【第5回】売上前年同月比10倍!クチコミを活用した『ナノタイム』のマーケットイン戦略とは?

吉田 奈美江

有限会社405 山口 曜 氏

こんにちは。
アライドアーキテクツ株式会社の吉田です。

ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組んでいる企業に、現場でのSMM活動について聞くインタビューシリーズ【企業担当者に聞くSMM最前線】。
コラム第5回目となる今回は、美容家電などのネット通販を手掛けている有限会社405の担当者に、ブロガーのクチコミを活用したオンラインマーケティングや商品開発の取り組みについて弊社社員・藤田がインタビューした記事をお届けいたします。

広告やセールに頼らず、商品の魅力をお客様に伝える方法を求めて

広告やセールに頼らず、商品の魅力をお客様に伝える方法を求めてモニプラ ファンブログのShop405ファンサイト

――まずは、御社の取り扱い商材や、事業の概要から教えてください。

山口:弊社は美容家電や日用品などを、主にネット通販で販売しています。取扱アイテムは基本的に仕入れ商品が中心ですが、数年前から自社商品の開発にも力を注いでおり、2010年に発売したミスト美顔器「ハンディミスト ナノタイム」は弊社の主力商品に育ちました。現在、オンラインショップは6店舗を運営しています。家電量販店への卸売りや、OEM事業も行っています。



――プロモーション施策については、何か課題感をお持ちだったのでしょうか。

山口:当時は、出店先のモール内広告やタイムセールを中心に売上を作っていました。ただ、広告にせよタイムセールにせよ、利益率を下げて販売件数を増やす戦略ですから、会社の収益を圧迫するだけでなく、安易な値下げはブランド価値を棄損してしまうのではないかという危惧がありました。広告やセールに頼らず、商品の魅力をお客様に伝える方法を模索する中で「モニプラ ファンブログ」を知りました。



――「モニプラ ファンブログ」は、どのように活用していらっしゃいますか?

山口:「ナノタイム」を発売した直後の2011年に「モニプラ ファンブログ」を契約しました。「モニプラ ファンブログ」は、インターネット上にクチコミを醸成し、自社商品のブランド力を高めるためのツールとして活用しているほか、商品モニターを募集し、商品の良いところや悪いところなど、率直な感想を収集する上でも役立っています。弊社の商品を購入したことがないお客様が、商品に対して、どのような印象を持っているのかを調べるには最適なツールだと感じていますし、ブログから通販サイトへお客様を誘導するだけでなく、マーケティング・リサーチにも有効だと思います。

ネット上に蓄積した「クチコミ」の力を実感

ネット上に蓄積した「クチコミ」の力を実感

――そうした中、2013年9月に「モニプラ ファンブログ」をいったん解約されました。差し支えなければ、解約の原因や、2015年5月に再度契約していただいた理由などを、お聞かせいただけますか?

山口:2013年当時は、ネットショップの運営と「モニプラ ファンブログ」の運用を私一人で担当していたのですが、業務が忙しくなり、モニプラを運用する余裕がなくなってしまいました。また、モニプラでの商品モニターやアンケートは自社商品を対象に実施していたのですが、2012〜2013年は自社商品の発売自体が少なく、企画がネタ切れ状態になってしまった。そういった、いくつかの要因が重なって解約という形になってしまいました。



――ブロガーマーケティングは、ファンの方々と深くコミュニケーションを取ろうとするほど運用の負荷も高まりますから、しっかりと取り組んでいただいていたからこその解約だったのかもしれませんね……

山口:契約を再開したきっかけは、2015年より新たに立ち上げた美容家電ブランド「NanoTimeBeauty(ナノタイムビューティー)」を広くお客様に認知していただくため、ブログやSNSを活用した販売戦略が必要と考えたためです。「モニプラ ファンブログ」を使うと、お客様と非常に近い距離でコミュニケーションを取ることのできますから、お客様の生の声を集める手段としては最適だと判断しました。契約を再開したもう一つの理由は、「モニプラ ファンブログ」は検索エンジン対策としての効果が大きいと感じたためです。2013年までに生成したクチコミブログは今でも検索エンジンの上位に表示されています。2年以上前のクチコミブログが検索エンジンの上位に表示されるのは、すごいことだと感じました。



――クチコミの投稿を増やしていくことで、多角的な商品レビューがインターネット上に蓄積されていくのは、商品の魅力を伝える手段としては重要ですよね。ブログのレビューを、ECサイトや広告など他の媒体に活用することはありますか?

