【第2回】「モノを売らずにコトを売る」の全ては、悪徳訪問販売で学んだ

古屋 悟司

究極の安売り。締め切り16時の即日発送。この二つを武器にして花を売り上げ会社は急成長。

しかし、神様は僕に試練を与えた。

売上7割減。花を仕入れるお金もない状況から、ビジネスモデルを大幅に変更し、モノを売らずにコトを売るを実践。

その結果、約18カ月でV字回復を果たしたが、その道のりは平坦なものではなかった。

花農家さんとのつながり、市場との連携、管理会計の恩恵。全てが複雑に絡み合い価格競争から抜け出すことに成功。

ゲキハナという名の花屋はカゲキなシゲキを受けながら、カンゲキを売る花屋に生まれ変わった。

全10回。すべてを惜しみなくあなたにお伝えしようと思います。僕に起こったウソみたいなホントの話を。

【第1回】川上から川下まで、全ての場所が儲かる価格で仕事をする
https://www.ecnomikata.com/column/10461/

稼ぎたいを叶えたかった

稼ぎたいを叶えたかったこんにちは!古屋です!
沢山のメッセージをいただき、俄然やる気になっております!
面白かった!私も頑張ろうと思います!などなど、長文のメッセージまで頂き、感謝感激です!
また、デイリーランキング1位、週間ランキング1位もいただき。本当にうれしく思います!
今週も、はりきって書きましたので、是非、お時間のある時に読んでくださいませ!

大学卒業後、トヨタのディーラーに入社し営業マンとなりました。僕にとって営業職は希望していた職種で、とにかくモノを売ってみたいと思っていたんですね。

「車を売る事ができれば、何でも売ることができる!」と言われていた時代でしたので、ならば、やってやろうじゃないか!ということで、僕も車は大好きでしたし、車屋さんにしようと思いました。何が何でもトップ取ってやる!と息巻いて入社、メチャクチャがんばりました。

その甲斐あってか新人賞なんぞいただきまして、キャリアアップのためにそのまま退職しました。(そこ、辞めるタイミングではないですけどね)

退職後、数ヶ月はプラプラと遊んで暮らしていた23歳の僕は、いい加減お金もなくなったし、親にも怒られておりましたので、なにか仕事しなくちゃって事で、新聞折り込みの募集広告を眺めていました。

どれにしようかな〜と眺めていると、何やら稼げそうな仕事が目に飛び込んできました。
「教育関係の仕事です ノルマ無し 月収50万円以上可能」
ソッコーで電話しました(笑)

僕は就職活動中、稼ぎたくて営業マンを職種に選んでいました。能力給という言葉が好きでした。年功序列が納得できず、ギラギラとお金を稼ぎたいと思っていたんですね。そうすると、必然的に歩合給のつく営業マンしか選択肢がありませんでした。

悪徳訪問販売業の道に入門

悪徳訪問販売業の道に入門

その怪しげな会社に面接に行って話を聞くと、「いわゆる学習教材の販売」のお仕事でした。実は学生時代にその手のバイトはやった事があり、その会社に勤めてみる事にしました。

勤務を開始してしばらくすると研修に出されました。研修と言っても神奈川県の厚木市にあるアパートに、一部屋に8人ほどで共同生活を送りながらスキルを磨くという内容。自由を制限された状態で売り方を学んで、「売れるようになるまで帰ってくるな!」という、今考えると、ありえない武者修行のような研修でした。

そこで何をするかというと、厚木にあるメーカー直営の営業所に出勤し、テレアポのスキルを磨く事、そして、2時間喋りっぱなしのトークを一字一句間違わずに喋れるようになる事の2つ。これをずっとやらされるわけです。

朝10時に出勤し、15時頃までは延々テレアポ。その後、FMと言われる作業があるのですが、小学6年生の子供が家に1人でいる時間に電話をかけて、「お母さんいる?あ、今いないのか。困ったな。緊急でクラスのお家に連絡をしなくちゃいけない事があるから、連絡網の中身教えてくれる?」といった事をしながら、最新で優良な名簿を作成するという作業をするわけです。

その名簿を元に、テレアポをかけ、アポを取り、学習教材を売り込みにいくという、悪徳な会社でした。トークは仕事が終わった夜10時から、共同生活のアパートに戻り、ひたすら暗記をするという毎日です。

教材の価格は一番安いものがセットで78万円ほど。一番高いセットで140万円ほどでした。これを2時間のトークで即決するという、悪徳かもしれないけれど、超絶なスキルがない限り買わないよねっていう売り方だったんですね。

