ひとくくりにできないUGC、UGCの種類別の有効活用法

村岡 弥真人

ユーザーの手によって制作・生成されたコンテンツの総称である「UGC」。先日のコラムでは、UGCから見えてきた体験価値の重要性から、ECサイトやLPの顧客獲得効率を変える機能価値と体験価値のバランスについて解説しました。今回は、そんなUGCにはどんな種類があるのか、種類ごとのUGCの強みや活用のポイントについて解説します。UGCには、様々な種類があり、種類によって重要となるポイントが異なってきますので是非参考にしてみてください。

これまでのUGCのトレンドを振り返る

UGCのマーケティング活用は2014年ごろから米国で加速を始め、日本では2016年ごろより先進的な企業が取り入れ始めました。2019年頃になるとEC業界の中でも活用が広まり、その活用方法は、主にInstagramやTwitterなどのSNS上に投稿されたコンテンツが中心となっていました。商品利用者が自ら商品やサービスに関するクチコミをSNS投稿し、SNS内で拡散されることで認知拡大につながったり、ECサイトやLPに掲載することで購買意欲を促進するコンテンツとして効果を発揮しました。

2020年頃になると、Instagramリールやライブ配信機能などの縦型動画が台頭し、動画UGCの活用が広まりました。静止画のコンテンツに比べて、商品やサービスの使用方法や効果などをよりリアルに伝えることができるため、商品訴求力を向上したり、商品理解を促進する効果をもたらしました。最近ではデジタル接客や、サイト体験向上のためのコンテンツとして活用が広まっており、動画UGCの活用は今後も期待されています。

画像引用:Instagram、短尺動画を作成・発見できる新機能「リール」を発表

そして、2021年頃になると自社で収集したレビューを、広告用のLPなどに積極的に活用する動きが加速しました。さらに、レビューを分析して、商品やマーケティングコミュニケーションの改善につなげる事例も多く生まれました。テキストならではの詳細な体験談や感想だけでなく、ユーザーの課題や悩み、属性の把握などSNSでは表現しづらい情報を収集することで、企業はUGCから新たな課題や気づきを得ることができるようになりました。

このように年々UGCの種類が増え、顧客獲得における活用自体が多様化しているだけでなく、顧客理解を深化することができる大事な企業の資産としてUGCの事業への貢献価値が高まっているのです。

UGCの種類別の活用法

ここまで、様々な種類のUGCがあることを解説してきました。では、それぞれのUGCにはどんな強みがあり、効果的な活用方法はどんなものなのでしょうか?UGCを以下の3つに分類して解説します。

1. Instagram投稿などビジュアルの訴求が強いUGC
2. テキストに特化したレビュー
3. 動画UGC

Instagram投稿などビジュアルの訴求が強いUGC
InstagramのUGCは、ビジュアルの訴求が強いことが特徴です。そのため、視覚的な魅力を活かしたコンテンツ活用がポイントとなり、商品やサービスの「見た目」や「テクスチャー」、「使用前後の変化」など、視覚的情報を通すことでより具体的に伝わりやすい情報を効果的に伝えることができます。例えば、美味しそうな料理の写真や、メイクアップ用品の使用感、ファッションアイテムのスタイリングなどがそれに該当するでしょう。

また、InstagramのUGCは、ユーザー自身のリアルな体験を表現することもできます。日常生活の中で「商品やサービスがどのように使われているのか」といったリアルな体験をビジュアルを通して伝えることができるため、見ているユーザーの自分事化を促す「体験価値」コンテンツとなり得ます。。

さらに、アライドアーキテクツが実施した調査では、商品やお店を利用した場合に、そのクチコミを投稿する先として最も多い回答を集めたのがInstagramであるという結果もでています。クチコミを投稿するきっかけについても、「良い点を多くの人に知ってもらいたい」「使った感想を伝えたい」といったポジティブな動機となっており、Instagramの強みであると言えるでしょう。UGC施策においては、商品利用者からのUGCを生成し続けてもらえるかということも大事なポイントとなりますので、生成施策を行う際には、投稿されやすいSNSを活用することをオススメします。

テキストに特化したレビュー
Letroが実施した調査によると、UGCの中でもっとも購入の意思決定に影響を与えるコンテンツ形式は「テキスト」だと判明しています。こうした結果からも、写真や動画などビジュアルコンテンツに特化したInstagram投稿だけでなく、どちらも使い分けることが大切です。

テキストは、ビジュアルでは表現することが難しい「体験」や「身体・心の変化」の表現に向いています。ビジュアル訴求だけではなかなか成果につながるUGCが生まれなかった商品や顧客層でも、異なる結果を得られる可能性があるでしょう。

また、Instagramとレビューの投稿率を比較すると、レビューのほうが10倍ほど投稿率が高い傾向にあることがLetroの実績からもわかっています。特に質と件数の双方を担保したい場合は、レビュー投稿依頼から着手するのがおすすめです。さらに、レビュー収集時は、「商品・サービスへの満足度(★評価)」といった一般的な項目に加えて、職業や家族構成といったプロフィール情報、商品の個別の特徴を評価する項目などを設けることをオススメしています。

動画UGC
静止画よりもより具体的な情報を表現できる動画は、商品の使用方法や効果だけでなく、商品の世界観やブランドなど言葉で表現しづらい情報を伝達することを得意としています。昨今、競合企業の増加からコンテンツをリッチにし、ユーザーに特別な体験を提供したり、記憶に残るコミュニケーションを行うことの重要性が増していますが、その手段として多くの企業が動画の活用を選択しているのです。

例えば、食品を取り扱う企業では、商品を使用した「アレンジレシピ」のUGCをInstagramリールの形式で集めて、レシピ集としてコンテンツを拡充させたり、アパレルやコスメを取り扱う企業では、商品の使い心地・着回し方などの動画UGCを、デジタル接客のためのコンテンツとして活用することもできるでしょう。一般消費者だけでなく、美容部員や店舗スタッフによって投稿されたコンテンツを活用することも有効です。記憶に残るユーザー体験を設計し、他のECサイトとの差別化を図ってみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、「UGCの種類」から「種類別のUGCの強みや活用ポイント」について解説しました。UGCを一緒くたに考えるのではなく、UGCの種類や強みを把握した上で、どの種類であれば自社のお客様とのコミュニケーションに適しているかという点を意識して活用方法を設計してみると良いでしょう。また、ただ単にUGCを掲載するのではなく、「新規顧客の不安払しょくをするコンテンツ」や「商品の見た目や世界観などを伝えるためのコンテンツ」などUGCがどんな役割を担うものなのかという点も合わせて考えて設計いただくことをオススメします。


著者

村岡 弥真人

大手ガラスメーカー勤務を経て2012年にアライドアーキテクツ入社。2014年よりSNS広告に特化した広告代理事業を立ち上げ、自社最大の事業まで事業拡大を行う。2016年にUGC Centric Creative Platform "Letro"の提供を開始、Facebook及びInstagramのオフィシャルパートナーに。2017年より自社プロダクト事業全体の統括を行い、ベトナムの開発子会社2社の経営も兼任。2018年CPOに就任。2021年取締役就任。