【第8回】楽天市場ベスト店長の人気の秘密とは?~EC素人集団 「米・雑穀のみちのく農業研究所」~

長濱 洋平

今回、楽天市場にてSOY(SHOP OF THE YEAR)を10年連続で受賞し、更にベスト店長賞を受賞するなどECで活躍する名物店長にお話を伺ってきた。ECの世界でも実店舗でも成功し続け、人を惹きつける人気の秘密とは?

※バックナンバー
【第5回】子育てと起業と三畳一間
https://www.ecnomikata.com/column/10662/

【第6回】茂木和哉と考えるECを通した地域活性とモノづくり
https://www.ecnomikata.com/column/11173/

【第7回】大繁盛飲食店から学ぶ商いのキホン
https://www.ecnomikata.com/column/11720/

登場人物  
株式会社澤井珈琲:澤井理憲
米雑穀のみちのく農業研究所:長濱洋平
※敬称略

SOY TRIP 2015での出会い

SOY TRIP 2015での出会い

 既にご存知かもしれないが、楽天市場出店者には一年間で最も優れた成績を達成した店舗にのみ贈られる「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー(通称SOY)」という賞があり、SOYを受賞した店舗のみが参加できる旅「SOY TRIP(ソイトリップ)」というものが楽天主催で毎年開催されている。

 初受賞者だった私は、授賞式で初めて「SOY TRIP」を知り、参加させていただいたのだが、この旅にはとても大きな学びがあると思う。この旅について、最初は「ただのお祝い旅行」と勘違いする人が多いが、内容は全く異なり、楽天市場が未来のEC界への更なる育成を考えた「本物の授与」と私は受け止めている。

 「SOY TRIP」では、全国より約100人選抜のSOY受賞店舗が集い、旅行中5人組の班分けとなり、その班の中で様々なグループワークを行う。私は今回、同じ班であった一人の輝く男に注目した。

 銀座3丁目・レンガ通り沿いにその男の店はある。足を踏み入れる前から既に漂う珈琲の甘く香ばしい香りは、私を何とも言えない幸せな気持ちにしてくれた。更に入口脇には、「ネットで一番売れている珈琲専門店」と書かれた看板がある。

 そこは澤井珈琲東京銀座店(東京都中央区銀座3-3-7 ☏03-6263-0380)だ。先月オープンしたばかり、内装もとてもお洒落で上品なこの珈琲店にて、株式会社澤井珈琲 常務取締役 澤井理憲氏と対談を行った。

商品よりも人柄を売り続けた14年間

商品よりも人柄を売り続けた14年間

 澤井氏が楽天市場に出店したのは2002年2月、リアル店舗である本社は鳥取県にあるが、県内では同業他社が増えてきた。このままのこの業態では厳しいと感じていた最中、澤井氏は「楽天市場に出店しませんか?」という広告をたまたま目にする。

 その広告を見てすぐ出店するも最初は全く売れない。心が折れそうになり、「もうやめようかな?」と思っていたある日、初注文がついに飛び込んできたのだとか。出店から45日後の出来事だったと、澤井氏は当時の事を懐かしそうに笑顔で語る。

 たった1件の注文に考えさせられることは多々あり、行きついたのは「自分は大手コーヒーメーカーではないのだから、多額の広告宣伝費はかけられないゆえに、お客様に認知してもらうまでには45日なんてかかるのは当たり前なのだ。そうであれば澤井珈琲の生きる道は、自身のキャラクタ―を売る努力をこの世界で地道にしていくことだ。」と気づき、その後のサイトページ作成も、より澤井氏の人柄を厚く盛り込むことに注力し続けた14年間であったという。

 そんな澤井氏は現在40歳。めでたくも間もなく結婚を控えているという。

 株式会社澤井珈琲は全従業員が180名おり、その中でECページの業務を担当しているのは3名である。サイト制作で心がけているところは、常に「お客様が見ていてワクワクし幸福を届けるページ」を作るということなのだとか。お客様からの問い合わせやメールの対応等は、30分以内のメール返信を徹底している。

 そんな思いを14年間真剣に向き合って継続してきた結果が、10年連続SOY受賞とベスト店長賞を受賞することに繋がっているのである。正にこれが自身のキャラクターを売る努力のわかりやすい形であり、言葉を変えればECアスリートである。

