「ReviCo」の導入とAIレコメンド「emoreco」によるWeb接客の最適化を進めました。

「オリジナルコアラのマーチ」は、写真やコアラのパーツを使って、オリジナルの「コアラのマーチ」を作れる、「ロッテグループ公式オンラインモール」独自のサービス(画像は公式サイトより)
レビュー投稿率が業界平均の約2倍に拡大
──「visumo」「ReviCo」「emoreco」の導入効果について教えてください。
ロッテ 鬼頭 定量的に非常に大きな成果が出ています。まず「ReviCo」では、月平均677件のレビューが集まり、投稿率は10%以上に達しました。さらに、レビューを閲覧したユーザーのCVRは、見ていないユーザーと比べて1.3倍に向上しています。
また「emoreco」では、レコメンド経由の売上が全体の15.1%を占め、注文単価も15%向上しました(※3)。AIによる接客の最適化が、収益向上に大きく寄与しています。
──特に「オリジナルコアラのマーチ」で大きな効果があったと伺いました。
ロッテ 鬼頭 はい。2019年に開始したサービスですが、サイト内にUGCを掲載したことで認知が広がりました。当初は引き出物需要を想定していましたが、ユーザー投稿によって、出産祝いや結婚式、誕生日やその他記念日など、さまざまな活用シーンが可視化されたのです。
こうした「顧客のリアルな声」が新たな気付きを生み、購買検討層の「自分ごと化」を促進しました。UGCを見て購入したお客さまがさらにUGCを生むという好循環も生まれています。お客さまの共感が新たな需要を広げてくれることを、改めて実感しています。
──具体的にはどのような投稿が多いのでしょうか。
ロッテ 鬼頭 毎朝、管理画面から全ての投稿に目を通し、返信することをルーティンにしています。「オリジナルコアラのマーチ」では、夫への感謝をつづった投稿や、亡き愛犬への想いを込めたメッセージなど、胸を打つエピソードが数多く寄せられています。
厳しいご意見をいただくこともありますが、こうした「生の声」に真摯に向き合うことで、ファンとの結びつきがより強くなっていると感じます。
※3:レコメンド経由売上は2025年2月から2026年2月実績、注文単価は2025年12月から2026年2月実績
株式会社ロッテ マーケティング本部 コミュニケーションデザイン部 EC企画課 課長 鬼頭真氏(鬼頭氏の所属部署・役職は取材時のもの)
visumo 井上 ロッテ様のレビュー投稿率は業界平均を大きく上回る非常に高い水準ですが、これは公式モール利用者のファン度とエンゲージメントの高さの表れです。実際、レビューの最低文字数を設定した以降も、投稿率はまったく下がりませんでした。お客さまにとってレビュー投稿は負担ではなく、「メーカーに想いを伝えたい」という自発的な動機が勝っている証拠です。
これほど質の高いUGCが集まるのは、ブランドと顧客の間に強い信頼関係があるからこそだと感じています。

Instagramに投稿された「オリジナルコアラのマーチ」をサイト上に掲出。「記念日」「結婚式」「わんこ」といったタグごとにユーザーの投稿を見ることもできる(画像は公式サイトより)
ユーザーのリアルな声や熱量をダイレクトに反映
──「visumo」などを通じて得られるレビューと、自社で行うアンケート調査で得られる回答には違いがありますか。
ロッテ 鬼頭 レビューは、自社のアンケートでは把握し切れない“お客さまのリアルな声”だと考えています。アンケートは設問や選択肢に限りがあり、どうしてもその範囲内の回答になりがちですが、ご自身で投稿いただくレビューは、お客さまの本音や熱量をダイレクトに捉えることができるため、質的な違いがあります。
ロッテ 菅原 レビューは自主的な投稿であるため、アンケート以上に本音が出やすいのが特徴です。その熱量は作り手の心に響くだけでなく、商品設計にも活かせる貴重な情報源になります。こうした生の声の重要性は、EC担当になってより強く実感しました。
ロッテ 鬼頭 得られたレビューは、LP制作の貴重なリソースにもなります。2025年、洋酒チョコレート「ラミー」発売60周年を記念して「ラミープレミアムテリーヌ」を発売した際には、大量のレビューを生成AIで分析し、その結果をもとにLPの構成案を作成しました(※4)。顧客の生の声をダイレクトに反映できたことで、高いコンバージョンにもつながりました。
※4:「ラミープレミアムテリーヌ」は2025年10月にロッテグループ公式オンラインモール限定で発売。好評を博し、今年度の販売分は完売している
株式会社ロッテ マーケティング本部 コミュニケーションデザイン部 EC企画課 菅原将太氏

「オリジナルコアラのマーチ」に寄せられたレビューの例(公式サイトより)
「ReviCo」は現在400以上のサイトに導入されている(「ReviCo」サービス資料より)
お菓子の楽しさ、ワクワク感をファンと共有
──ロッテ様は今後、UGCをサイト運営やファン獲得、ロイヤルカスタマーの醸成などにどうつなげていきますか。
ロッテ 鬼頭 今後の展望として、継続的にお客さまとつながれるサブスクリプションモデルを実現したいと考えています。まずは足元の運用を深め、しっかり土台を築く。それが将来、サブスクを始めた時に大きなシナジーを生むと確信しています。
多くのSNS投稿やレビューを見て改めて感じたのは、お菓子は「おいしさ」という価値だけではなく、お客さまの人生の幸せなシーンを彩る存在にもなれるということです。こうした魅力をUGCを通じて可視化し、お菓子が本来持つワクワク感をさらに広げていければうれしいです。
──visumo様はこれらのツールの提供を通じて、EC事業者のどのような課題を解決していくのでしょうか。今後の展望について教えてください。
visumo 井上 「ReviCo」が加わったことで、私たちのサービスは新たなフェーズに入りました。今後は各ツールのシナジーをいかに生み出すかが重要になります。具体的には、レビューデータを「emoreco」のパーソナライズロジックに組み込み精度を高めるほか、SNSデータを活用したレコメンド最適化など、包括的な連携によって学習データの質をさらに高めてまいります。
メーカーECにおけるUGCの役割は、いま大きく変化しています。UGCは単なる「コンテンツ」にとどまらず、商品開発や特集ページの構成、マーケティングの素材など、多角的な施策の「種」となる重要な資産へと進化しました。
私たちの根底にあるのは、ユーザーとのタッチポイントを強化する「ファンマーケティング」の思想です。EC起点で生まれるお客さまとの対話やUGCデータを、サイト運営の枠を超えたさまざまな領域へ広げ、ブランドの持続的な成長を支援していきたいと考えています。
株式会社visumo 代表取締役社長 井上純氏


