中国ECトレンドレポート</br>中国越境EC2大モールへの複数出店が主流に
みなさんこんにちは。いつも.の中国EC支援担当です。
ここにきて、本年度中に100兆円突破とも予想される中国ECに単なるブームやテストではなく、本格的に参入をする企業が増えてきています。その動向についてレポートいたします。
2大越境ECモールへの出店が顕著に
国内の大手メーカーを中心に、中国の2大越境ECモールである「天猫国際(Tモールグローバル)と「JDWorldwide(ジェーディーワールドワイド)」の両方ともに出店する動きが顕著になってきました。日本で例えるなら楽天とアマゾンの両方に出店するような動きです。
1年程前は中国BtoCEC市場で約60%というトップシェアを握るアリババが運営する「天猫国際」に先行して出店する企業が多くありました。ただ、最近はシェア2位の京東集団もECモールの年間流通総額が8兆円を超え、前年比140%超と高い成長率を維持していることもあり、同社の越境ECモール「JDWorldwide」に出店する動きも目立ってきました。
両社とも中国のEC市場では大きなシェアを持っていますが、日本からの越境ECとなるとまだ市場規模は伸ばしきれていないのが実情です。主な理由としては、越境ならではの送料の高さや法制度の不安定さが挙げられると思います。
動き出す「保税ストックモデル」
中国向け越境ECを行う企業の多くがいまだに、消費者が関税を支払わなくて済む確率が高い「個人輸入扱い」のEMS(国際スピード郵便)を使っています。荷物1個当たりの送料1500円程を購入者に負担させるケースもありますが、多くの場合は「送料無料」にして企業側が負担しています。そのため、商品が大量に売れると企業の送料負担が増えてしまうといった課題があります。
ただ、配送面に関しては、日本の大手物流企業が「保税ストックモデル」と言われる物流サービスを本格的に提供するようになりました。このモデルとは、中国のEC用の保税区に在庫をあらかじめ送り、注文が入ったらその倉庫から消費者に届ける方法です。リードタイムも送料も3分の1に圧縮でき、中国国内の販売事業者と同等のサービスが実現できるようになっています。
先日、京東集団の北京本社に訪問し、「JD Worldwide」の責任者とも打合せをしてきましたが、日本の高品質の商品は中国でもまだニーズが高く、供給が足りてない状況であり、優良な日本製品を持つ企業のさらなる誘致や売り上げ拡大のサポートを行っていく方針だと話していました。
2大ECモールへの出店は必須
中国の大手ECモールでは、モバイル比率が70%は超えています。中国の消費者もスマホでネットショッピングするのが当たり前になってきていますが、スマホでよく使う「買い物アプリ」は多くても3つに絞られると考えられています。現在、シェアの高いアリババと京東集団のアプリは外されないことから、越境ECにおいてもこの2大モールを活用することが鍵となります。
また、アリババの「支付宝(アリペイ)」や京東集団が連携するテンセントの「微信支付(Wechatペイ)」は、中国の決済サービスにおいても大きなシェアを握っています。両社のECモールがこれらの決済サービスと連携している点も強みといえます。
中国EC市場は近いうちに100兆円を突破し、消費全体に占めるEC比率も30%を突破する見込みです。日本と異なるマーケティングの難しさもありますが、大手メーカーには外せない市場です。その市場でシェアの高い2大ECモールへの出店は今後も加速していくので、大手メーカー系企業の動きには注目していきたいところです。