山口:2013年までに集めたクチコミは、ECサイトに掲載しています。

ブロガーの声を活用して開発した新商品が大ヒット

ブロガーの声を活用して開発した新商品が大ヒット

――市販化粧水が使えるミスト美顔器「ハンディミスト ナノタイムHD」は従来品に対するお客様の意見を生かして開発したそうですね。

山口:そうなんです。2011年から2013年にかけて「モニプラ ファンブログ」で収集した最初のミスト美顔器「ナノタイム」に対するお客様の要望などを、「ナノタイムHD」の開発に生かしました。ブロガーの要望を反映した機能は、例えば、『乾電池タイプから充電式への変更』『化粧水タンクの容量の増加』『ミストの吹き出し口の周りに鏡を設置』などです。



――「ナノタイムHD」の発売後、消費者の反応や、売れ行きはいかがでしたか?

山口:まず、「ナノタイムHD」の発売が「モニプラ ファンブログ」を退会していた時期だったと言うこともあり、商品の満足度は非常に高いが知名度が低く、また従来品の方が安くお買い求めがしやすいせいか数年間は従来品の売上を超えることができませんでした。
しかしながら「モニプラ ファンブログ」を再開し、ブロガーの方々に「ナノタイムHD」を使っていただいて良さを知ってもらい、商品の情報を拡散していただいた事で売上が伸び、2015年10月の月間売上高は前年同月比約10倍という結果になりました。



――消費者の意見を商品開発に取り入れようと思ったきっかけを教えていただけますか?

山口:家電製品の商品開発で陥りがちな失敗の一つが、開発側の視点で、たくさんの新機能を追加した結果、結果的に消費者ニーズから、かけ離れた商品を作ってしまうことです。追加すべき機能を開発者が一生懸命考えることは大事ですが、本当に大切なのは『お客様が欲しいと感じている商品を作ること』ではないでしょうか。そういう考えが私の中にありましたから、「モニプラ ファンブログ」などで集めたブロガーの意見を商品開発の現場に伝えました。



――消費者の意見を商品開発に生かすのは、当たり前のようで難しいことなのではないかと感じます。プロダクトアウトからマーケットインへの転換に成功した要因を、どのように分析していますか?

山口:マーケティング部門と開発現場が緊密に連携し、マーケターの意思を開発現場にダイレクトに伝えられたためだと思います。思いついたアイデアを即、実践できる社風も影響しているかもしれません。このあたりは、規模が小さい企業の強みでしょうね。



――御社は創業当時から、さまざまな挑戦を続けてきたことで、新しいことに取り組むのが得意なのでしょうか?

山口:得意というわけではありませんが、自分たちだけでは消費者の気持ちを完全には想像できないですから、既存の商品を改善する際、どうすればお客様に満足していただけるか、お客様視点で考えることを心がけています。商品開発を行う上で、自分たちが良いと思う機能を追加するのでなく、お客様に寄り添って商品を作ろうという考え方にシフトしたことが、成功の理由ではないかと思います。



――新商品の販売が好調だということでしたが、どのようなプロモーションをされたのでしょうか?検索エンジン対策は実施されていないのでしょうか?

山口:CPC広告を中心にアフィリエイトも少し試していますが、SEOは実施していません。そのため、モニプラユーザーのブログが検索エンジンの上位に表示されると効果的に機能しています。



――そのように評価していただけて嬉しいです。検索エンジンの進化で小手先のSEOは年々効きにくくなっていますから、クチコミによる検索対策は大事ですよね。

オンラインからオフラインへ。消費者と正直に向き合う関係性を深化

オンラインからオフラインへ。消費者と正直に向き合う関係性を深化

――今後、「モニプラ ファンブログ」を使って実施してみたい企画はありますか?