 そんな澤井氏も、「ECにここまで注力できた原動力は楽天市場で出店4年目で初めて行った「SOY TRIP」であった。」と語った。

ベスト店長“澤井理憲”へ5つの質問

ベスト店長“澤井理憲”へ5つの質問

質問①澤井氏が今、最も手掛けていることは何ですか?→「11月22日まで皆様からのSOY投票をお願いします。」

▼澤井珈琲へ投票はコチラ!
http://item.rakuten.co.jp/sawaicoffee-tea/c/0000000636/

▼米・雑穀のみちのく農業研究所へ投票はコチラ!
http://www.rakuten.ne.jp/gold/toukoku/soypage.html

質問②今後のEC店舗の発展目標は?→「昨対20%増は超えたいです。」
質問③リアル店での発展目標は?→「1年以内にもう1店舗出店したいですね。」
質問④当店(米・雑穀のみちのく農業研究所)と何か新しいことをするとしたら何をしたい?→「これ美味しい!」を価格以外での価値で伝えることに特化した商品で一緒に店舗を運営してみたいですね。」
質問⑤日本中でECを頑張っている方へメッセージ→孤独に打ち勝ってほしい。

{解説}

①現在楽天市場では、ショップ・オブ・ザ・イヤー2016のベスト店舗を選考する「お客様の投票」という企画を行っています。より多くのお客様にご投票頂いたお店が、今年の受賞店舗に選考される年に1度の投票となります。お客様は投票すると、Rポイントが当たります。受賞に向かって現在頑張っているのですが、10年SOYを受賞するとお客様も「私が投票しなくても大丈夫でしょう・・・。」と、寂しくも思われてしまっているので、そこをメルマガなどで毎日投票をお願いしている最中です。長濱さんも投票やってるでしょうから一緒にみんなにお願いしましょう!!→(長濱)わかりました当店でもみんなに宣伝して投票しておきます!

②現在日本のEC流通化は、未だわずか6%の規模ですが、なんとか残りの94%を掘り起こしたい。いわば、この世界はまだブルーオーシャンで、自身が20%を超える目標は未だ道半ばの話です。

③リアル店舗の運営で気づくところは、ネットで買っていただいているお客様が他にも沢山の珈琲ショップが街中にある中で、「お茶したい」というのではなく、「澤井珈琲したい」と言わせる空中戦からきたお客様の受け皿に地上戦のリアル店舗を設けておき、少しでも多くのお客様に幸福を届けるベネフィットカフェテリアになりたいからです。

④米・魚・肉・珈琲一見全く縁のないジャンルの食材でも、必ず「ここのこれは美味い」と思うものは存在しますよね。その商品を食べたときにお客様は笑顔になり幸せを感じますよね。うちには珈琲があり、長濱さんには米があり、例えば「宮城ひとめぼれ」を食した食後に最も合う「食後の一杯の珈琲はこれ!」というような食べ合わせや飲み合わせの提案であったりを、口に入るすべての食材で行ってみたいですね。全てはお客様の笑顔が見たいから。

⑤ECは一見、外から見ると「パソコンあればどこでも仕事出来ていいねー」とか「ずっと座ってられていいねー」とか言われますが、私は始めたばかりは島根に居て本当に毎日が孤独でした。たった一人で夜中PCの前で何時間も作業をし、いつしか人と接する時間も少なくなっていった。でも今は出店4年間その生活を経て、楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞してからは人生が大きく変わり、他店舗さんとの交流が増え、おしゃべりする機会がEC出店する前より格段に増えた。反面教師とまでは言わないが、自分の島根時代があって今の自分が形成されていることを痛感する日々なので、是非ともあきらめないで最後までECを続けて一緒にSOY TRIPでいつの日にか会いたいと思っているし、その時にはお友達になってください。

~最後に~

 澤井氏の周りにはいつも笑顔が溢れている。「人を知るには一緒に旅をするといい」とよく言う。彼と旅をして最も刺さった思いは「人を笑顔にする力」。

 ECの世界では顔が見えないが、モニターの向こう側にこんな笑顔の店長が接客していると思うと、値段や珈琲豆の種類だけで買うお店ではなく、きっと「オリジナル笑顔ブレンド」が澤井珈琲の本当の看板商品だと今回の対談で気づかされた。

 「一杯の珈琲」から得る注ぎこぼれんばかりの「胸一杯の思い」は、ECだからこそ伝えきれる最大の接客ツールだとあらためて痛感した。その「一杯」をぜひ味わっていただきたい。


著者

長濱 洋平 (Youhei Nagahama)

1974年1月23日宮城県産まれ。お米のサラリーマンを経て現在の株式会社東穀を設立。
PCでアンダーバーの出し方すら知らない素人がECを始めて5年で楽天市場ショップオブザイヤーを受賞。そして今年も受賞し、2年連続受賞。現在43歳。