ECにおけるブランドブランドサイトとLPの違い・それぞれの役割

松元貴志

こんにちは、株式会社Brandismの松元です。今回は混同されがちなランディングページ(LP)とブランドサイトの違いと役割について説明しました。

どちらを作ればよいか迷っている、どちらを優先度高くしたらよいか考えている方にとっては参考になるかと思います。

EC事業を立ち上げる際に、「ECサイトを作りたいです」という言葉が何を指すかは人によって異なってきます。ECサイトを立ち上げる前に、ECサイトとはどういうものでありたいかすり合わせる必要があります。

EC事業がはじめてという方の場合、ECサイトを作りたいですという場合、下記のパターンがあります。

家電量販店ECサイトのようなフルスクラッチECサイト
既存の会社ホームページにEC機能の埋め込み
Amazon、楽天などのECプラットフォームに出店
キレイなブランドサイト
1枚のランディングページ型サイト(LP型)


上記以外にも様々ありますが、わかりやすく上記5パターンで話を進めます。

家電量販店ECサイトのようなフルスクラッチECサイト

大規模でカスタマイズが細部まで行われているECサイトは非常にお金がかかります。多種類の商品を掲載し、ブラウザだけではなくアプリも用意し、タイムセールを頻繁に行い、様々なクーポンを発行してECサイトを運営したいと希望する会社様は少なくありません。例えば、ヤマダ電機のECサイトはカスタマイズも細かくされており、お金をかけて作られているように見えます。
https://www.yamada-denkiweb.com/

ゼロから作ることをフルスクラッチと呼びますが、0から要件を決めて、作っていく場合、小さい規模のサイトでも少なくとも1,000万円はかかります。毎月の保守運用費や、システム上のアップデートがある場合はさらにお金がかかります。大規模ECサイトではない限りフルスクラッチは上級者向けの作り方になります。

既存の会社ホームページにEC機能の埋め込み

「すでに会社のホームページがあって、商品を載せているので、購入機能だけつけくれますか」というご相談もいただきます。すでにあるページに決済機能だけ導入するのは一見簡単そうに見えますが、実は難易度が高いです。

通常のホームページと異なり、ECサイトは個人情報を入力し、クレジットカードを使用する場合お金のやりとりも発生します。セキュリティには慎重になる必要があり、こういった商取引において求められる様々な基準を満たすように既存のホームページを改修する必要がでてくるため0から立ち上げるよりコストがかかります。

既存のホームページでは、お客様に購入してもらうことを目的とした機能も少ないので、新たに別でECサイトを作ることをおすすめしています。

Amazon、楽天などのECプラットフォームに出店

Amazonや楽天やYahoo!ショッピングに出店する方法は、簡単であり多くの事業者が採用しています。独自でECサイトをもっている会社でもAmazonにも出店しているというパターンも多々あります。

ただし、Amazonで販売したからといって売上がのびるわけではありません。無名であり、販売したばかりの商品であればAmazonで売れることはありません。ドラッグストアで普段購入されているものを買いに行くのがめんどくさいからAmazonで購入しようとなるのです。

もしくは、無名の商品でもAmazon内で検索対策を行い、広告出稿をすることで売上を伸ばすことは可能です。自力で行なうのは難しく、外部の業者に頼む形になりますが、広告を使う場合は利益が出にくい構造となっています。

もし、EC事業を新規に行なう場合は、自社ECサイトの売上成長が安定し、お買い物習慣上ECプラットフォームでしか購入したがらない顧客にもターゲットを広げるフェーズになってからAmazonに出店することをおすすめします。

キレイなブランドサイト

https://www.shiseido.co.jp/elixir/index.html

上記URLは資生堂が販売しているエリクシール(ELIXIR)のブランドサイトです。実際にブランドサイトという表現がサイト内でも用いられています。

こちらはブランドの情報やニュースを発信し、販売している商品が全て並んでいるサイトになります。同時に購入もできるようになっているのが特徴です。

ブランドサイトは、興味をもってくれている方には最も効果的にブランドの世界観を伝えることができる手段です。

ただし、全く興味がない層に対してアプローチするには不十分です。テレビや店頭で見た方の購入の後押しをしたり、すでにファンに対してコミュニケーションがとれる場であったりします。