結論から言いますと、その研修は約3ヶ月で終了。その後3年ほどで僕の売上は全国トップ10に入るような売上になりました。

どうやって、そんな非現実的な価格の商品が飛ぶようにと売れてしまったのか。今になって振り返ると、やっている事はお世辞にも世間のお役に立てる事ではないですが、「売っているのはモノではなくコト」だったんですね。

100万円の教材を2時間で売るテクニックとは

100万円の教材を2時間で売るテクニックとは

「コトを売る」と一言で済まされてしまったり、「ストーリーを売る」とか言われる事が多いですが、実際にどんな話をしているかというと、以下のような話題です。


①あなたの現状の困りごとを浮き彫りにする
②その解決策を提示する
③それが解決できた時に、あなたはどんな結果が手に入るのか考えてもらう
④その結果が手に入った時に、あなたの人生がどれくらい素晴らしいかイメージしてもらう


この流れで営業トークを、小学校6年生のお子さんを持つお母さんにお話ししていきます。実際に使用する小6のお子さんも、お給料を稼いでくるお父さんもいない場所で進めていくんです。そして、お母さん1人で即決していただけるように決断してもらいます。

ありえないですよね。でも、お母さんは、お父さんにナイショでご購入する事が多かったです。もちろん商品説明はします。するのですが、商品の良さを伝える事はあまりしません。その商品を使って問題が解決できると言う部分にしか商品の説明は使わないのです。

それ以外は、高校受験の現状や、中学校の授業内容、実際に使う教科書が不親切であることや、僕が売る教材を使った上で何が手に入り、どんな気持ちになり、どんな人生が待っているのかと言うお話をしていました。

実はこれ、「コトを売る」という事と全く同じなんです。

悪徳なのはお母さんとのコンタクトの取り方。例の、連絡網から取得した名簿が悪徳です。でも、売り方(営業トーク)はマーケティングの最先端だったんです。

そりゃ、100万円近くする商品を2時間で即決していただくのですから、それ相応の事をしないと売れません。もっというと、騙すとか、煽るとか、脅すとか、嘘をついていたら、すぐに消費者センターに電話をされて商品はキャンセルされます。当時は訪問販売法もすでに厳しかったですし、訪問販売協会に電話されたら一発で営業停止になるくらい厳しい罰則もありましたから、小手先のやり方は通用しませんでした。

高額商品を即決していただくという事は、僕自身を信用していただき、商品を信用していただく事は大前提。その上で商品を気に入っていただいただけでは、お母さん1人の決断で、契約書にハンコは押してもらえません。それだけでは、契約してもらえないんです。
「お父さんに相談します。」とか「子供に聞いてみます。」とか、そうなるのが関の山です。

非常に金額のハードルが高い部分を乗り越えて、お母さん自身が「腹をくくる」状態が出来上がらないと、即決してもらえないのです。

もちろん、教材の販売には「値引き」も「セール」も「おまけ」も「ポイント」も何もありませんでしたから、全てが定価販売で、即決主義。そして、買ったあとは2週間のクーリングオフ期間が用意されているような状態です。

むしろ、今それをやらずにモノを売れと言われたら「売るのが難しい」状態ですよね。そんな状態の中で売ってこなくてはならない仕事だったので、必然的に「コトを売る」と言う方向性のトークが完成していったのだと思います。

これが、今から20年前に僕がやっていた仕事でした。

学習教材になぞらえてもわかりづらいと思いますので、ちょっと商品に落とし込んで考えていきたいと思います。

僕が毎日やっている「コトを売る」とは

僕が毎日やっている「コトを売る」とはhttp://item.rakuten.co.jp/gekihana/kurokawa-kari13/

例えば、ここに、大きな鉢植えのお花があります。
どのようにして販売するか、先ほどの①〜④に当てはめて、考えていきたいと思います。


①あなたの現状の困りごとを浮き彫りにする

家の顔でもある玄関先。綺麗にしたいんだけど、毎日掃除する時間もあるわけではない。でも、やっぱり綺麗であって欲しい。私自身は「イケてる奥さん」でありたいのだけれど、仕事と家庭の両立って難しい。

②その解決策を提示する

大きなシンボルになるようなお花をおいてみてはどうでしょう。置くだけで玄関先は見違えるほど華やかになります。お水やりも3日に一度くらい。丈夫だし、初心者の人でも枯らす事はほとんどないとても簡単に育てられるお花。小さな苗は確かに安いけど、自分でここまで育てる事ができるかどうかは不安でしょ?でもこれ、プロが育ててくれたお花だから、大きく立派に育っていて、見栄えもいいし、置くだけぱっと華やかな玄関先の出来上がり。そして、このお花、実は香りがとても良いんです。