山口:座談会など、ユーザーさんと対面して、感想を聞けるような企画を実施してみたいです。ネットショップを運営していると、商品の魅力を通販サイトだけでは伝えきれず、歯がゆい思いをすることもあります。お客様が商品の使い方を間違えてしまったために、商品の良さを実感していただけず、悪いレビューにつながってしまって悔しい思いした経験もあります。

お客様に対面で商品を説明したときに、商品の良さを伝えられなかったとしたら、そもそも説明の仕方が悪いということです。その状態で商品ページを作っても、商品の魅力は十分には伝わりません。まずは、商品の魅力を伝える方法を理解し、そのことを商品ページの制作にも生かしていくことが必要だと思います。そのためには、消費者参加型の座談会が最適ではないかと感じています。



――SNSなどが発達したことで、むしろ対面のコミュニケーションの重要性は高まっているのかもしれませんね。現在、オンラインで消費者とコミュニケーションを取る上で、どのような点に難しさを感じていますか?

山口:最近は、モール内広告を闇雲に出稿しただけでは、ネットショップの売り上げが伸びにくくなっています。3〜4年前までは、広告を打てば、ある程度は売り上げが伸びました。しかし、最近は広告を打っても、値引きしても、以前のようには売れなくなっています。おそらく、ある意味で消費者が賢くなったというか、広告に対するシビアな見方が強まっているのではないかと個人的には思っています。当社としては、商品の良い点ばかりを発信するのではなくて、できることとできないことをしっかり書くなど、お客様に対して正直に向かい合うようにしています。



――良いことばかりが書いてある広告では、消費者の心を動かせないと。

山口:そう思います。「ナノタイムHD」は、弊社の専用化粧水以外の化粧水もミスト用に使えるのが特徴です。その点が強みなのですが、市販の化粧水の中には、とろみが強すぎるなどの理由で使用できないものもあります。ですから、他社の化粧水も利用できるというメリットばかりを強調してしまうと、クレームにつながりかねません。利用できる化粧水と利用できない化粧水の例を商品ページに掲載するなど、メリットとデメリットをしっかり伝えるように心がけています。



――お話を聞いていると、消費者の気持ちを上手く掬い上げているように感じます。アンケートなどで寄せられる一見わがままに見えるような要望も、謙虚に受け止めていらっしゃって、顧客との関わり方がとても丁寧だと感じました。

山口:ECは、弊社の商品がお客様に受け入れられれば買ってもらえるし、受け入れられなければ買ってもらえないというシンプルなものですよね。私個人としては、お客様からの反応がダイレクトに伝わってくる関係性が好きなので、できるだけお客様に歩み寄るようにしています。今後座談会のような対面のコミュニケーションを実施したいと思った理由も、こちらからお客様に歩み寄って行きたいという気持ちがあるからです。


<プロフィール>

山口 曜 氏

有限会社405

405group公式HP
http://www.405.ne.jp/

モニプラ ファンブログ【Shop405】公式ファンサイト
http://monipla.jp/shop405fun/



インタビュアー:
アライドアーキテクツ株式会社
藤田 和重


著者

吉田 奈美江 (Namie Yoshida)

化粧品メーカーの営業を経て、アライドアーキテクツ株式会社に入社。
入社後は、口コミでECや店舗の売上向上につなげる国内最大級のファンサイトモール『モニプラファンブログ』の営業、運用サポートを担当。
メーカー時代の経験やプライベートで執筆を続けるブロガーとしての経験を活かし、
企業と消費者双方の気持ちに寄り添ったソーシャルメディアマーケティングの提案、支援を行っています。

国内最大規模のファンサイトモール「モニプラ ファンブログ」
https://www.aainc.co.jp/service/blog/
SMMLab:https://smmlab.jp/
SNS for Biz:https://sns4biz.com/