知名度がなくはじめて来た方に買っていただくには次に紹介するランディングページが必要です。

1枚のランディングページ型(LP型)サイト

https://cp.manara.jp/4121080004_tpc200_2

上記は、D2C業界でも有名な株式会社ランクアップ社のマナラというブランドです。同社が販売するブランドはたくさんありますが、上記ページは、特定の1商品の販売を目的として作られています。

LPでは訪問したお客様が、1ページ内で商品の理解から購入まで至る情報展開になっています
。他のページを回遊したり、離脱したりすることがブランドサイトに比べてかなり少なくなります。
このように、LPは一度集客した方を逃さないという目的で活用される手法です

新規顧客獲得のためにLPをメインで運用しているECは定期購入モデルを採用していることが多く、一人のお客様が次の月も購入する確率が60~80%程度あり、LTV(Life Time Value:累計購入金額)も大きくなります。

ブランドサイトを最初から作るべきか

EC事業の成功においては、ブランドサイトとランディングページの2つをうまく活用することが大事です。ランディングページは、ニーズが顕在化していない顧客の集客に役立ちます。ブランドのことを知らない方、購入する予定がランディングページ(記事LP含む)を訪問する前までは全くなかった方へ販売をすることが可能になります。

*記事LPとは、ランディングページに行く前に顧客が訪問するページのことです。体験談が詳しく書いてあったり、企業とは別の視点で商品の良さを伝えるページです。クッションページとも呼ばれています。記事LPはLP遷移前に顧客ニーズを喚起する役割を担っており、記事LPがあることでランディングページのコンバージョン率が大幅にあがります。

ブランドが一定成長し、商品カテゴリやSKUが増えたタイミングでは、ブランドのファンが増えてきます。ブランドのファンにとっては、ブランドサイトは買っていただいている商品以外を買ってもらう役割を果たします。

特に買ってもらいたい商品をランディングページで販売し、購入経験のある方にブランドサイトを活用するという考え方でサイトを構築してみてください。

1SKUしかないタイミングでは、ブランドサイトはなくても事業は十分に成り立ちます。


ASPやSaaS型のECシステムの場合はテンプレートを活用してノーコードでブランドサイト制作が出来るようになっているシステムも多いため、初期的にはそういった最小工数でブランドの世界観を表現するための機能を活用して用意することもおすすめです。

構築のための費用

構築にあたっての費用は、ランディングページのみか、ブランドサイトも作るかで費用は変わってきます。

あくまでおおまかな費用になりますが、ランディングページのみでは、60万円~150万円で1つ作成することができます。

ブランドサイトを作るとなると、きちんとした会社に頼むと、200万円~500万円ほどかかってきます。(ページ数や、機能追加によって変動あり)

初期に十分なお金があれば、ブランドサイトも作ってよいですが、費用を考えるとランディングページだけで十分といえるでしょう。

最初に販売した商品が売れないリスクもあるため、検証段階では最小コストですすめましょう。

販売する商品が多数ある場合、ランディングページで販売する商品はどうしたらよいか

販売する商品が多数あるが、ランディングページで販売する場合どのようにしたらよいか相談を受けます。

方法としては2つあります。
1つ目は1商品(または定期プランなど1オファー)ごとにランディングページを作る方法です。リスティング広告では、検索キーワードごとに出稿するランディングページを出し分けることができます。ランディングページを商品ごとに使い分けることで、効率よくリーチすることが可能となります。

2つ目は1つのランディングページで複数の商品を販売する方法です。1つのランディングページ内に、スキンケア、リップ、ヘアケアなど複数カテゴリの商品を販売することはおすすめしません。ページに訪問した方が迷ってしまい、結局何も買わない形になってしまいます。
ランディングページの存在意義は、購入を迷わせないことです。複数商品をやみくもに並べるとランディングページの目的から本末転倒になってしまいます。

1つのランディングページで複数商品を販売するためにはチャットボットがおすすめです。1つのヒーロー商品(定期販売に向いていて1商品でもLTVが稼げるなど最も販売したい商品で、かつ最も購入されやすい商品)を販売していくなかで、途中で他のカテゴリの商品を提案します。いわゆるクロスセルと呼ばれる手法です。

例えば、プロテインを販売している途中で、タンブラーも一緒に販売する手法です。ランディングページ中で説得するより、1つの購入の意思が固まった段階で他の商品の購入提案をする方が購入確率があがります。