③それが解決できた時に、あなたはどんな結果が手に入るのか考えてもらう

毎朝、仕事に出かける時に綺麗なお花を目にする事で、気持ちよく出かけられるし、疲れて帰ってきた時に、ふわっと香る良い香り。家に入る前に、その花の香りを楽しむことが日々の癒しになるかもしれない。ちょっとハッピーな気分になるかも。

④その結果が手に入った時に、あなたの人生がどれくらい素晴らしいかイメージしてもらう

日曜日の朝、花にお水をあげようとしたら、ご近所さんに声をかけられました。「いつもあなたのお家の前を通るたびに、素敵だなって思っていたのよ。立派なお花ね。いつも楽しませてくれてありがとう!」
ただ自分が楽しんでいただけなのに、ありがとうなんて言われちゃった!なんだかいい気分。次から次へとお花が咲いてくれて、お花の育て方が上手になった気がする。お花がある生活も悪くないな。楽しみが一つ増えちゃった。と思えるかも!(モニターさんなどのコメント等がページにあるとより良い)

次のページでは「コトを売ると世界観が出来上がる」について書いてあります。

コトを売ると世界観が出来上がる

ざっくりですが、僕が思う「コトを売る」というのは、こんな感じです。

そして、これに共感した方が購入へ進んでくれると言うのが結果であって、100人が100人買うわけではないと思うんですね。もちろん、安い方が、値引きされていた方が、おまけがついていた方が、ポイントがついていた方が、買う時には嬉しいと思います。

他店の商品に比べて、「安いだけ、値引きされているだけ、おまけがついているだけ、ポイントがついているだけ」でも物は売れると思います。ただし、他店より安くするという事は、他店よりも儲からないという事にも繋がっていくのではないでしょうか。それでも儲かるのであれば、それは大きなアドバンテージですから、それをどんどん突き詰めたら良いと思います。僕もその方が楽ですし、色んな事を考えなくて済みますから、そっちをやりたいのは山々です。

でも、それでは儲からない、やっていけない、疲れたと言う事であれば、値引きをできるだけしなくても良い方法をやっていくしかないのです。

もちろん、「コトを売る」だけでは、お客さんはリピーターになってくれませんし、ファンにはなってくれません。関係性の構築が命題となるでしょう。

ただし、原資がなければ関係性の構築と言う、地味で時間のかかる事に投資ができず、とにかくキャッシュを回していく方向になりがちになってしまうと思うんですね。(かつての僕がそうだったように)

「コトを売るの方向性」が一つの方向性に絞られてくるとそれ自体がお店の世界観になり、それがお店のブランドとなっていくのだと信じています。

例えば、僕のお店ゲキハナの場合には、他店よりも大きな鉢花を玄関先で楽しむという一つの方向性があり、それ自体を「コト」として販売しています。これを、5年10年と続けた時に、それ自体が、うちのお店のブランドになっていくんだと思います。(詳しくは連載中に書いて行きますが)

わずか5年前までは、僕のお店は安売り店でした。ですから、安売りから脱却するために、こういう方向性に切り替えていきました。切り替えるという事は、今までのお客さんを手放すという事にも繋がります。

楽な道のりではありませんでしたが、やって良かったなと感じています。

そして、悪徳な商品ではなく、より良く、お客さんに役立てる、ハッピーが届けられる商品を使って「コトを売る」をこれからも実践していきたいと思います。

次回のお知らせ


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http://item.rakuten.co.jp/gekihana/column/





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次回のお話は・・・。


「コトを売り、売上7割減から奇跡のV字回復」


です!!


10月4日(火)の予定です!お楽しみに!!


(@^^)/~~~ばいばい!


著者

古屋 悟司 (Satoshi Furuya)

1973年東京生まれ。
あとりえ亜樹有限会社代表取締役
V字回復研究所 所長
「さしすせそ」がうまく言えない東京育ち。
大学卒業後、トヨタのディーラーに就職。新人賞を獲得後、さらなる収入アップのためにブラック企業へ足を踏み入れる。
訪問販売業で荒稼ぎするも、自宅が火事になり全てのやる気をなくし退職。
2002年再起をかけ花屋ゲキハナを開業。2004年楽天市場へ出店。
倒産の危機を経験し、三方よしを学ぶ。
その経験を生かして書いた会計本『「数字」が読めると本当に儲かるんですか?』は、国内外で高い評価を得てロングセラーに。台湾で翻訳され、中国でもその予定あり。
好きな食べ物は、ラーメンとカレー。
現在、「V字回復研究所」を立ち上げ、会う人と会社を元気にする活動をしています。


花屋ゲキハナ
https://www.gekihana.jp/

V字回復研究所
https://furuyasatoshi.com/

フェイスブックアカウント
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