【第5回】越境EC事業を検討するときの大事なポイント
日本市場でのEC事業に加えて、世界を視野に入れることはビジネスのグローバル化を進める上で重要です。日本製品はブランドとして確立しており、世界でも人気です。世界のEC市場の中で最も加熱している市場は、世界最多の人口とデジタル化が進んでいる中国で、独自の市場を形成して巨大なEC市場へと成長しています。そこで、コラム第5回では中国越境EC事業を検討しているEC事業者様に向けて、押さえるべきポイントをご紹介します。
中国EC市場の規模と、世界のEC市場との違い
まずは、経済産業省が発表している『令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)』をもとに、中国EC市場の規模や世界のEC市場との違いを見てみましょう。
<中国および世界のEC市場規模>
中国 1兆9,348億ドル
米国 5,869億ドル
英国 1,419億ドル
日本 1,154億ドル
韓国 1,035億ドル
ドイツ 819億ドル
中国のEC市場規模は2位の米国とは3倍以上の差があり、前年比でも中国は27.3%の増加、米国の14.0%増を上回る伸びを記録するなど、世界のEC市場の中でも中国市場の重要性が分かります。なお、今後も中国のEC市場は拡大し、2023年には約4兆億ドル以上と現在の2倍以上になると予測されています。
このように市場規模だけ見ても世界のEC市場と一線を画している中国ですが、最も注目すべきはEC市場におけるプレイヤーの違いです。日本や米国、欧米諸国や発展途上国においても最大のシェアを獲得しているEC事業者といえばAmazonです。一方、中国EC市場におけるAmazonのシェアはわずか1%未満であり、中国独自のECモールが市場を寡占しています。
<中国EC市場におけるシェア率>
アリババグループ「天猫(Tmall)」52.5%
京東商城「JD.com」31.3%
唯品会「vip.com」5.7%
蘇寧易購「Suning」3.7%
国美在線「Gome」1.2%
このことから中国でECを実践するためには、他国と同様にまずはAmazonからというようなストーリーは成り立たないことに注意が必要です。
圧倒的なモバイル経由の流通量
中国の小売業界にとっての最大の販売機会は、11月11日に開催されるセールです。中国では「光棍節(こうこんせつ)」といって、日付の1が並ぶことから「独身の日」という意味合いが広がっています。中国EC大手のアリババグループは、この日を「双十一(ダブルイレブン)」として双十一セールを開催し、多くのEC事業者が同様にセールを開催しています。2020年における双十一セールの流通総額は4,982億元であり、日本円に換算すると約7兆9,000億円(現代ビジネス、時事ドットコム)という圧倒的な流通額を誇ります。
さらに驚くべき事実は、モバイル端末経由の流通総額が全体の90%以上を占めており、中国市場においてモバイル経由の流通がいかに重要か分かります。このため、中国EC市場を視野に入れたEC事業では、モバイル端末を想定した施策が欠かせません。モバイル流通額が圧倒的に多い理由は、中国における主流決済サービスがモバイル中心であり、アリババグループが提供している「アリペイ」や、「テンセント」「ウィーチャットペイ」などが代表的な決済サービスになります。日本のようにクレジットカードは普及していないので、モバイル決済への対応が必須となります。
中国ECモールへの出店には現地法人の設立が必須
日本、中国、米国の3国間におけるEC市場規模は中国が3兆6,652億円でトップ、米国が1兆5,570億円で続き、最後に日本が3,175億円となっています(経産省・令和元年度電子商取引に関する市場調査)。中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆6,558億円(前年比7.9%増)となり、さらなる拡大も予測されているので、日本企業が今後中国EC市場に進出する利点は大いにあります。
ただし、中国の大手ECモールである天猫(Tmall)やJD.comは、中国に法人を持たない企業の出店を認めていませんので注意が必要です。このため、日本企業の多くは越境EC専門のECモールである「天猫国際(Tmall Global)」「JD.worldwide」「Kaola.com」などに出店する必要があります。
中国EC事業成功のポイントは信頼のおけるパートナーを選ぶこと
日本企業が中国EC事業において成功のカギを握るのは、信頼のおける現地パートナーの存在です。特に現地法人を設立して中国国内向けの大手ECモールへ出店するには、パートナー選定から慎重に行わなくてはいけません。中国EC事業を検討されている方は、中国市場の調査を十分に行った上で、戦略的に越境EC事業を進めていきましょう。