ビジネスモデルが定期購入の場合、最初から複数商品を販売するよりも1つに絞って、成功してから複数商品を展開していく方が確実です。

ECシステムによっては、ランディングページで例えば、1商品を購入した直後が顧客の購買意欲が高まっています。そこで購入完了画面である、サンクスページに遷移したタイミングでアップセルやクロスセルを仕掛ける機能を保有しているECカートを使うことをおすすめします。ついで買いの原理です。

ランディングページ販売でもそうした機能を活用してすぐにLTVを上げるような手法もあります。

1ページで個人情報入力まで終わることがランディングページの理想

ランディングページがブランドサイトよりも優れている点の1つにページ遷移数が少ないことがあります。

1つのページ内で、商品の詳細情報確認から、個人情報入力を含む購入完了まで終わることが理想です。マイページを作成してから購入にうつるサイトもありますが、購入完了確率は下がります。

Wifi環境下ではない移動中の電車の中などではページ遷移があるだけで、ふとしたきっかけで購入をやめてしまうことも珍しくありません。

ランディングページを制作する際は、個人情報を記入する購入フォームを一体型にして、フォームをカスタマイズできるものにしましょう。

ECカートによって、できる点とできない点があるのでECカート会社に事前に確認しましょう。

タイプによってかわるECカート選び

タイプによってかわるECカート選び

Shopifyは、ランディングページは作りにくいですが、多数の商品を掲載することができます。またテンプレートを活用するため、商品掲載程度であればエンジニアでなくても編集しやすいです。

ecforceは、ブランドサイトとランディングページの両方を簡易的に立ち上げることができます。Shopifyに比べて月額の固定費用はかかりますが、どちらも低価格で作り定期購入を導入する場合はおすすめです。

気になるところは価格だと思います。どの記事を見ても作りたいものによりますという返答になるので相場観がわからないと思います。

今回は具体的な金額をいれてみました。社内にはエンジニアは存在しないが、簡単な作業をする作業者はいる前提で考えてください、

単品通販で化粧水を1種類販売するとします。例えば、A社のECカートならばランディングページと、ブランドサイトの両方で約100万円ほどで作れます。毎月のコストはAmazon Payの支払いなど主要なオプションをつけて毎月10万円ほどです。

LPは作れませんがブランドサイトは簡易に作れるB社のECカートならば、外注しても50万円ほどで完成します。

A社、B社ともに無料で使えるテンプレートがありますが、本格的に販売することを想定して外注する前提での金額になります。

カスタマイズ度合いが高いECパッケージを利用して、新しくECサイトを立ち上げると、初期費用で1000万円ほどかかります。ASPカートなどではできないカスタマイズをする形になるため、費用が高くなります。そもそもカスタマイズが必要ないものであればECパッケージを使う必要はありません。

数百億円以上の売上を上げる大規模なECサイトであれば、ECパッケージも利用せずに、フルスクラッチとよばれる全て0から作る手法をとりますが、例としては大企業のように資金に余裕のあるECしか取れない手法のため今回は触れません。


ASPカートの良さは素早く構築できます。最短で一日でオープンできるものもあります。ただし、ランディングページが作りにくい、使い勝手が悪いというデメリットもあります。1週間以内でECサイトを絶対に立ち上げなければいけない場合と、2ヶ月間はECサイトを立ち上げる余裕がある場合とでは話が変わってきます。

オープンまでのリードタイムがある場合は、ブランドサイトとランディングページが作れるものをおすすめします。ASPカートのなかにも最初から両方作れて、かつテンプレートが無料で使えるものも存在します。

私も使用してきたecforceをはじめ、ASPカートでもブランドサイトとランディングページをクイックに立ち上げることができるカートが存在します。各社に問い合わせる際にブランドサイトとランディングページの2つの視点から質問をしてみましょう。

最後に

ランディングページ(LP)とブランドサイトの違いと役割について説明しました。どちらも必要ですが、優先度とリソースに応じて片方のみ作る場合もあります。

ランディングページの役割とブランドサイトの役割について再度考えたうえで、何のために作るかという前提に立ち返って制作をはじめてください。作ることが目的になっている事業者は意外と多いものです。


著者

松元貴志

早稲田大学創造理工学研究科経営デザイン専攻修了。新卒でユニリーバ・ジャパンに入社し、ヘアケアマーケティングブランドの従事。人材関連会社を創業し、人材会社に売却。その後、代表を務める株式会社メジオにてD2C事業を開始。アパレル事業からヘアケアの定期通販事業まで展開。現在は創業した株式会社BrandismにてD2Cブランド立ち上げを支援。

https://brandism.co.jp/